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書評「肝切除のテクニックと患者管理」
小山 研二
1
1秋田大学
pp.947
発行日 1985年9月25日
Published Date 1985/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109778
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本当に,掛値なしに役立つ手術書というのはこのような書物を指すのであろうか.本書の著者,長谷川博先生は大変ユニークで,しかも読者を納得させずにはおかない論文を多数発表されている,名実ともに肝臓外科の第一人者であられることは今更言うまでもなかろう.
本書は,まず氏の体験に基づく極めて実際的な肝切除の適応や,開腹時に術者にどのように見えているかという現実に即した肝の外科的解剖が示されている.次いで肝切除における基本的注意事項が極めて具体的に述べられ,また氏の愛用されている少数の,平凡に見えながら工夫の凝らしてあるハサミや剥離鉗子などが提示されている.肝切除の実技の項では開創の重要性,肝門処理をはじめとする肝切除に共通,必須な諸諸の手技やそのコツが懇切丁寧に記されている.更に,肝の各区域の切除について特有な事項が補足説明され,また術前術後の管理上の諸問題を,多数の経験と深い洞察から既成の観念にとらわれない見解を述べておられる.このほかに随所に現れるtrouble-shootingとcoffee breakは心にくいばかりである.前者は肝切除においてしばしば起こる小さな事件の対策から,術者の目の前を真暗にするような大出血に対する自信あふれた適切な対処の仕方も教えてくれる心強い味方である.後者は,一見気軽そうに,しかし実は氏の動かざる信念を披瀝しておられる楽しくも有益な欄である.
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