胃と腸 20巻10号 (1985年10月)

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要旨 内視鏡的ポリペクトミー後に手術を行った55病変のポリペクトミー標本およびポリペクトミー局所の肉眼的,組織学的検討を行い以下の知見を得た.(1)全病変の74.5%(41/55)にUl-Ⅱの潰瘍が認められた。この割合はポリペクトミーが安全に行われた割合である.(2)有茎性,亜有茎性の大部分は大きさに関係なくUl-Ⅱの潰瘍を形成するが,無茎性の病変は17mm以下の大きさではUl-Ⅱの潰瘍を形成し,18mm以上ではUl-Ⅲ,Ⅳの潰瘍を形成する.(3)ポリペクトミー局所の修復は病変の形態と大きさには関係なく大部分は30日の経過で瘢痕治癒する.(4)ポリペクトミー後の癌の残存は15病変に認められたが,これらの大部分は技術的に完全なポリペクトミーが不可能なmassive invasionを伴うsm癌であった.(5)ポリペクトミー後の癌の再発は3例あり,うち2例は進行癌であった.これら2例の再発進行癌のポリペクトミー標本の組織学的所見はmassive invasionに加えて粘液産生の著明なsm癌であった.癌の再発を早期に発見するためには内視鏡による短い間隔の厳重なfollow-upが不可欠である.

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要旨 大腸ポリペクトミー後1年以上,平均4年の経過が明らかな151例を対象とし,初回注腸X線フィルムの見直しなど厳密な意味での腺腫あるいは癌の新生について検討した.腺腫の新生は12例(7.9%)で,新生したポリープのほとんどは径10mm以下の無茎性ないし亜有茎性で,長期経過観察例および初回多発例で新生率が高い傾向がみられた.経過観察中,進行癌1例を含め3例の大腸癌が発生したが,明らかな新生例は広基性の早期直腸癌1例のみであった.

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要旨 42施設へのアンケートで,内視鏡的ポリペクトミーでfollow-upしている大腸sm癌94例(A群)の予後を,ポリペクトミー後に引き続いて腸切除を行ったsm癌126例(B群)の予後と比較した.再発例はA群では7例(7.4%)で,すべて局所再発,B群では2例(1.6%)でリンパ節再発と肝転移であった.A群全例の5年生存率は87.8%,10年生存率は64.9%で,B群全例の93.5%と88.1%より低かったが,統計学的には有意差はなかった.予後を左右する因子別の生存率の検討では,腫瘍の大きさが2.0cm以上の場合および脈管侵襲陽性の場合,ポリペクトミー断端近傍に癌のmassive invasionがみられた場合には,それぞれA群の生存率はB群の生存率よりも統計学的に有意差をもって低かった.

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要旨 診断と治療を目的とした大腸ポリペクトミーの意義は大きく,今日盛んに行われている.しかし,その反面これに伴う偶発症もまた増加している.この偶発症に関して,1977年から1982年までの6年間におけるわが国の実態をアンケート調査した結果をもとに参考事項や問題点を指摘した.6年間に施行された大腸ポリペクトミー18,668例中115例0.616%に偶発症をみている.偶発症としては穿孔37例,出血67例と両者が大半を占めている.死亡は3例で,その頻度は0.016%である.最近は小児についても大腸ポリペクトミーが行われているが,偶発症は成人よりも起こりやすいので十分慎重でなければならない.偶発症をできるだけ防ぐためには,内視鏡に対する教育の徹底と,より安全な方法および対策を工夫することが必要である.

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要旨 大腸癌および腺腫治療後の患者のサベイランスを行い,腫瘍性病変の発現する頻度(新生率)とサベイランス間隔につき検討し,効果的なサベイランス・プログラムについて考察した.進行癌,早期癌,腺腫治療後の新生率には差が認められなかった.初回治療病変が多発であった群では単発であった群よりも有意に新生率が高かった.腫瘍性病変の発現までの期間は,進行癌,早期癌,腺腫群のいずれにおいても0~1年のことが多く,後は少なかった。腺腫群や早期癌群では癌の新生は極めて少なかったのに対し,進行癌群では癌の新生が9.7%もの例に見出された.なかでも,若年例や癌家族歴陽性例に癌新生のriskが高いと考えられた.進行癌群では,癌新生の最短期間は2年前後と考えられた.サベイランス・プログラムは,腫瘍性病変,特に癌新生のriskの差を考慮に入れて立てることが肝要である.すなわち,初回治療病変が進行癌や多発性腫瘍性病変であった患者は,癌や腺腫のhigh risk群ととらえて厳重なサベイランスを行うべきであると考えられた.

