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■切除可能または局所進行非小細胞肺癌の治療をめぐる最近1年間の話題
これまでの高い喫煙率の影響と高齢者の増加により,肺癌の発症は増加して死亡数では5万人とすでに男女とも胃癌を抜いて悪性腫瘍による死因の一位となっている.この傾向は今後も続き,10年後には現在の2倍を越えると予測されている.肺癌全体での5年生存率は10%程度ときわめて予後不良であるが,これはより進行した病期で発見されることが多く,手術可能例は肺癌全体の30%程度に過ぎないことと,さらに根治手術可能例はその1/3程度であること,さらには解剖学的に血行性転移が避けられないことによっている.治療方針は病期別に決めることがコンセンサスとなっているが,施行する治療法によって得られるメリットと避けられないデメリットを予め評価ないしは予測して,治療に当たらねばならない.米国では切除不能肺癌に関するガイドラインがASCO(米国臨床腫瘍学会)から示されているが1),これは主としてmedical oncologist向けのものであり,本邦でも日本肺癌学会で検討されるものと思われる.
非小細胞肺癌(NSCLC)の手術療法はI〜IIIA期例が対象であるが,原発巣の存在する肺葉切除に縦隔リンパ節郭清術を加えることが標準術式である.最近のCTの普及により小型肺癌が多く発見され,I期においても開胸による定型的な肺葉切除だけでなく,胸腔鏡下手術(VATS)による肺葉切除およびリンパ節郭清,あるいは区域または部分切除が可能となっている.また術後に化学療法や放射線療法を加えることにより,局所の制御だけでなく生存にも寄与する可能性があるとして,多くの研究が行われてきたが,いまだ十分な効果がみられていないのが現状である.IASLCでのコンセンサスでも術後の化学療法や放射線療法は勧めないとしているが,術前化学療法は意義があるとしている.化学療法レジメンや放射線照射法の改善などの研究が続いており,今後の展開が期待される.
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