胃と腸 20巻11号 (1985年11月)

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要旨 EST後6か月以上(最長10年6か月)経過例411例を対象に,主に胆管結石の再発と有胆囊例の予後につき検討した.アンケート調査は,100%に追跡データが得られ,胆摘後例240例では無愁訴207例,有愁訴7例,死亡26例(他因死19・関連死4・不明死3);有胆囊122例では無愁訴99例,有愁訴3例,死亡20例(他因死17・不明死3);総胆管肝内結石症49例では無愁訴36例,有愁訴5例,死亡8例(他因死4・関連死3・不明死1)であった.再発結石は,肝内結石例を除く362例中,21例(5.8%)にみられた.結石除去から再発診断時点までの期間は平均2年5か月であった.有胆囊例の予後は,無石胆囊91例で,急性胆囊炎を惹起し手術を受けた症例は皆無であった.しかし無石胆囊内に結石が新生したとみなされる例が2例あった.一方,胆囊有石31例(うち,胆囊不影5例)中,急性胆囊炎を生じた例は5例(16%)であった.より長期にわたる綿密なfollow-up studyの必要性が示唆された.

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要旨 1973年8月より1985年5月までの約12年間に,776例の内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)を行い,726例(93.6%)に目的とする種々の臨床的効果を得た.早期合併症は32例(4.1%)にみられ,2例(0.26%)の死亡例を経験した.1年以上の追跡調査ができた良性疾患326例(胆管結石および乳頭狭窄症)について長期成績を検討した.腹痛・発熱・黄疸などの自覚症状は61例(18.1%)にあり,その中で後期合併症が証明されたのは24例(7.4%)であった.再発胆管結石15例,胆囊炎6例,胆管炎3例であり,再発結石の5例と胆囊炎の5例に外科的治療がなされた.再発結石および胆管炎は,切開範囲の小さい症例に多い傾向がみられた.また,有石胆囊残存群70例中6例(8.6%)に胆嚢炎発生がみられたのに対し,無石胆囊残存群55例では胆囊病変は認めなかった.後期合併症症例に死亡例はなく,ESTの臨床的有用性と安全性は高く評価しえた.

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要旨 新しい内視鏡的治療法の1つの分野である内視鏡的乳頭括約筋切開術は,1973年に開発され既に12年を数えるに至った.ここで本手技開発の経過・海外の動きを紹介するとともに,本法の評価に関して残された幾つかの間題を指摘するとともに今後の研究の進め方について2,3の気付くことを述べた.

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要旨 内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)は,広く普及し,結石完全排石率は90%以上,早期合併症は,出血,胆管炎,膵炎が多く,われわれの成績では7.8%に見られ死亡率0.6%であった.晩期合併症としては結石再発,再狭窄,胆囊保有者の胆囊炎の発生が問題であった.最近の経乳頭的胆道ドレナージの導入により,適応は拡大し,悪性胆道狭窄症例に対する内痩法や胆管炎の予防・治療としての外痩法,その他診断的ESTや胆道狭窄のバルーン拡張法などが行われている.これらの新しい試みについて,大口径の十二指腸ファイバースコープおよび処置具,ニードルナイフ,新型ベビースコープの開発,発展が見られる.

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要旨 1965年より1970年まで外科的乳頭切開術を受けた74例のうち術後早期に死亡した2例を除く72例について1981年と1985年の2回,術後経過を調査した.第1回調査では53例(74%)が回答,うち10例が死亡,35例(81%)が無症状,8例が有愁訴であった.第2回は生存62例を対象とし,47例(76%)に回答を得た.新たに2例が死亡,無愁訴が38例(84%),有愁訴が7例であった.死因は脳卒中5,肝癌3,胃癌1,老衰1,不明2である.胆道由来と思われる症状を呈した例は第1回で4例(9.3%),第2回で3例(6.7%)と予想外に少なかった.外科的乳頭切開術の長期予後は,本術式が乳頭形成術へと変遷していった過程で主張されたほど悪いものではないようであり,このことは内視鏡的乳頭括約筋切開術の長期成績に明るい見通しを与えるものと言えよう.

