呼吸と循環 48巻3号 (2000年3月)

特集 呼吸筋不全

呼吸筋不全と血液ガス 近藤 哲理
  • 文献概要を表示

 はじめに

 呼吸筋不全は呼吸不全のひとつの要因として存在し,その主な病態は換気不全による高炭酸ガス血症である.本稿では,呼吸筋障害と高炭酸ガス血症の関係について解説する.

  • 文献概要を表示

 はじめに

 慢性呼吸器疾患患者のリハビリテーション,すなわち呼吸リハビリテーションとして呼吸筋トレーニング(Ventilatory muscle training:VMT)が行われてきた1,2).しかし,呼吸リハビリテーションとしてルーチンにVMTのみを単独に行うことを支持する科学的根拠は未だに明らかにされていない3).最近の包括的呼吸リハビリテーションのプログラムには,呼吸法指導やVMTのほか上肢や下肢の運動療法が含まれ,呼吸不全患者の運動能の改善効果が報告されている4,5).その理由として,①運動効率の向上により,同一の仕事に対して必要とするエネルギーが低下する6),②運動筋の構造的ならびに生化学的な変化によって一定の負荷に対する筋の耐容能が高まる7,8),③呼吸補助筋および換気作用を持つ姿勢制御筋(姿勢筋)の筋力増強および換気運動への関与を高め,換気能力が増強する9)こと,などが挙げられる.本稿では,呼吸筋と換気作用を持つ姿勢筋について呼吸リハビリテーションの立場から論ずる.

  • 文献概要を表示

 「肺が障害されると呼吸筋は障害され,逆に呼吸筋が障害されると肺は障害される」.作用する側とされる側にこのユニークな「卵と鶏の関係」があるのは,呼吸筋が収縮して自らが動く時に胸腔内圧を介して肺も気量変化を受けて動く,すなわち作用される側である肺の気量変化が呼吸筋の機能と相互作用を持つためであろう.

 本稿では呼吸筋障害を呼吸筋が存在するchestwall(胸郭・脊柱—横隔膜・腹部)が果たすべき気量変化を起こす作用の低下ととらえ,「卵と鶏の関係」について述べる.

  • 文献概要を表示

 はじめに

 呼吸筋不全とは,最大吸気筋である横隔膜が種々の病因によって筋疲労となり,その結果として,正常の肺胞換気量を維持するために必要な圧変化を呼吸器系に持続して発生しえない病態である1,2)

 筋疲労の臨床的分類は種々の原因により筋の収縮力を発生することができなくなった状態として分類され,筋のエネルギー需要が供給を上回っている状態であると考えられる(表1)3)

 病因の一つに低酸素血症が知られているが,慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの慢性肺疾患では呼吸筋疲労の多くの病因が存在しているために,低酸素血症時には呼吸筋疲労をさらに増悪させると考えられる.

 本稿では,低酸素血症が呼吸筋不全を悪化させる因子であるか,呼吸筋不全は低酸素血症を起こすかについてCOPDを中心に臨床的立場より解説し,運動療法の効果の可能性についても述べることにする.

  • 文献概要を表示

 はじめに

 呼吸筋の筋組織量(mass)とその機能は,他の骨格筋と同様に,その個体の栄養状態に大きく依存している.慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの慢性呼吸不全状態の患者においては,説明しがたいcachexiaと呼吸筋機能低下を示す症例をしばしば経験する.COPD患者にとって,栄養状態は独立した予後決定因子の一つであるが,この予後悪化要因の一つとして呼吸筋不全が関与していることが示唆されている.

 本稿の前半では,栄養状態,特に低栄養が呼吸筋の筋量(mass)や筋力に及ぼす影響についての最近の知見を中心に概説する.また後半では栄養療法を中心とした呼吸筋力増強をめざした治療法の効果について述べたい.

  • 文献概要を表示

 Richard J Bing博士は今年90歳を迎えられ,Swan博士をはじめ,大勢の方々の祝福をうけられたと聞いている.

 Bing先生は現在,米国ロサンゼルス市より北東へ約15kmのPasadena市にあるHuntingtonMedical Research Institutesの所長として,NOに関連した新しい研究に没頭しており,毎日自ら実験室をみまわり,成績をみ,論文を書いている.昨年のAHAではその成果が報告され,reviewも執筆している(Cardiovasc Res 43:29,1999).

  • 文献概要を表示

 はじめに

 標準12誘導心電図は,循環器疾患診療に必要不可欠である.心電図は,医療人ならだれでも,どこ(いわゆる無床診療所)でも簡便に記録でき,あらゆる情報が得られる利点がある.近年,冠動脈疾患の罹病率が急増し,コロナリーインターベンション施行件数も増加の一途にある.このような背景において,特に急性心筋梗塞(AMI)の早期診断は極めて重要である.また一方では,“造影すれば全てがわかる”との考え(?)からか安易に冠動脈造影に頼りがちな面も見受けられる.確かに心電図は,心臓超音波検査や心筋シンチグラフィーおよび冠動脈造影法などと比較すると画像による視覚的情報ではないためその解釈に困惑することもある.しかしながら,マンパワー,コストの点からも心電図を有効に利用することにより診断感度・特異度・精度とも高めうる.

