呼吸と循環 21巻7号 (1973年7月)

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 この勉強会も今回で第6回となった。いろいろな測定法の進歩に伴って,血流をどのように見るかという点が問題となり,表記の主題の下に,問題点の現状,提起,討論を7時間に亘って行なったので報告する。

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 換気量,肺活量などの呼吸に伴なう空気の動きとその限界は,いわゆる"spirometric"な方法で測定されるが,肺内にある空気量は最大呼気後もその一部が呼出されずに残るために,いわゆるスパイロメトリーでは測定することができない。従って,この最大呼出後も肺内に残る空気量,即ち残気量の測定については早くより関心がもたれ,1800年代初頭より,いろいろな測定法が開発されて来た。現在の肺生理学の概念,研究課題の中にも肺気量の測定に関連して発生,発達して来たものが少なくない。

 そのような歴史的うらづけもあり,臨床的な意味での残気量の測定は数ある肺機能検査法の中でもスパイロについで議論の少ないものの一つである。とは言え,残気量,機能的残気量,全肺気量などの本検査法から得られる一連の肺気量分劃の値は,すべての肺機能検査成績を評価する際の基礎となるものであり,もっとも頻用される検査諸量の一つである。その意味では現在用いられている方法は,必ずしも十分に簡単とは言い難い面もあり,肺機能検査の日常臨床への普及の面からさらに測定法上での工夫が必要かと思われる。

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 医学の発展,医療技術の複雑化に伴い,診断,治療上避けえない,または予測しえない副作用,合併症が問題となりつつあるが,このような場合を総称する名称としてIatrogenic Disorder医原性疾患という概念が登場した。

 本症は元来,1)疾患の原因が医師の言動にあり,2)疾患発生の本質が患者の自己暗示によるもの,と定義されている。

横隔膜ヘルニア 竹本 忠良
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 Exercises in Diagnostic Radiology1)という本があって,たいへん薄いもので,現在vol.4まで出ていますが,vol.1はChest, vol. 2はAbdomenで,症状等ごく簡単に説明したうえでX線写真を並べ問題をだし,ちがった頁にそれにたいする回答をあたえています。この本などBedside Teachingをする立場からいっても,たいへん役にたつ本だと思いますし,皆さんも読んで下さい。そこで,パラパラとめくってみたのですが,今回の主題の疾患は残念ながらのっていません。系統講義でも,とかく通りいっぺんに流されてしまう疾患かもしれませんし,あるいは皆さん症例もごらんになったことがないかとも思います。しかし,意地の悪い先生とか試験官が案外いて,X線を示してこれはどういう病気かねと質問するかもしれませんので,Exercises in Diagnostic Radiology流にX線写真をみて頂いて,多少この疾患に対する解説を消化器病学の立場から加えてみましょう。

研究会紹介

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1.目的と歴史

 学会には玉石混交の成績が発表される。しかし,秀れた業蹟ではあるが,一見,実地臨床には直ちに応用でき難いようにみえるものもある。本会は,このようなものも含み,学会形式を離れ,基礎と臨床にわたる研究の成果が,もし必要なら直ちに診療に取り入れたいという実地医家の願いにより昭和46年2月に生れたものである。反面,研究者にとっても,この会の討議から,実地医療,実は真の医学に根をおろした,切実な,患者にとって真に解決を迫られているテーマを汲みとれるという利点もあることが分ってきた。

 世話人としては,このような目的に沿って今日的なテーマを選び,講師にもその趣旨を徹底し,いわゆる"遊びの研究","数字の遊戯"と考えられる種類のものは極力否定し,目下の問題点の具体的解決を計るという強い意志をもって運営している。

原著

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 最近の血液ガス分析装置の特徴は必要とする検体量を微量に抑えていることであり,たかだか,100μlの検体量でPo2, Pco2とpHの同時測定を可能にしている。血液の酸素運搬について定量的なデータを求め,ヘモグロビンの酸素解離曲線も得ようとするためには,さらに同一血液の酸素含有量とO2 capacityを測定しなければならない。それには分析に必要な検体を可能な限り微量に抑えることが望まれる。血中酸素含有量測定法の中で,Van Slyke法は直接測定を行えることで絶対値を得るのに不可欠であるが,その必要とする最少の検体量は文献でみる限り30μlである4)。一方,1940年に提案された分極電極による方法2)は,被覆Po2電極3)がdropping mercury electrodeに代わって使用されるようになってから,安定性も加わり原理的に検体を超微量に抑えることを可能にした。その他,被覆Po2電極法をVan Slyke法と比較した時の特徴は,1)特別な訓練を必要とせず短かい時間に測定が簡単に行える,2) Po2測定と酸素含有量の測定が同一の装置で行える,3)亜酸化窒素など麻酔ガスの影響を受けないなどがあげられる。以上の利点に加えて,Severinghaus Pco2電極を併用することによって炭酸ガス含有量の測定も同時にできる8)こともあって,ここでは分極電極法による超微量血液中の酸素含有量の測定法について述べる。

