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Ⅰ.はじめに
潰瘍性病変の微細診断とその診断限界をとりあげた昨年広島における内視鏡学会秋期大会は5人のシンポジストと3人の特別発言者で行なわれた.5人のシンポジストのテーマは下記のごとくで,うち内視鏡を中心としたものは市岡,吉葉,吉田等,X線を中心にしたのは五十嵐,政で,特別発言の上野と著者は内視鏡の立場から,川井はX線の立場からそれぞれ各シンポジストの内容に対する感想と私見を述べるという形で行なわれた.
1)摘出胃の内視鏡像と胃壁のTonusからみた胃潰瘍診断の限界………阪医大 市岡四象
2)潰瘍性病変の外科的検討………日医大 吉葉昌彦
3)胃潰瘍の診断(胃体部多発性潰瘍のX線診断)………鹿児島大 政信太郎
4)胃潰瘍瘢痕のX線診断………福島医大 五十嵐勤
5)胃潰瘍の診断(ビランの診断)……九大 吉田隆 広門一亮
本論文は各演者の内容の概略を紹介し,あわせて著者の私見を加えたものであり,診断限界がどのように考えられており,またどのように解決して行こうとされているかを考察したものである.
内視鏡検査の現時点における一応の目標は(われわれの目は肉眼観察でも明らかでないような変化をもとらえたいという方向に向いてはいるが)いかに新鮮切除胃の肉眼所見に近い変化を読みとり得るかという点にある.今回のシンポジウムでもいずれの演者もX線あるいは内視鏡所見と切除標本との綿密な対比検討が基盤になっている.潰瘍性病変の診断限界を考える時いうまでもなく2つの問題がある.第1は病変の胃内占拠部位による技術上の制約であり,第2は病変そのものに対するその検査法の有する本質的な限界である.前者ではとくに高位の病変に対する内視鏡検査の制約をあげることが出来るが,Va型,Vb型カメラやアングル付きファイバースコープの出現により盲点も次第に減少しつつあるが微細診断という点になるとなお多くの問題を含んでいると思う.この2つの問題は実際上はそれぞれを分離して考えることは不可能なわけであるが,本論文は第2の問題に主眼を置いた.以下シンポジウムの内容を大きく下記のように分けて考察する.
1)ビランの診断
2)潰瘍瘢痕の診断
3)多発潰瘍の診断
4)診断向上のための技術的試み
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