胃と腸 2巻4号 (1967年4月)

今月の主題 胃微細病変の診断

綜説

微細早期胃癌のX線診断 土井 偉誉
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まえがき

 早期胃癌のX線診断は,その症例数の増加と共に,典型的なものに関しては,かなり的確に行なえるようになってきた.しかし,病変の広がりが小さく,かつ,陥凹,隆起の程度の少ないものでは,現在のところ,まだ容易ではない.また,2個以上の病変が合併して存在する場合は,それら個々の病変を正確にとらえて診断することはむつかしく,油断すると往々にして,合併病変を見落してしまうことが多い.

 昨年11月,広島市で開催された第4回,日本内視鏡学会秋期大会において,この問題がとりあげられ,「微細病変の診断および診断の限界」という題でシンポジウムが組まれ,このうち早期胃癌の部には,現在,第一線で臨床研究をつまれている7名〔後注〕の専門医の方々から,それぞれの経験例をもとに,微小胃癌の診断過程,診断根拠,診断の限界などについて発表がなされた.このシンポジウムで規定された微細早期胃癌とは,癌病巣の広がりの最大径が20mm以下であること,隆起型,陥凹型は除外する.平坦型が主であっても,陥凹(III)あるいは隆起(1)を伴うものは除外するということで,病巣の発見の困難な平坦型およびその混合型に限定されたわけである.報告は全体で40余例であったが,その中には,極めて正確に病像をとらえ,的確な臨床診断をなしえた例もあったが,逆に,微小病度は全く見落され,これとは関係のない離れた部位を異常所見として胃切除をし,摘出標本の肉眼像から,あるいはさらに病理組織学的検索の結果,たまたま癌浸潤が発見された例もあった.また合併例については,ほとんどが微小病変を見落しているようである.特に,X線診断についてみると,このような微小胃癌を初回のX線検査で証明できた例は非常に少なく,間接的な異常所見から病変の存在を察知し,2回あるいはそれ以上のくり返し精密検査の結果,X線的に診断しえた例,あるいはまた,内視鏡検査により異常所見を指摘され,その結果のX線精密検査で病巣をとらええた例が多い.ここに報告された症例について,さらにくわしく検討してみたく思うが,手元に充分の資料もないので差控える.

 ここでわれわれの経験例についてみると,やはり似たような診断経過をたどっているので,自験例の統計をもとに,X線診断の過程,診断の根拠となった所見,限界などについて概説する.

 国立がんセンターで経験した156例,168病変について,癌浸潤の広がりを調べてみると,第1表に示すごとくである.このうち,X線検査で,病変の存在診断の比較的容易な隆起型,陥凹型および陥凹(III)を伴う平坦型を除いて,癌浸潤の広がりの最大径が20mmを越さないものを集めてみると,第2表の枠内に示す23病変である.この23病変の術前診断をみると,X線検査で確診しえたもの14例,疑診1例,他病変と合併している,微細病変を見落したもの8例である.この8例中,2例は多発性潰瘍に合併していたもので,その切除標本の新鮮肉眼像からは,癌病巣を適確に指摘できなかったものであり,固定標本で,わずかな陥凹と輪廓が識別できる程度である.他の6例は,1個病変を描写しただけに終り,retrospectiveに,X線フィルムをみると,検査不充分のきらいが強い(第3表).

 このような存在診断のむつかしい,しかも微細病変を対象とする場合,精密検査のくり返し,経過観察ということは,どうしても必要になってくる.ここに集めた23病変について調べてみると,初診より手術日までの経過観察期問は,最長2年,最短12日間,平均3.5カ月間である.また,この間のX線検査回数は,最高7回,最低1回,平均2.9回の精密検査がくり返されている.

 X線フィルムをふり返って読影してみると,診断の内容からみて,次の5つのグループに大別される.

(1)癌浸潤は浅く,狭い範囲に限局されているが,その周囲に結締織性の変化が強く現われ,病巣部を強調し,存在診断を容易にしたもの―3例

(2)病巣が小彎あるいは大彎の辺縁に存在したために,その発見および診断が比較的容易だったもの―6例

(3)初回の通常検査では,完全に見落しているが,経過観察中に,病巣をとらえ,診断できたもの―6例

(4)他病変が併存し,そちらに注意をうばわれて,微細病変を見落したもの―6例ただし,このうち,2例はretrospectiveにX線フィルムをみると,どうにか癌病巣を指摘できる.したがって,この2例は,読影不注意も原因となっている.