 ここで1例を呈示する.急性下壁梗塞例に緊急冠動脈造影が施行された.通常,下壁梗塞は右冠動脈(RCA)が責任枝であることが多いが,左回旋枝(LCX)のことも少なくない.本例ではRCA,LCX両枝に高度狭窄を認めた.このような場合には,“造影すれば全てがわかる”というわけにはいかない.心電図はあくまで確定診断の補助手段ではあるが,上手に利用すればかなりの情報が得られる.

 以下,標準12誘導心電図のみでの梗塞部位診断,特に梗塞責任枝別にその特徴と判別法について解説したい.

Bedside Teaching

  • 文献概要を表示

 はじめに

 肺容量減少手術(Lung volume reduction sur—gery:LVRS)は1990年代の再登場1,2)以後,肺気腫に対する重要な一治療選択肢となった3,4).われわれは,呼吸器内科医として外科側に手術を依頼する立場にあるが,これまでの保存的治療の意義を再認識しつつ,治療の幅の広がりを実感している.

 本稿では,ここ数年の文献および自施設での経験を踏まえて,LVRSの今日的評価についてまとめてみたい.

  • 文献概要を表示

 はじめに

 急性心筋炎は,感冒様症状と心電図異常にとどまる軽症のものから,不整脈や心不全を生じて急速な経過で心原性ショックに陥り死亡するものまで多彩である.特に急激に発症し,ポンプ失調や重篤な不整脈を併発して急速な経過で心肺危機に陥り,時に死亡するものを劇症型心筋炎という.

 近年,従来では救命し得なかった劇症型心筋炎症例が,大動脈内バルーンパンピング(intraaor—tic balloon purnping:IABP),経皮的心肺補助(percutaneous cardiopulmonary support:PCPS)や補助人工心臓(ventricular assistantdevice:VAS)の使用により救命可能となり,積極的な急性期救命治療が提唱されている1,2).劇症型心筋炎の病態は心筋の器質的障害に機能的障害が加算された状態にあるといえる.この病態は約2週間の経過で推移する.したがって,たとえ極度の低心拍出状態や心静止状態に陥ったとしても,この心肺危機の期間を補助循環法の使用により凌ぐことができれば十分に回復が期待できる.しかし,循環補助法の導入適応,管理,離脱基準および合併症対策など,多施設問の調査を経て解決しなければならない課題が山積みである.

 本稿では,劇症型心筋炎の診断および薬物療法から補助循環法に至る治療戦略およびPCPSの適応,管理・離脱法や合併症予防・対策を具体的に掲げ,その運用法を解説した.

  • 文献概要を表示

 ■切除可能または局所進行非小細胞肺癌の治療をめぐる最近1年間の話題

 これまでの高い喫煙率の影響と高齢者の増加により,肺癌の発症は増加して死亡数では5万人とすでに男女とも胃癌を抜いて悪性腫瘍による死因の一位となっている.この傾向は今後も続き,10年後には現在の2倍を越えると予測されている.肺癌全体での5年生存率は10%程度ときわめて予後不良であるが,これはより進行した病期で発見されることが多く,手術可能例は肺癌全体の30%程度に過ぎないことと,さらに根治手術可能例はその1/3程度であること,さらには解剖学的に血行性転移が避けられないことによっている.治療方針は病期別に決めることがコンセンサスとなっているが,施行する治療法によって得られるメリットと避けられないデメリットを予め評価ないしは予測して,治療に当たらねばならない.米国では切除不能肺癌に関するガイドラインがASCO(米国臨床腫瘍学会)から示されているが1),これは主としてmedical oncologist向けのものであり,本邦でも日本肺癌学会で検討されるものと思われる.

 非小細胞肺癌(NSCLC)の手術療法はI〜IIIA期例が対象であるが,原発巣の存在する肺葉切除に縦隔リンパ節郭清術を加えることが標準術式である.最近のCTの普及により小型肺癌が多く発見され,I期においても開胸による定型的な肺葉切除だけでなく,胸腔鏡下手術(VATS)による肺葉切除およびリンパ節郭清,あるいは区域または部分切除が可能となっている.また術後に化学療法や放射線療法を加えることにより,局所の制御だけでなく生存にも寄与する可能性があるとして,多くの研究が行われてきたが,いまだ十分な効果がみられていないのが現状である.IASLCでのコンセンサスでも術後の化学療法や放射線療法は勧めないとしているが,術前化学療法は意義があるとしている.化学療法レジメンや放射線照射法の改善などの研究が続いており,今後の展開が期待される.