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 急性のHypoxiaは臨床上肺炎,気管支喘息,気胸,気管異物,水溺,麻酔中,あるいは様々の原因による呼吸停止などで生じ,死につながりうる危険な状態である。急性のHypoxiaの循環動態については,従来臨床家によっても生理学老によっても研究がすすめられており1)−3),私達も急性のHypoxiaの心臓血管作用とそのpropranololによる修飾について別の論文4)で発表した。また急性のHypoxiaにより生じる循環不全は右室と左室に等しく生じるのではなく,主に右心不全であることを報告5)した。Hypoxiaにより肺血管収縮が生じて肺高血圧が生じることは臨床的にも,実験的にも,確かめられているが7)9)30)31),この論文では肺循環調節上のβ—アドレナリン受容体の役割を明確にし,臨床上Hypoxiaあるいは肺高血圧をともなう患者の薬物治療を行なう上での基礎的な知識を深くすることを目的として行なった実験の成績を報告する。

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 心筋の機能は条片(strip)においては張力発生にあり,無傷心(intact heart)の場合には圧力発生にある。これらの点からintact heartにおける左室,右室の発生しうる最高心室圧および臨床的に心臓の強さを表わす示標と考えられる定常循環最高心室圧などについての実験結果を報告する。

心筋内圧測定法 岡村 健二 , 小柳 仁
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 収縮期の高い心筋内圧が冠血流量に影響をおよぼすであろうことは古くから注目され1),収縮期には心筋深層の冠血流は杜絶する,いや流れているといった論争がくり返されていた。そこで,1939年,JohnsonとDiPalma2)は正確な心筋内圧測定値をうることによりこの問題を解決しようと試みた。心筋内圧測定の歴史はここに始まる。1946 Vineberg3)が心筋虚血領域に対して内胸動脈の移植による血行再建術を発表してからは,高い心筋内圧に抗して有効な血流がえられるであろうかという疑問が生じ,臨床家からも心筋内圧測定に対する研究が続けられてきた。

 一方,冠血流の杜絶が著明な心筋内圧の低下をおこすことが報告された4)5)。この現象を利用すれば心筋内圧を測定することにより心筋虚血の有無の評価ができるのではないかと考え,実験を計画し,いくらかの所見をえたので,今まで報告された心筋内圧測定法を紹介するとともに,心筋虚血の有無の評価を目的とした我々の心筋内圧測定法について報告したい。

印象記

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 第13回日本胸部疾患学会は息つくひまもなく終った。洵に盛り沢山な学会だったと思い出される。第11回,12回が138題172題そして今回が221題という多数の演題のプログラムには総会役員諸氏の苦労も並大底のものではなかったと思われる。特別講演と招請講演の各2題と7つのシンポジウムはまさしく圧巻ではあった。これらの聴講のために第1会場へ釘付けされた先生方も少なくなかったことであろう。私もその1人で一般演題には殆ど時間がさけなかった。この限り私にとっては拝聴の集会であり,討論の場としての印象は薄い始末となった。特講(Ⅰ)のS. I. Saidの発表は,そのお膳立ての上手さ,スライドの奇麗さに内容に引き入れられた聴衆も多かったようで,血発作動性物質の肺内代謝を平易にまとめ,問題提起までしている点,理解され易かったのではなかろうか。その(Ⅱ) W, M. Thurlbeckの肺気道閉塞の形態学はかなり予備知識と語学力を要求された。機能形態学の一つの型をみせつけられたが,討論したい点も少なくない。またbronchitisとbronchiticsとが聴きわけられない先生方の会話を耳にしたが,こうした外人学者の講演などは録音カセットなどで面倒をみる機関があってもよいのではなかろうか。招講(Ⅰ)では電気インピーダンス法などという聞きなれぬ標題に戸惑われた向きも少なくないと思われる。この方法の歴史,内容,応用など丁寧詳細に紹介された吉良先生の構成は見事であった。

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 Scimitar症候群は,右肺静脈の下大静脈への還流異常と,右肺の"hypoplasia",心の右方転移をtriasとする症候群で,異常右肺静脈によって形成される陰影が,右心陰影に沿って弧を描く様がアラブ人の使う三日月刀に似ているところから1960年Neillら1)によって名づけられたものである。本症候群の本邦での報告は厳密には2例2)3)にすぎず,かなり耳新しい症候群である。しかし胸部単純写真の注意深い読影で診断可能な数少い部分的肺静脈還流異常であるので一般的認識が必須の症候群と思われる。今回我々は,左上大静脈遺残を伴ったScimitar症候群の1例を経験したので報告する。

基本情報

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呼吸と循環
21巻7号 (1973年7月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

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