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 武藤(司会) 今日は北から南まで各地域でポリペクトミーを行っていらっしゃる専門の先生にお集まりいただき,ポリペクトミーを行った後の患者さんにどういうことが起こっているか,具体的に言えば,その大腸にどういう病変がまた出てくるか,あるいは,局所再発がどうであるか,などのご経験を話していただいて,それをもとに将来,ポリペクトミーを行った患者さんをどのようにfollow-upしていくのが一番効率的か,ということを少しでも明らかにしていきたいと思います.

 まず,ポリペクトミーが行われるようになってから10年ほどの期間がたっているわけですが,始めたころと最近とでは,適応などでいろいろと違った面が出てきていると思います.実際にどんな具合に行っているのか,そこらへんから話していただきたいと思います.

今月の症例

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〔患者〕 28歳,男性.2か月前より下腹部痛を訴え来院.

〔本症例の見どころ〕 正しい手技で注腸X線検査が施行されれば,健常な虫垂は必ず造影される.虫垂が造影されない場合には異常と考えるべきである.注腸X線検査を行うに当たって,虫垂の状態を十分に読影できるような写真を撮るべきであり,フィルムの読影に際しても虫垂の造影の有無について,等閑にしてはならない.

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 再発についての多くの文献を読んでみて驚くことの1つは,同じ事がらを観察しながら,その成績が,どうしてこのように多様なのかということである.

 簡単な例でみよう.男性と女性と,どちらで再発率が高いのかという問題がある.多くの報告がこれに触れているが,再発率には男女差がないとするものと,男性で再発率が高いというものが,ほぼ相半ばしている.この状況は十年以前も現在も変わるところがない.

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要旨 患者は31歳,女性.過去に排便に関する異常なく腸閉塞が発症した.妊娠7か月より徐々に便秘傾向となり,たまたま罹患した風疹後,全く便が出なくなり,緊急に人工肛門造設.その後腸閉塞の改善がないため,左半結腸切除術を施行した.X線学的に強い狭窄があったにもかかわらず,病理標本では狭窄はなく,腸閉塞の原因は腸管の攣縮によるものと判明した.病理組織学的には,粘膜・筋層の異常はなく,粘膜下および筋層間神経叢の神経細胞の変性・脱落が認められた.これが腸管の攣縮を引き起こしたと考えられた.この神経細胞の変性・脱落は妊娠+風疹によって生じたと推測された.

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要旨 極めてまれな合併症である胃病変を伴ったLYGの1例を報告すると共に,本症の臨床像,組織像,治療およびリンパ腫との関係などにつき略述した.患者は60歳,男性.食欲不振,体重減少を主訴として来院,諸検査の結果,肺,胃,腎,皮膚,末梢神経に病変を認め,生検所見よりLiebowらの記載したLYGに合致する疾患と診断した.本症例は経過中に3度胃病変の出現を認めた.つまり,第1回入院時には非連続性に潰瘍,腫瘤,および肥厚した粘膜ひだが混在しており,また第2回入院時には単発性の大きな腫瘤を,更に第3回入院時には非連続性の多発性隆起性病変と非常に多彩な変化を呈した.LYGの薬物療法はいまだ確立されていないが,前2回の病変に対しPDNとCPAの併用療法は有効であった.LYGの胃X線および胃内視鏡所見に関する報告は外国文献をみてもなく,この報告が最初のものである.

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 石田勉論文に対する質問

 胃病変は,X線や内視鏡所見から判断すると,腫瘤形成型の悪性リンパ腫に相当すると考えられる.胃生検で悪性リンパ腫と確診しえなかったとのことであるが,本症例について以下の点をお尋ねしたい.

 (1)単一な中細胞型リンパ球(T-helper cell)が粘膜内で集団を成して増殖している像(Fig.5a, b)は胃悪性リンパ腫を意味すると思うのですがいかがでしょうか.

Refresher Course・20

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□患 者:51歳,男性.

□主 訴:腹痛,下痢,体重減少.

□既往歴,家族歴:特記すべきことなし.

□現病歴:1980年より時々腹痛が出現.1983年7月腹痛(下腹部を中心に腹部全体)に加え下痢,体重減少(1か月間で8kg)が出現したため,某病院に入院.安静と輸液によって症状は軽減したが,原因精査のため同年9月当科に転院.

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 川井 胆のほうに移りたいと思いますが,膵のところと皆さんの理解が共通しているのは,要するに胆としてみるとか,膵としてものをみるのではなしに,上部消化管としてみるんだということで,その場合に症状をある程度チェックしながら検査に入るということだったと思います.