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 高木(司会) 内視鏡的乳頭括約筋切開術(以下EST)は,内視鏡的逆行性膵胆管造影(以下ERCP)が1969年に始まって4年後の1973年に相馬智先生(元杏林大学第1外科),川井啓市先生(京都府立医科大学公衆衛生),Classen先生たちが始められたわけで,今日も本来はそのパイオニアの相馬先生に司会をしていただくのが筋道ですが,残念ながら相馬先生は1984年9月亡くなられました.ここで相馬先生の御冥福をお祈りして黙濤を捧げたいと思います.

 さて,ESTのパイオニアの先生方が12~13年前に一生懸命されたころから,10年以上経ったところで,EST後の長期成績が問題になって,今回の主題になったわけですが,これを言い出されたのはやはり相馬先生です.

今月の症例

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 内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)は1973年に開発されて以来,適応が拡大し,合併症が少なくなり,現在ではendoscopic surgeryの中心である.しかし高度な技術を必要とし,合併症も重篤であるので十分な内視鏡のトレーニング,膵・胆道疾患の知識,内科・外科間の緊密なタイアップが必須で,決して未熟な者が1人で行ってはならない.

Coffee Break

「日本語」は! 青山 大三
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 (1)文を書く人があり,読む人がある.書く人は読む人に明快に理解できるように書いているか.特に考按で.読者へ“思いやり”の一つだろうか.

 (2)口語体文語体が混在していないか.

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 最近,潰瘍再発に関して通読した諸文献のうち,問題提起という意味でもっとも注目されたのは,五十嵐・栗原による報告“潰瘍症のgradeとその対策”(第26回日本消化器病大会,シンポジウム,消化性潰瘍の再発予防,1984)であった.彼らは,初発潰瘍(潰瘍歴なし,瘢痕なし)33例の経過を15~22年間にわたって追跡し,その間における潰瘍再発の実態を報告した.その内容は多くの貴重な示唆を含んでいるが,なかでも重要なことは,潰瘍症離脱の実態を初めて明らかにしたことであろう.

 まず,意外なことに初発潰瘍33例中9例,27%は治癒後15~22年の間再発することなく経過した.累積再発率が上限に達する期間15年(前述),あるいは再発間隔最長7年(後述)という数字からみて,これらの潰瘍は永久治癒を営んだものとみなしてよいであろう.すなわち,現在,消化性潰瘍と診断される病変の中に,再発を繰り返すものと,再発しないものとがあるということになる.両者は異なった病変なのか,それとも同じ潰瘍の違った経過なのか,新しい問題が生じたとも言える.

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要旨 患者は49歳女性.胃集検にて“異常レリーフ”を指摘され,精査のため来院.X線および内視鏡検査にて,胃のほぼ全域に無数の半球状隆起性病変が認められ,いずれの隆起も組織球の粘膜内増殖で形成されていることが生検で確認された.同細胞の多くはS-100蛋白陽性,lysozyme・NCA陰性であった.更に,電顕的に少数の細胞にはBirbeck顆粒が確認された.小腸,大腸を含む全身の検査で胃以外に病変が認められないことから,胃histiocytosis Xと診断された.消化管原発のhistiocytosis Xの報告例は本例を含めて世界で4例あり,いずれも胃に発生している.本例は組織球が胃のほぼ全域の粘膜固有層内にびまん性に増殖し,肉眼的にポリポーシスを呈した点が特徴であり,生検で診断された最初の報告例である.

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要旨 術前,深達度mと診断されたが,最終病理組織診にて潰瘍瘢痕部に一致して粘膜下組織に癌浸潤を認めた,Ⅱc+Ⅲ型早期胃癌の1例を提示した.