(5)多発性潰瘍に合併した粘膜内癌で,肉眼的に,病巣を指摘することが困難である.もし,癌浸潤による胃変形があったとしても,多発性潰瘍による変形と区別がつかない.したがって,癌病巣そのものを,特徴ある像として描写しない限り,X線による診断は無理である.この辺が,X線診断の限界と考えられる―2例

 グループ1,2に関しては,病変の存在診断が比較的容易であるから,今迄に累積された表面型早期胃癌の診断規準をもとに,詳細な検索を行なえば,たとえ病変が小さくても,良性か悪性かの鑑別は,相当に可能である.もちろん,経過観察という条件も加味してのことである.グループ3では,病巣が小さく,かつそれによって起る間接所見がとぼしく,通常検査においては,往々にして見落される危険があるわけである.これを確実に拾い出すためには,従来は,特殊撮影法に属していた,腹臥位二重造影法や丁寧な圧迫撮影法が必要になってくる.しかも,病巣が微細であるため,透視中に,病巣を適確に把握することは極めて困難であり,したがって,ある程度の無駄は承知の上で,色々な体位で,色々な撮影法を試みる必要が生じてくる.病巣の占居部位をみると,6例中4例が,前壁に存在し,このため,背臥位二重造影像では,充分な描写がえられていない.他の2例は,いずれも胃角上部後壁に存在し,通常検査の背臥位二重造影像では表現しにくい場所である.これらの事実から,微細病変を見落さないように診断するためには,どうしても相当の苦労が必要である.グループ4に関しては,検者の不注意もあるが,合併病変の占居部位の位置関係から,それら個々の病変を,必ずしも,容易に分離描写できるとは限らない.このためにも,病変を単一の方向からのみ描写せずに,多くの角度から観察することが必要である.悪性病変と合併している場合は,いずれにしても,治療方針は同じであるから良いが,良性病変に合併している微細な悪性病巣を見落すことは危険である.検査に当たり,たとえ,1個あるいはそれ以上の病変が証明できたとしても,必ず胃全体の検査を怠らないように心掛けなければならない.読影に際しても同様である.グループ5に関しては,X線診断が,粘膜面の凹凸,胃壁の伸展性,粘膜皺襞の走向を主たるより所としている検索であるから,肉眼的に弁別できない程度の病変で,しかも,本例のごとく,多発性潰瘍と合併している場合は,胃壁の伸展性の不調和は,癌の存在とは関係なく現われ,このような病巣を的確に描写し診断することは極めて困難である.

 各グループの代表的症例について説明を加える.

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Ⅰ.はじめに

 ここ数年間における胃癌の診断学の発展はまことに目ざましく,今日では粘膜の一部に限局した早期のものが術前に確診されることも多くなった.これはX線検査,内視鏡検査,細胞診,生検など診断技術の進歩によるものであるが,その先鞭となったのは胃カメラの普及である.すなわち胃カメラは創始後撓みなく改良が加えられて,挿入,撮影などの検査手技が簡便になり,また患者の苦痛も著しく軽減されたため,驚く程短期間に胃のルーチン検査法として診療の第一線にまで普及するに至った.その結果胃カメラによる早期胃癌例の発見がにわかに増加し,しかもそのカラーによるすぐれた記録性により胃癌の早期像の客観的な把握が可能となった.これがその他の検査法の発展に大きく寄与し,さらにそれらの知見が胃カメラ診断の面に生かされるなど,急速に早期胃癌の診断学の体系化がすすめられることになったのである.

 そして最近のファイバースコープの驚異的進歩は,胃内の一層詳細な観察能ならびに記録性に加えて直視下での細胞診や生検をも容易にし,胃癌診断法の飛躍的発展を迎えつつある.

 昨年11月内視鏡学会第4回秋季大会のシンポジウムに「微細病変の診断および診断の限界」というテーマがとりあげられた.そのうちの早期胃癌の部では,北海道大学高杉内科の村島先生,新潟がんセンターの原先生,昭和医大村上外科の安井先生,愛知がんセンターの加藤先生,高瀬先生,徳島大学油谷内科の竹内先生,岸先生,鳥取大学石原内科の橋本先生,広島大学浦城内科の江木先生から興味ある症例報告がなされ,現在の内視鏡診断の一般的レベルが明らかにされた.その際著者の一人竹添も早期胃癌,特に比較的小さなⅡaおよびⅡcの胃カメラ像を中心に2,3発言させていただいた.本稿でもそれをもとに胃カメラ診断の問題点についてふれ,またそれに関連して教室の早期癌例における細胞診,生検の成績をつけ加えたい.