  • 文献概要を表示

 ■心臓リハビリテーションに関する最近1年間の話題

 わが国における心臓リハビリテーション(以下リハビリ)は,ほとんど急性心筋梗塞(AMI)後患者を中心に行われて来た.これは,一つには心臓リハビリの保険適用が長い間AMIに限り認められていたことがあげられる.現在では狭心症,開心術後の患者についても適応が拡大されているが,心臓リハビリ施行のためには“特定集中治療室管理または救命救急入院の届け出が受理されていること”という施設基準があり,これが心臓リハビリ施行施設の増加の障害となっている1).今後心臓リハビリがさらに普及するためには,この施設基準をもう少し緩和する方向への改訂が必要である.

 わが国におけるAMIリハビリは心肺運動負荷試験によってanaerobic threshold(AT)を求め,それにより運動耐容能の評価を行い,かつ心臓リハビリの強度の指標として用いる施設が欧米に比して多い.AMI後のリハビリに関しては,わが国と欧米では入院期間や方法が異なるため,単純な比較は困難である.特に米国では,医療コストを優先する傾向があり,単純に最大運動時の心拍数から運動強度を設定する方法が多い.極端な例では,McConnellら2)の報告のように運動負荷試験を全く行わずにAMI後や冠動脈バイパス術後のリハビリを行えるかという検討もなされている.彼らは,運動負荷試験なしでも心臓リハビリは安全に施行でき,1年間のコストの削減は8,856万ドルに及ぶとしているが,わが国の実状とは根本から異なっている.

  • 文献概要を表示

 58歳,男性.190/104mmHgの高血圧と胸部絞扼感を主訴に入院した.冠動脈造影およびアセチルコリン負荷試験で冠攣縮性狭心症と診断された.血漿レニン活性,アルドステロンは高値でフロセミド負荷試験は陽性であった.腎動脈造影にて左腎動脈を2本認め,そのうち1本の入口部に90%狭窄を認めた.腎静脈採血にて患側のレニン活性は健側の1.6倍と有意に上昇しており,腎血管性高血圧症と診断した.経皮的腎血管形成術を施行し,造影上は25%狭窄まで開大したが,血管内超音波所見では内腔に突出するプラークを認め,内腔開大も不十分であったためPalmazステントを留置し,内腔は十分開大された.6ヵ月後の再検査では再狭窄を認めず,冠攣縮性狭心症に対するカルシウム拮抗薬の投薬のみで血圧は安定した.

  • 文献概要を表示

 16歳,女児における急性骨髄性白血病治療に起因すると考えられる高度心不全に対しホスホジエステラーゼ阻害薬である塩酸オルプリノンおよびカルシウム感受性増強剤ピモベンダンを投与し心エコーにて応力—速度関係を観察した.塩酸オルプリノンの投与により収縮性に変化はなかったが後負荷の低下が認められ,その結果ポンプ機能は改善した.一方,ピモベンダンの投与は後負荷の低下に加え,収縮性の増加を来し,その結果ポンプ機能は改善した.これらの薬剤は本症のような病態における急性期の心機能の改善に有効である可能性がある.また,心ポンプ機能の評価だけでなく,収縮性,後負荷をも評価することは薬効の判定,および心不全のマネージメントに有用である.

  • 文献概要を表示

 症例は49歳,女性.40歳頃眼前暗黒感を自覚したことがあり,検診にて単発の心室性期外収縮を指摘されたが経過観察となっていた.1999年2月検診にて高血圧を指摘され近医を受診した際,ふらつき感と多形性心室頻拍を認め当院入院となった.器質的疾患は認めなかったが,入院後も右室流出路起源と思われる単形性の期外収縮で始まる非持続性多形性心室頻拍を頻回に認めた.薬効評価では有効薬を決定し得なかったため,多形性心室頻拍の根治目的に期外収縮を対象としてカテーテルアブレーションを施行した.ペースマップおよび先行度を指標として右室流出路中隔側にて通電したところ期外収縮は消失し多形性心室頻拍も認めなくなったため,無投薬で退院となった.右室流出路起源の期外収縮から多形性心室頻拍への移行例に対しカテーテルアブレーションが有効であった症例を経験した.

  • 文献概要を表示

 患者は22歳,女性.労作後に右上肢の進行性腫脹を来して来院.超音波カラードプラ法で右鎖骨下静脈血流の血栓による途絶が疑われたため,静脈造影を施行した.原発性鎖骨下静脈血栓症(Paget-Schroetter症候群)の診断にて,ヘパリンとウロキナーゼを投与し,引き続きワーファリンを開始した.カラードプラ法を用いた経過観察では,6日後には血栓内に血流が再開し,14日後には血栓像は消失したが静脈壁の肥厚が観察された.これらの所見に伴い次第に右上肢腫脹は軽快した.肢位による血流変化では,上肢の外転・外旋につれて鎖骨下静脈は圧迫閉塞されたが,さらなる過外転・過外旋位ではむしろ血流は再開した.同様の所見は再検時の静脈造影でも確認された.超音波カラードプラ法は,本症の診断,治療経過の観察,および鎖骨下静脈の閉塞を来す肢位の同定に有用であった.

基本情報

04523458.48.3.jpg
呼吸と循環
48巻3号 (2000年3月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

文献閲覧数ランキング(
5月25日~5月31日
)