呼吸と循環 25巻9号 (1977年9月)

巻頭言

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 月面に設置された反射板めがけて地球上から発射されたレーザ光は38万kmの空間を旅して月面に至り,反射板ではねかえって地上へ還ってきた。この光を地上の天文台の望遠鏡は正確に捕え,反射板と天文台間の距離を測ることができた。このとき用いられたレーザ光の出力は僅に3ワットに過ぎなかったといわれる。また地球上で発射されたレーザ光を月面上で写真にとることもできるという。ところがネオンまたたく大都会の夜の光は何万キロワットの光量をもちながら月面に反射して夜半の月光を増強させることはない。普通の光が幅広い連続的な周波数成分をもっているのにたいし,レーザ光は原子のエネルギー変換過程に由来する単色光であり,時間的にも空間的にもコヒーレンスがよい。このため光エネルギーの散逸はきわめて少ないから,遠くはなれた月面を地上からの光で照らすことも可能となったのである。レーザ光のこのととのった,コヒーレントな光という性質は大空間を股にかける計測だけでなく,ミクロな計測をも可能にする。即ち,ととのった光が微粒子に衝突して散乱されると,粒子のミクロン単位の粗さに応じて変化するスペックルパタンを生ずる。これは平滑面上の微細な凹凸の検出に用いられる。白内障のレンズに照射すればレンズ内の蛋白質の凝集変性の度を示すという。

綜説

低体温時の呼吸機能 涌沢 玲児
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 麻酔下の恒温動物に物理的な冷却を加えることによりえられる低体温は,生体の各臓器の機能を抑制する。体温が生理的範囲より離れる程,その抑制の度合も大となる。

 呼吸器も例外ではなく,他の臓器同様,冷却により機能が抑制される。

MCLSの病因 上野 忠彦 , 松見 富士夫
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 1967年川崎1)は,猩紅熱様の特異な落屑を呈し猩紅熱とは別個の独立疾患ないし症候群と考えられるある種の疾患に注目し,自験例50例について詳細な臨床的検討を加えて,これを急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群"Acute Febrile Muco-cutaneous Lymphnode Syndrome"(以下MCLSあるいは本症と略す)と命名した。

 氏は当初,本症は予後良好なる自然治癒傾向の顕著な良性疾患であろうと考えていたが,実は判明しただけでも年間2〜3千例の発症があるなかに1〜2%の死亡率2,13)があることが明らかとなった。しかもその100例を越す死亡例の大多数が冠動脈瘤の突然の破裂を直接の死因としている2)ものであることが明らかとなり,にわかに関連諸学会の注目を集めるに至った。そして完治すると考えられた残りの症例においても20〜30%に冠動脈瘤の併発3,4,6)がみられ,60%以上に心筋炎,心外膜炎,全身各部位の動・静脈炎または動・静脈瘤その他の系統的心・血管系の病変5〜7)が認められ,ときにはリウマチ熱弁膜症類似の病変5),Moyamoya病様病変8)あるいは心筋梗塞等18,22,23)の後遺症を発症することがあることなどが知られている。

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 bioprosthesisを用いた房室弁置換術後の血行動態1)をみると,肺動脈楔入圧,肺動脈圧,左心室拡張末期圧および心拍出量に関する改善はmechanical valveと有意差が認められない。現存の人工弁を使用する限り,これらの値は主として術前の心筋,肺の障害度に左右されるからである。しかし,拡張期平均圧較差は0〜7mmHg以内にあり,平均3.5mmHgにすぎなかった。圧較差1mmHg以下を示す正常圧較差が7例も存在したが,このように圧較差の少ないmechanical valveはBjork Shiley弁以外にはみられない。圧較差はbioprosthesisの大きさや種類によって差が認められない(図)。前項で述べた程度のグルタールアルデヒドの濃度差による弁尖の硬度の違いは,血行動態を変えるほどのものではない。運動負荷によって血流量増加に対する弁抵抗の増大をみたが,心拍出量の増加にもかかわらず,圧較差の増加はほとんどなく,血流増加に対してbioprosthesisの弁尖はきわめて良好な順応性を示した。Gorlinの式から弁口面積を算出すると平均3.28cm2であり,諸家の報告中最も広い。しかし,いずれの弁口面積も支持輪の面積よりも狭く,約60%であった。

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 血液ガスの換気に及ぼす影響について,定量化の道を開いたのは,J. S. Grayである。彼は, Po2, Pco2, pHの各々が独立に換気を刺激すると考え,得られる換気は,それらの代数和で表わされるとした。このように3つの要因を皆呼吸刺激として認めるという立場から,この主張はMultiple factor theoryと呼ばれる。

 ここで,VRは安静時における換気量を1とし,観察された換気量との比で表わされる。たとえば,VR=2であれば,換気が倍増していることを意味する。Hは,nanomolで表わしたH濃度である。(1)式から,HとPco2の増加は直線的に換気を増加させ,Po2の低下は指数関数的にVRを増大させることがわかる。