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Ⅰ.はじめに

 近年胃疾患の診断技術のめざましい進歩によって,早期胃癌が数多く報告されて,詳細な検討がなされている.早期胃癌として,癌が粘膜下層までに止まるものであって,癌のひろがりは問わないことにしている.早期胃癌の中には,ひろがりからいうと,直径1cm以下の顕微鏡的大きさから直径10cmにまで達するものが含まれている.現在の診断技術の上からは,早期胃癌が3~4cmにひろがったものの診断は,充分確かめられてきている.しかし直径2cm以下の早期癌に対する診断は困難な場合が少なくない.

 とくに表面型早期癌に対する診断も直径1cm前後の小病変には,肉眼的単位の診断学も良性悪性の質的診断の上では,困難になってきている.細胞診,生検による顕微鏡的単位による診断学に変りつつある.微細病変として扱かう早期胃癌の診断学も病変の存在診断と質的診断の両者が必要である.

 1966年秋第4回内視鏡学会シンポジウム(広島)に胃壁微細病変の診断およびその限界がとりあげられ,早期胃癌の部門では,直径2cm以下の症例について検討された.

 微細病変としての早期癌,とくに直径1.5cm以下の表面型早期癌の診断経過とともに,病理面より検討してみたい.

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 胃潰瘍のX線診断はすでに20世紀初頭のReiche(1909),Haudek(1910)のニッシェの発見にさかのぼるといわれており,そのX線的特徴については内外の数多くの成書に記載されているところである.更にX線所見と病理組織学的所見の対比についてもEschbach”,熊倉2,3)の報告に詳しく,改めてこれに追加するほど新しい知見はもち合わせていない.臨床的にはもはやX線検査による胃潰瘍の診断能などを問題にするより,潰瘍の性状,即ち良悪性の判定または病期の判定,深さの診断,治癒の判定などに興味を残しているといえよう.

 したがって本文の目的は,こと改まって新しい胃潰瘍のX線診断法を述べるものでない.たまたま昨年11月広島での,第6回目本内視鏡学会秋期大会で,芦沢教授・白壁博士司会のシンポジウム「微細病変」において,私にX線診断の立場からの発言をもとめられたが,この時のシンポジウムの内容および著者の発言を紹介し,私の責めを果たしたい.

胃潰瘍の内視鏡診断 金子 栄蔵
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Ⅰ.はじめに

 潰瘍性病変の微細診断とその診断限界をとりあげた昨年広島における内視鏡学会秋期大会は5人のシンポジストと3人の特別発言者で行なわれた.5人のシンポジストのテーマは下記のごとくで,うち内視鏡を中心としたものは市岡,吉葉,吉田等,X線を中心にしたのは五十嵐,政で,特別発言の上野と著者は内視鏡の立場から,川井はX線の立場からそれぞれ各シンポジストの内容に対する感想と私見を述べるという形で行なわれた.

1)摘出胃の内視鏡像と胃壁のTonusからみた胃潰瘍診断の限界………阪医大 市岡四象

2)潰瘍性病変の外科的検討………日医大 吉葉昌彦

3)胃潰瘍の診断(胃体部多発性潰瘍のX線診断)………鹿児島大 政信太郎

4)胃潰瘍瘢痕のX線診断………福島医大 五十嵐勤

5)胃潰瘍の診断(ビランの診断)……九大 吉田隆 広門一亮

本論文は各演者の内容の概略を紹介し,あわせて著者の私見を加えたものであり,診断限界がどのように考えられており,またどのように解決して行こうとされているかを考察したものである.