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欧文目次

書評「今日の診断指針」 柴田 進
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 亀山,亀田,高久および阿部の4教授の総編集によりわが国における臨床各領域の代表的な専門家643氏が協力して,診断さるべき病気のほとんどすべてを網羅した,まことに便利な書物が出版された.それがここに紹介する「今日の診断指針」である.そのスタイルは,既に世に送り出されてから27年にわたって毎年版を新たにし,実地医家にとって必需図書の1つとなっている「今日の治療指針」に似ており,その姉妹書をなすものであろうが,約1,450頁を越える記載頁に約70頁の親切な索引をつけてあるから,これは診断の百科辞典と言ってよい.

 本書は症候編と疾患編に全体を大別し,(1)症候編では全身的にみられる症候や脳神経・精神系の症候と並べて身体諸部位(顔,頸,四肢,胸,腹)に関連した諸症候に加うるに産科・婦人科系の症候まで記載してあり,(2)疾患編では言うまでもなく諸臓器疾患のほかに,感染,アレルギー,膠原病などの全身性の病気を説明するだけでなく,皮膚,眼,耳,産婦人科的および新生児・小児の疾患に及び,殊に外来の小外科的疾患まで解説してある.その内容は最新の実用的検査法も豊富に取り入れ,解説が簡明かつ親切な点では上に述べたように診断の百科辞典である.

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 消化器病の診断における超音波検査法の進歩は目覚ましく,ここ数年の間に極めて広く普及した.本法によって,種々の疾患が迅速に,しかも的確に診断できるようになり,聴診器のように,実地医家にとって必須の診断器具となりつつある.

 わが国の消化器超音波診断の分野において,その発展と普及に,千葉大学第1内科の大藤正雄助教授を中心とする研究グループの果たした役割は極めて大きいが,今回,そのグループによって,「消化器超音波診断学」という書が上梓された.

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 Serum gamma-glutamyl transpeptidase and chronic alcoholism―Influence of alcohol ingestion and liver disease: Moussavian SN, et al (Dig Dis Sci 30: 211-214, 1985)

 血清gamma-glutamyl Transpeptidase(γ-GTP)は常習的な飲酒やアルコール性肝障害の指標として本当に有益かどうか議論が多い.血清γ-GTPは飲酒習慣よりむしろアルコール中毒者の肝疾患の有無に関連があるとする報告がある.この研究では123名のアルコール中毒者を対象として血清γ-GTPと飲酒量,飲酒期間,肝疾患との関連を検討した.対象を肝疾患のない97名(A群)と,肝腫大,黄疸または3か月以上にわたる肝機能異常を認め肝生検を受け肝疾患を有すると診断された26名(B群)の2群に分け,血清γ-GTP,GOT,GPT,alkaline phosphatase(ALP)などを測定した.両群の飲酒量と飲酒期間には差を認めなかった.

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 Martin&Ellisによって細針穿刺法による腫瘍細胞診の1,400例に及ぶ系統的な検討が報告されたのは1930年で,米国にその端緒を発している.しかし,臨床的実用化を推進したのはLopes-Cardozo,Franzén,Zajicekらのヨーロッパ学派で,主として血液学的手法によるものであった.したがって穿刺細胞診はギームザ法にょる形態学が主流を占め,Papanicolaou法を見慣れた者には判定の難しさが障壁となっていたが,本書は殆どがPapanicolaou法を用いており理解しやすい.

 本書は3人の共著であるが,Koss教授はポーランド生まれで,Woyke,Olszewski教授らはMontefiore医療センターに学んだKoss教授の一門であるから500頁に及ぶ大作も一貫性があって単著としての読みやすさがある.

編集後記 武藤 徹一郎
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 大腸ポリペクトミーが始められてからもう15年が経過したことになる.この新しい技術によって大腸ポリープの取り扱い方は一変したと同時に,ポリペクトミー後の患者をどうfollowすればよいのかという新しい問題が未解決のまま残されてきた.本号ではポリペクトミー後の大腸に何が起きたかが如実に示されていて大変興味深い.ポリペクトミーの局所再発,ポリペクトミー後の大腸に,どのような病変がどのような時期に発生してくるのかが詳しく検討されている.数値が多くやや読みにくいきらいはあるが,その内容は明日からの臨床に役立つことであろう.腺腫の新生率,新生時期の点で山田論文と安達論文の内容に相違点が認められるのは,対象と検査方法の差によるのかもしれないが,今後長期にわたって検討してゆかねばならない問題を含んでいると思われ,他施設での検討が望まれる.

 ポリペクトミーされたsm癌のその後の経過も大変有益なデータを提供してくれている.経過観察群が高齢層に片寄っていることは,腸切除を追加するか否かの判断に年齢の要素が入っていることを推察させる.生存率の差はこの年齢構成の差によるのかもしれない.ポリペクトミーの偶発症が少なくないことは深刻に受けとめなければならない.表面に出てこない例がもっと多いことを考慮すると,このまま放置しておいてよいものかどうか考えさせられた.

基本情報

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胃と腸
20巻10号 (1985年10月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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