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要旨 若年性胃腸管ポリポージスは,胃,小腸,大腸に多数の若年性ポリープを発生する遺伝性疾患であり本邦で3例,欧米で19例が報告されている.本症例は,65歳男性で11年前に胃潰瘍に対して胃切除を受けたが,その残胃に若年性ポリープを母地として発生したと考えられる早期癌と多数の若年性ポリープが,また盲腸に単発の若年性ポリープが証明され,早期胃癌を合併する若年性胃腸管ポリポージスと診断された.その臨床的所見と経過,病理学的所見などを供覧すると共に,若年性胃腸管ポリポージスの癌化の問題などを中心に本例の意義について若干の文献的考察を行った.

Refresher Course・21

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□患 者:61歳,女性.

□主 訴:右下腹部痛および腫瘤触知

□現病歴:2か月前に心窩部痛がみられたが,すく軽快した.1か月前より右下腹部痛,半月前より同部に腫瘤を触知するようになった.便通1行/日,血便なし.

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 3.読影法と鑑別診断

 質 問 胆囊US所見の隆起性病変の良悪性の鑑別診断について.

 望月 これは胆石と胆嚢ポリープと,それから良性・悪性と一緒にしてお話ししますと,結石でもビームの当たり方でshadowを引かないこともあるので,その場合は診断が難しいことがあります.一般的には結石とポリープ,あるいは,癌も含めて隆起性のもの,結石とポリープとではあまり問題にならないと思います.

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欧文目次

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 日常臨床の場において疾病の診断には自覚所見は極めて重要な手掛でかりある.消化器,殊に消化管領域の疾患では身体理学的所見のほとんど見当たらない患者が多い.このことは外来のtentative diagnosisには主訴や自覚症状によるところが大きい理由である.しかも消化器系症状を訴える患者は多いが,その多くはいわゆる不定愁訴と言われるもので臓器特異性のない症状である.したがって外来診断には自覚症状の詳細な聴取が大きい役割を占めてくる.主訴の長期の経過・軽重,病悩期間の長短,食事との関連性,患者ど欠かすことのできない病歴であの置かれた環境なる.

 1つ1つの自覚症状の発現機序は必ずしも解明されていないところも多い.明らかな他覚所見を有する患者,例えば吐下血,腫瘤の触知,黄疸,腹水,急性炎症に伴う腹壁の筋防衛などは疾患臓器の推定は必ずしも困難ではない.

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 The Histopathology of Bleeding from Polyps and Carcinomas of the Large Intestine: Sobin H (Cancer 55: 577-581, 1985)

 大腸の癌や腺腫からの出血に関する評価は,それらの発見のための便潜血テストの評価上極めて重要である.著者らは,この研究で,癌,腺腫,過形成性ポリープなどからの出血に関する組織病理学的根拠を組織標本上で検索した.

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 消化器癌の内で,肝癌は胃癌に次いで多い.しかし,肝動脈塞栓術が非常に良好な治療成績を収めている以上,肝切除術は安全に,しかも,より根治性をもって施行されなければ,外科医は信頼を失うことになる.この時期に,かねて肝切除術に情熱を傾けられてきた本邦の第一人者たる長谷川博部長によって「肝切除のテクニックと患者管理」が刊行されたことは時宜を得ており,非常に喜ばしいことである.

 文中にも述べられているように,著者が臨床実践主義をモットーとして,血漿大量療法に始まり,術中超音波検査を導入し,更に片葉阻血手技を確立し,本邦における肝癌に対する外科的治療成績を著しく向上せしめたことは事実で,その基礎と臨床が調和した独得の考え方は世界のレベルを大きく越えたものと言ってよい.一貫した流れは肝切除成績を向上せしめようとする気骨である(冒頭で述べているごとく).また,肝臓という代謝の中心的臓器の切除は管腔臓器を扱う感覚で行ってはならないということも事実である,こういった老えから,読者の立場に立ってわかりやすいことを心掛けて,情熱を込めて執筆されている.

