整形・災害外科 60巻6号 (2017年5月)

特集 人工関節周囲骨折update

序文 澤口 毅
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人工関節の治療成績の向上による適応の拡大,高齢者人口の増加が相まって人工関節置換術の手術件数は増加の一途をたどっています。そのため長期に人工関節を使用することによるゆるみ,高齢化による骨脆弱化と転倒の増加,再置換症例の増加などにより,人工関節周囲骨折も増加しています。人工関節周囲骨折の治療方針は,患者年齢,活動性,骨質,骨折部位,人工関節の固定性,人工関節の種類,骨欠損の有無や程度など多くの要因を考慮しなければなりません。治療は骨接合でよい場合と,再置換もしくは骨接合と再置換併用が必要な場合があります。そのため骨接合と人工関節再置換の両方を十分に理解する必要があります。

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われわれは人工股関節周囲骨折に対し,同種皮質骨bone plate(以下,bone plate)を使用した再建術を施行している。今回,12 例18 関節を対象とし調査した。骨接合を8 関節,再置換を10 関節に施行し,bone plate単独使用例では全例2 枚以上のbone plateを使用し,うち1 例には3 枚使用した。複数回の再建術が必要な症例もあったが,最終的に全例良好な骨癒合が確認でき有用であった。人工股関節周囲骨折では,骨接合のみで解決できる症例ばかりではなく再置換に至る症例も少なくないが,骨接合・再置換にかかわらずgraft host interfaceにmushed cancellous を敷き詰めたbone plateの使用は有用であり,骨癒合を促進できていると考えられた。

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人口の高齢化によりTKA 症例は増加し,それに伴う人工膝関節周囲骨折の症例も増加傾向にある。しかし,われわれはこの7 年間,TKA周囲骨折を経験していない。その要因は,コンポーネントを正しい位置に設置し,大ë骨のnotch をつくらないようにし,また,TKA 術後の骨粗鬆化に対し,骨粗鬆症治療を開始しているなどが考えられる。本骨折に対する治療ゴールは,受傷前と同等の機能を獲得することである。したがって,早期リハビリテーションが必要となるため主たる治療法は観血的治療である。われわれの治療戦略は,人工関節に弛みが認められればrevision TKAとし,弛みが認められなければ骨接合術である。第一選択は逆行性髄内釘であり,髄内釘挿入困難例に対してはロッキングプレートになる。ここでは,骨接合術のポイントも述べた。また,術後の機能成績から治療戦略の是非を検証した結果,有効であったと判断した。

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整形外科手術 名人のknow-how

人工距骨置換術 田中 康仁

整形外科用語の散歩道

611.Synapse 国分 正一

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ヒアルロン酸関節内注射と膝関節伸展訓練を指導した変形性膝関節症(膝OA)患者「指導なし群」(25 例)と,さらに股関節内・外転訓練を追加指導した「指導あり群」(26 例)との間で日常生活動作の改善度を比較した。階段を下りるときの疼痛は,「指導なし群」で17例が治療前に疼痛を訴え,そのうち,4 例(23.5%)が治療後疼痛なしと答えた。一方,「指導あり群」では,治療前に疼痛を訴えた19 例中12 例(63.2%)が疼痛なしと答えた。この項目に関する統計学的検定では「指導あり群」の方が「指導なし群」より有意に高い改善率であった(p=0.023)。その理由として,股関節内・外転運動によって側方動揺性が減少したことが階段を下りるときの疼痛を軽減させた可能性がある。今回の股関節訓練では,階段下り時の痛みのみが改善したにすぎない。しかし,個々の筋肉トレーニングが膝OA のどのような症状に有効かを研究することによって,各症例に応じた運動療法を指導できると考える。

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頚椎後縦靱帯骨化症(OPLL)は,狭窄が高度であっても臨床症状に乏しく発見が遅れ軽微な外傷によって歩行困難となることも多い。当院救命救急センターに搬送された頚髄損傷81例(女性16 例,男性65 例,平均年齢56±19.2歳)のうち,非骨傷性頚髄損傷症例58例を,OPLL 群,非OPLL 群に分類し,受傷機転,麻痺の程度,臨床経過,受傷前の受診の有無について比較検討した。OPLL 群は11 例で,麻痺が重篤(Frankel A,B,C)であったものは8 例(72.7%)であった。そのうち3 例(37.5%)は退院時歩行可能となったが,5 例は歩行に至らなかった(死亡2 例,四肢麻痺3 例)。非骨傷性頚髄損傷症例のうち19.0%でOPLL を合併し,そのうち45.5%の症例の予後は不良であった。OPLL の存在を受傷前に知ることで,対処すべき方法を検討するべきである。

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上肢外傷の労働災害(以下,労災)事故の発生を予防するため,環境要因に関する疫学的検討が行われてきた。しかし,個人的要因を検討した報告は少ない。われわれは,不注意で生じた労災事故による上肢外傷患者11 例(男性9 例,女性2例,平均46 歳)と上肢の変性疾患患者11 例(男性6 例,女性5例,平均56 歳)の注意機能を標準注意検査法(CAT)により比較検討した。CAT の各サブテストで成績低下を認めた平均人数は労災患者群が3.2􀀀例,変性疾患患者群が1.0例と労災患者群で有意に多かった。また,課題別では記憶更新検査の4 桁において,労災患者群の有意な成績低下を認めた。記憶更新検査は注意の分配能力や変換能力,作動記憶を必要とする課題であり,これらの機能の低下が労働中のヒューマンエラーを引き起こし,上肢外傷の労災事故を発生させる個人的要因となる可能性が考えられた。

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整形・災害外科
60巻6号 (2017年5月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0387-4095 金原出版

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