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Ⅰ.はじめに
ここ数年間における胃癌の診断学の発展はまことに目ざましく,今日では粘膜の一部に限局した早期のものが術前に確診されることも多くなった.これはX線検査,内視鏡検査,細胞診,生検など診断技術の進歩によるものであるが,その先鞭となったのは胃カメラの普及である.すなわち胃カメラは創始後撓みなく改良が加えられて,挿入,撮影などの検査手技が簡便になり,また患者の苦痛も著しく軽減されたため,驚く程短期間に胃のルーチン検査法として診療の第一線にまで普及するに至った.その結果胃カメラによる早期胃癌例の発見がにわかに増加し,しかもそのカラーによるすぐれた記録性により胃癌の早期像の客観的な把握が可能となった.これがその他の検査法の発展に大きく寄与し,さらにそれらの知見が胃カメラ診断の面に生かされるなど,急速に早期胃癌の診断学の体系化がすすめられることになったのである.
そして最近のファイバースコープの驚異的進歩は,胃内の一層詳細な観察能ならびに記録性に加えて直視下での細胞診や生検をも容易にし,胃癌診断法の飛躍的発展を迎えつつある.
昨年11月内視鏡学会第4回秋季大会のシンポジウムに「微細病変の診断および診断の限界」というテーマがとりあげられた.そのうちの早期胃癌の部では,北海道大学高杉内科の村島先生,新潟がんセンターの原先生,昭和医大村上外科の安井先生,愛知がんセンターの加藤先生,高瀬先生,徳島大学油谷内科の竹内先生,岸先生,鳥取大学石原内科の橋本先生,広島大学浦城内科の江木先生から興味ある症例報告がなされ,現在の内視鏡診断の一般的レベルが明らかにされた.その際著者の一人竹添も早期胃癌,特に比較的小さなⅡaおよびⅡcの胃カメラ像を中心に2,3発言させていただいた.本稿でもそれをもとに胃カメラ診断の問題点についてふれ,またそれに関連して教室の早期癌例における細胞診,生検の成績をつけ加えたい.
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