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 酸塩基の調節に関する論文は,動脈血 pH7.4, Pco2,40mmHgが正常であり,病的状態に陥った場合,生体が如何にしてその正常値を維持しようとするかの解釈が試みられ,またこれを治療する場合でもこの正常値への回復を当然の如く目指している。これらはpH7.4, Pco2 40mmHgの時に細胞内環境がうまく至適状態に維持されるとの前提があるからである。

 Burns Amberson lectureで1975年にRahn1)はこの問題を内から外に向けてとらえる考え方を示した。まず細胞内環境が決まり,ここでの最も至適な〔H〕がいくらかが問題であるとした。これを維持すべく呼吸と循環の調節作用により外部環境である血液pHが決まってくるのだとした。

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 この2,3年,若年男子を中心に一連の心拡大患者に遭遇するようになった1)。浮腫を主訴とするが安静により速やかに消失し,心胸比も縮小する。非特異性心筋炎をまず疑った。それにしては心電図変化に乏しく,炎症所見を欠くものも多い。若年男子に好発するのも奇妙である。心拍出量も増加しており,心筋炎による心不全状態に矛盾する。

 これより少し前,大谷ら2)は「心筋炎の合併が考えられる急性特発性多発性神経炎」の1例を発表,その後九州3〜6),山陰7〜9),中国10),四国11),東京12)など各地から類似症例の報告があいついだ。これらの症例はいずれも多発性神経炎像を主体としたため,神経学者を中心に検討された。その結果thiamine欠乏に基因する可能性の強いことが明らかとなり,既に過去の疾病と考えられていた脚気が再び登場するに至った。

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 急性心筋梗塞はどのようにして発症し,さらに梗塞前狭心症とはどういう関係にあるかということは,臨床上非常に興味ある問題である。しかし急性心筋梗塞発症初期像を明確にとらえることは困難であり,その実体は必ずしも明らかにされているとは言えないようである。著者らはすでに臨床上急性心筋梗塞と診断され,剖検しえた108例を検討し,急性心筋梗塞発症後5,6時間で死亡した症例においても,すでに新鮮な閉塞性血栓が心筋梗塞形成に対応一致する冠状動脈の近位部に形成されていたことを報告した1,2)。その結果,急性心筋梗塞発症初期像を明確にするためには,さらに発症後急死した症例を検討することが必要であると考えた。そこで心筋梗塞発症後まもなく死亡したと考えられる2症例について,臨床所見と対比しながら剖検心について連続切片を用いて冠状動脈組織病変を検討し報告した1,3)。この2症例は,急性心筋梗塞発症初期像ないし梗塞前狭心症について考える上で,非常に貴重な症例と考えられるので,症例を呈示しながら心筋梗塞または梗塞前狭心症の直接原因と考えられる冠状動脈病変について解説してみたい。

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 従来,種々薬剤の気道系に対する作用を検索する目的で,主としてヒトおよび動物の気管および主気管支の平滑筋切片が使用されてきた。著者らも,モルモット摘出気管筋切片を用いプロスタグランディンを始めとする種種の血管作動性物質の作用について検索をすすめてきた1)。しかし,in vivoで肺コンプライアンスや気道抵抗を測定することにより種々薬剤の効果を検討してみると,ある種の薬剤は末梢気道系にのみ作用している可能性が示唆されている2)。また薬剤によっては気管,大気管支系に対する作用と末梢気道系に対するそれとが相異している可能性があり,末梢気道系の反応性検索方法の開発が望まれている。

 著者らは今回,末梢気道系の反応性を検索する一つの試みとして,モルモット肺組織切片を用い,種々薬剤に対する反応性を気管筋切片のそれと比較検討した。

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 scimitar症候群とは右肺静脈の下大静脈への還流異常,右肺の低形成,心の右方偏位を主徴候とする症候群で,この異常肺静脈は右肺野を縦断し心陰影の右縁に沿って孤を描く胸部X線上特有の陰影で,三日月形の刀(scimitar)1)に似ているところから1960年Neillら2)によって名づけられたものである。本症候群は胸部単純X線で特徴的な所見2〜8)を呈し,一見して診断がつく場合が多いのでX線所見を中心に概説する。

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目的

 Cardioselectiveでlong activeのβ—blockerとして知られたPractololが乾癬様皮膚発疹,腹膜炎や眼症状等1,2)の副作用から使用されなくなった今日,同じlongactive β—blockerであり構造式の類似しているAcebutololをとりあげ,この抗不整脈作用と血中濃度を測定して,Acebutololの抗不整脈Spectrumを有効血中濃度の面より検討して,臨床応用の方法について言及を試みた。この際著者のLidocaineやPractololについて行った方法を本研究についても適用した3〜6)

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 著者らは最近P-Q延長を含む多彩な心電図所見を示し,Adams-Stokes発作もみられた成人のリウマチ熱と思われる1例を経験したので報告する。

基本情報

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呼吸と循環
25巻9号 (1977年9月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

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