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綜説
12誘導心電図による心筋梗塞の部位診断および梗塞責任冠動脈の判別はどこまで可能か
Electrocardiographic Diagnosis of Myocardial Infarct-site and Differential Diagnosis of Infarct-Related Coronary Arteries by Means of Standard Twelve-leads Electrocardiogram
末綱 竜士
1
,
長谷川 浩一
2
,
澤山 俊民
3
Ryoji Suetsuna
1
,
Kouichi Hasegawa
2
,
Toshitami Sawayama
3
1川崎医科大学内科循環器部門
2はせ川内科循環器科
3さわやまクリニック
1Division of Cardiology, Department of Medicine, Kawasaki Medical School
2Hasegawa Clinic
3Sawayama Clinic
pp.265-272
発行日 2000年3月15日
Published Date 2000/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902058
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はじめに
標準12誘導心電図は,循環器疾患診療に必要不可欠である.心電図は,医療人ならだれでも,どこ(いわゆる無床診療所)でも簡便に記録でき,あらゆる情報が得られる利点がある.近年,冠動脈疾患の罹病率が急増し,コロナリーインターベンション施行件数も増加の一途にある.このような背景において,特に急性心筋梗塞(AMI)の早期診断は極めて重要である.また一方では,“造影すれば全てがわかる”との考え(?)からか安易に冠動脈造影に頼りがちな面も見受けられる.確かに心電図は,心臓超音波検査や心筋シンチグラフィーおよび冠動脈造影法などと比較すると画像による視覚的情報ではないためその解釈に困惑することもある.しかしながら,マンパワー,コストの点からも心電図を有効に利用することにより診断感度・特異度・精度とも高めうる.
ここで1例を呈示する.急性下壁梗塞例に緊急冠動脈造影が施行された.通常,下壁梗塞は右冠動脈(RCA)が責任枝であることが多いが,左回旋枝(LCX)のことも少なくない.本例ではRCA,LCX両枝に高度狭窄を認めた.このような場合には,“造影すれば全てがわかる”というわけにはいかない.心電図はあくまで確定診断の補助手段ではあるが,上手に利用すればかなりの情報が得られる.
以下,標準12誘導心電図のみでの梗塞部位診断,特に梗塞責任枝別にその特徴と判別法について解説したい.
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