 内視鏡検査の現時点における一応の目標は(われわれの目は肉眼観察でも明らかでないような変化をもとらえたいという方向に向いてはいるが)いかに新鮮切除胃の肉眼所見に近い変化を読みとり得るかという点にある.今回のシンポジウムでもいずれの演者もX線あるいは内視鏡所見と切除標本との綿密な対比検討が基盤になっている.潰瘍性病変の診断限界を考える時いうまでもなく2つの問題がある.第1は病変の胃内占拠部位による技術上の制約であり,第2は病変そのものに対するその検査法の有する本質的な限界である.前者ではとくに高位の病変に対する内視鏡検査の制約をあげることが出来るが,Va型,Vb型カメラやアングル付きファイバースコープの出現により盲点も次第に減少しつつあるが微細診断という点になるとなお多くの問題を含んでいると思う.この2つの問題は実際上はそれぞれを分離して考えることは不可能なわけであるが,本論文は第2の問題に主眼を置いた.以下シンポジウムの内容を大きく下記のように分けて考察する.

1)ビランの診断

2)潰瘍瘢痕の診断

3)多発潰瘍の診断

4)診断向上のための技術的試み

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 胃切除を行なった症例について,胃粘膜の肉眼所見と,術前に行なった胃内視鏡検査の結果とを対比してみる機会は多い.その結果,正しくその部位の胃粘膜を観察したつもりでも,その実,切除胃でみると,微細な病変を見逃していたり,また,内視鏡的には如何にもSimpleな潰瘍性病変と見えたものが,切除胃では,意外にも周辺に広い瘢痕性変化や小潰瘍または糜爛を伴っていたりすることは,われわれが少なからず経験することである.

 このようなことから,従来述べられてきた胃潰瘍の内視鏡診断とは別に,微小な潰瘍性病変に対する現在の内視鏡検査の診断の現状,とくにその存在診断の現状について考えてみたいと思う.

展望

胆石 秋田 八年 , 香月 武人
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Ⅰ.胆石成因論の展望

 西暦2世紀,Galenusは体温の上昇で胆汁および粘液の粘稠度が増加すると胆石が発生すると述べている.胆石生成論の嚆矢であろう.近代胆石生成論は,1892年Naunynの炎症性胆石生成説,1909年Aschoff&Bacmeisterの非炎症性胆石生成説の対立によって開花したといっても過言ではなかろう.以来70有余年,胆石生成論は今日なお完全には解明されてない.

 胆石の構成素材が胆汁成分そのものであることは周知の事実である.胆石の主要成分は永に不溶な遊離型cholesterol,遊離型bilirubinであるが,これらがいかにして胆汁中に安定に溶存しているか,またなぜに胆汁から析出してくるかという点に胆石成因論の第1の命題が存在する(胆石の生成論Kausale Genese).一方,1879年Frerichsがすでに指摘しているごとく,胆汁成分の単純な沈澱物と胆石とは本質的に異なり,胆石が発生するには胆汁成分の沈析以外に,析出した胆汁成分を胆石にまで再組織する機構が必要となくってくる.この点に胆石成因論の第2の命題が存在する(胆石の形成論Formale Genese).

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Ⅰ.まえがき

 われわれは最近多発性胃潰瘍に併発した粘膜癌の1例を経験した.その癌組織は正常組織と混在している点で興味ある症例であり,ここに報告する.この症例は41年10月の早期胃癌研究会において発表した.

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患者:53歳,女.主訴,心窩部痛.手術,41年7月18日.

 第1図はかるく第一斜位にして撮影した充盈像,胃体部小彎に壁不整があり,よくみると,Schattenplus im minusの像である.

 二重造影像第2図では,体部小彎辺縁がふくらんでいる.そして,体部の粘膜ひだがこの部にひきよせられている.第2図より空気を多くした二重造影像第3図には,体部小彎辺縁にSchattenplus im minusの像があらわれてきた.体部の粘膜ひだはこの部にひきよせられている.つまり,粘膜ひだ集中である.

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司会(芦沢) 微細病変の診断ということで座談会を開きたいと思います.きょうはシンポジウムで発表された方々を指導された方,いわばPTAの方々に,おもにお集まりいただきました.

 初めに胃癌の方できょうのまとめというようなことを簡単に白壁先生から…….

技術解説

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 前項において,X線テレビはなぜに有効であるか,その欠点として考えられるものは何があるか,またX線テレビの方式と構造についても述べてきた.これらのX線テレビの利点,欠点また方式と構造にっいては,これから述べるX線テレビと,X線装置の組合せ,いわゆるX線テレビにとって極めて重要なことである.

 すなわちX線テレビの構造を知って,利点を生かし,欠点を少なくする事によって,X線テレビ自体の良否がきまってくるともいえるのである.