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 医学部の各専門講座が担当する臨床医学の現状を,学生諸君にいかによく理解させるかということは決して容易ではない.しかもupto-dateに進歩する医学研究の成果を,臨床教育の場に織り込んで学生に知らしめることは一層困難である.

 しかし,このような臨床医学の現状を医学生に広く理解せしめておくことは,医学生自身の将来の発展のためにも非常に重要なことで,教育する立場の者が最も真剣に考慮するところである.

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 本書は,西ドイツのErlagen-Nurnberg大学のJ.W.Rohen教授と神奈川歯科大学の横地教授の共著になるものである.Maryland大学のE.C.B.Hall-Craggs教授の協力を得た英文版のColor Atlas of Anatomy; A Photographic Study of the Human Bodyの日本語版に当たる.この図譜の特色は,その序にあるように,主に模式図あるいは半模式図で示されている従来の図譜で表現できない三次元的立体像を求めて,実際の解剖標本の写真を用いたことにある.これにより,真実をより正確に伝えることができる,という.本書は,系統解剖学的にではなく局所解剖学的に,しかも肉眼解剖実習の場合のように表層から深層へと解剖図が展開していっている.更に,神経,脈管の分布,筋の走行と機能を示す模式図を加えて,局所的な解剖図に拡がりと関係とを持たせ,纒まりのある理解を助けている.この実際の解剖標本による写真アトラスが,今日の解剖遺体の不足に悩む医学教育を補うことができることを願っている.

 本書は,Ⅰ.総論のあと,Ⅱ.頭部,Ⅲ.頸部,Ⅳ.体幹,Ⅴ.上肢,Ⅵ.胸部内臓,Ⅶ.腹部内臓,Ⅷ.泌尿生殖器官およびⅨ.下肢の順に局所解剖学的に編纂されている.Ⅰ.総論では,まず模式図による人体の構成と内臓の位置の説明に続いて,成人と小児の全身骨格,骨化,骨の構造の写真があり,関節の形態学的種類が模型と実物標本を対比させて説明される.筋,神経系と脈管についても同様に標本と模式図を適宜配置して,やや詳しい説明文で記述され,導入部の役を果たしている.局所解剖学的に編纂されたとされるⅡ章以下は,説明文を省きながら,細かい工夫がなされている.例えば,Ⅸ.下肢は,解剖標本による骨,靱帯と関節,筋の系統解剖学がまず図示される.更に模式図を加えた血管,腰神経叢の総論的説明がある.続いて,いわゆる解剖学実習の手順による大腿前面,殿部,大体後面,膝部,下腿,足の局所解剖学的図が展開するように,各章とも系統解剖学的な把握を忘れていない.本書が目的としている医,歯科学生の解剖学実習の際への配慮,人体の構造を部分のみならず全体として理解するためと考えられる,著者の良識である.そのほか,どの部分をとっても図1つ1つの美しさと,細かい配慮に感嘆させられる.例えば中枢神経系の各図は色付けされた標本写真を含めて,これまでの脳のアトラスを凌ぐ説得力を見せている.

編集後記 池田 靖洋
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 本号の編集会議の席に,相馬智教授のお姿がみえないのが誠に寂しかった.改めて心から先生の御冥福をお祈りいたしたい.

 ようやく長期成績を検討できる時期になった.会議の席上,本邦の集計成績よりも,個々の施設のきめ細かなfollow-up studyの成績を知りたいと提言したところ,小生も主題の1つを仰せつかった.藤本氏,藤田氏,小生の長期成績,それから高木氏司会の座談会を通じて,結石再発や胆囊無石・有石例の予後に多くの共通点が見出された.一方,ビ系石の成因論にもかかわる大きな課題も残された.川井氏は本法評価時の問題点に言及され,藤田氏はESTの近年の展開につき述べられた.田中氏の外科的乳頭切開術後16年目の再発例は,EST後例に,より長期follow-upの必要性を示唆するものであろう.

基本情報

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胃と腸
20巻11号 (1985年11月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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