印象記

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 胃集団検診は野戦的色彩が濃く,局地戦の域を出ていないと思われる.しかも局地の戦いとはいえ,この目標とするところは同じで,作戦計画も実戦方法も大同小異である,だからこの戦像を統一して,もう少し能率よく作戦計画を樹立したらどうだろうかという考えも出てくる.この場合基本になるのは武器と兵力の動員計画であろう.レントゲン車という武器が余る程あっても,フィルムを読んだりその後に続く精密検査能力の動員が不充分なら,その作戦はうまくいく筈はない.この人的動員計画の能率性という立場から,外来集検の概念が生まれてきたように思われる.

 癌の問題が一般化されてきたので,健康診断的要素を持った人達が外来を訪れるのが多くなってきた.このことは病院外来の集団化を余儀なくされることになり,胃腸診断部門のneckが最も大きな問題となっている.従って胃腸診断の能率化が必要なわけで,ここにも外来集検という考え方が生まれてくる基盤があるように思われる.

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市川 本日はお忙しいところを…….川島先生は,このたびの世界消化器病学会の会長として,非常に立派な会をお開きになり,わたしどもは華やかな会を持てたわけですが,そのお話は後でお伺い致しますが,学会の発展と医療制度の変化とともに歩んで来られた先生の戦前から今までに至る御苦心談をおききしたいと思います.まず手初めに,お若かったころの研究のお話を少しおききしたいと思いますが.

入局の頃

 川島大学を出たのが大正12年ですから例の関東大震災のあった年ですが,そのころ稲田先生がまだ潑刺として働き盛で,外国に2度目の旅行をなさって御帰朝早々,Berlin大学Bergmann教授のシステムなどを医局に取入れられて,専門別に研究systemを作られ,その制度下で医局一同張り切り,競って非常に勉強いたしました.顧みますと当時東大3内科のうち,一番おそくまで勉強した教室でした.大体午後7~9時ごろ帰る人は早い方で10~11時過ぎないと帰らない連中が,半分くらい医局におりました.わたしはそのころ,先輩方から頼まれたことはなんでも引受けてやって見る決心で,当直も研究参加も悉く引受け,人の2倍くらい働かして頂きましたね.そのころ初めには,茂在先生(今,中尾内科の茂在先生の父上)の血清蛋白,引続いて血清のミネラルの変化のお手伝いをしました.そのころ蛋白質,ミネラル,水代謝,植物神経系統の研究が始まった頃と思いますが,その茂在中心のグループが,6,7人おりました.又そのミネラルの仕事に関連してヒペルベンチラチオン・ス・テタニーの際の血清の酸塩基平衡の問題にとり組みました.その時分に佐々(貫之)先生のムスケル・トーヌスの仕事の手伝い,田宮先生のカルヂオ・スパスムスの実験的研究を致しましてね.

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 頁を開けば自然にひきつけられるものがある.10年以上に及ぶ努力の結晶だからだろう.そしてその成果を少しでも吸収したくなり,一番身近において何時も開いてみることになる.

 内容は著者等が集めた多数の早期癌についての主としてレ線を中心としたまとめであるが,同時に良性のすべての浅い病変,小さな病変の診断学に通ずるものである.

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〈質問〉

 聖城型の早期癌という語を聞いたのですが,どういう意味でしょうか.簡単にご教示下さい.(京都K.H.)

答え

 潰瘍瘢痕癌(潰瘍の治ったあとから生じたと判定される癌)の一型として,聖域型とでも呼んだら丁度ふさわしいものがあるという考えを,実は村上が昭和41年度の日本病理学会総会の席上で述べました.聖域型の早期胃癌といういい廻しをしたわけではありません.

編集後記 田中 弘道
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 診療と研究に血となり,肉となる消化器専門誌をめざして出発した本誌も,読者の暖かい御支援により満1歳の誕生目を迎えることが出来た.2年目に入り,堂々廻りに陥らないように引続いて斬新な企画が用意されてはいるが,今回初めて行なわれる購読者大会で寄せられる御希望,御意見はさらに本誌を充実させる資となることであろう.

 本号では胃壁の微細病変の診断がとりあげられた.胃の形態学的診断領域がさらに一歩前進したことを喜ぶと同時に,限りないこの道の深さを如実に知らされた思いがするのは筆者だけであろうか.読後に一層の目標点が得られれば幸である.

基本情報

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胃と腸
2巻4号 (1967年4月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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