臨床婦人科産科 35巻4号 (1981年4月)

Modern Therapy 新生児異常発見のための臨床検査

  • 文献概要を表示

 近年,わが国においても,周産期医学というものは非常に盛んになってきた。しかしその主力は,分娩中の胎児の管理に注がれており,新生児医学そのものが,それほど盛んになったとはいえない。特に,新生児に関する診断学は,いわば医学以前の段階に依然として低迷している。仮死第1度とか第2度という表現が,アプガーのスコアという表現にかわった以外は,あいもかわらず新生児の身長,体重,頭囲などに関する計測と,外表奇形の有無に関する観察ぐらいで,「能事おわれり」としている場合が多い。

 これでは新生児もかわいそうであるが,産科医療そのものも伸びないと思う。また,近代医学や現代医療の戦列からは,ますます脱落してゆくばかりだと思う。

  • 文献概要を表示

 周産期医療が未熟児の救命の時代から後遺症なき生存の時代へと移りかわってきた現在,産科医による周産期管理が重要になってきた。特にRDSに関しては,その出生前の対策として,次のようなことがあげられる。つまり,1)発生予知診断1,2,3),2)陣痛抑制剤による可能な限りの妊娠期間の延長,および3)副腎皮質ホルモン剤4,5)やβ2stimulant6)などの肺サーファクタント産生促進作用を持つ薬剤の投与などである。また,やむを得ず分娩に至った場合には出生直後の迅速な診断,処置,あるいは周産期管理システムのある施設への速やかな搬送が産科医としての大きな使命となってきている。

 最近,人工換気療法を中心とするめざましい周産期管理システムの発達により,RDSの救命率が急速に高まってきた7)。また,藤原ら8)による肺サーファクタントの補充療法も成果をあげつつある。しかし,RDSという疾患は,出生前の診断により,その発生を未然に防ぐことが可能な場合が多いところに特徴があり,そこに産科医としての果たすべき重要な役割がある。そこでわれわれは,RDSの出生前診断として迅速かつ正確な情報を得るために,特に羊水による検査法を検討してきた。

  • 文献概要を表示

 分娩周辺の細菌による汚染の防止や抗生物質の発達にともない,早期新生児における感染症は減少しつつある。しかし新生児期の感染症は,初期症状が乏しい上に,臨床症状が非特異的であることが多く,その診断には困難を感ずることが少なくない。またその一方では,臨床経過が急速であり,診断・治療の遅れが致命的になったり,重篤な後遺症を残すこともまれではない。ここに早期診断の重要性が問われるゆえんがある。

 従来,子宮内感染症の補助的診断法として,胎児または胎児付属物からの多核白血球,スメア,細菌培養,組織学的検索などが行なわれてきた1)。また近年,炎症などによって血清中に増加または出現する急性期反応物質が,新生児感染症の診断に有用である,とも報告されている2)

  • 文献概要を表示

 新生児重症細菌感染症は,抗生剤療法および新生児集中医療の普及した現在でも,致命率が高く予後の悪い疾患として知られている。近年,B群連鎖球菌(以下GBSと略す)が,新生児重症細菌感染症においては最も頻度の高い重要な起炎菌であることが知られるようになり,新生児GBS感染症の急増は,新生児学の最も大きなトピックスの一つとして注目されるようになった。本稿においては産科領域で遭遇することの多い早発型GBS感染症1),ことにamniotic infection typeおよびrapid progress sepsis type診断のためのアプローチのしかた,臨床検査およびGBSの細菌学的同定法を解説する。

  • 文献概要を表示

 新生児期・乳児期における臨床医学の進歩は目ざましく,近年,疾病の構造,頻度は大きく変化しつつある。先天患者は先天性奇型と先天性代謝異常とに大別されるが,先天異常は,胎児期,新生児期ならびに乳児期の主要な死亡原因である。一般の新生児集団における染色体異常児の発生頻度は,0.5〜0.6%であり,わが国における総出生数をかりに年間160万人とすると実に1万人に近い染色体異常児が出生していることになる。染色体異常児に対する医療,養育のための費用と異常児をもつ両親・家族の精神的負担を考えるとき,大きな社会医学的問題に直面せざるをえない。

 ここでは,染色体異常に関して,胎児期および新生児期における早期診断法について,産科臨床の立場から自験例を中心に報告したい。

  • 文献概要を表示

 大人を診るときには必ずといってもよいくらい血液検査が行なわれる。しかし,新生児の場合にはなぜか例外的な場合にしか行なわれていない。このことに矛盾を感じ,私たちは新生児に苦痛を与えずに大量に採取可能な臍帯血に注目し,分娩立合いの際に臍帯静脈から採血して,どんな施設でもできる臨床検査を行ない,新生児管理や予後の改善に資したいと考えている。

 今回は,1)ともかくも分娩立合い者は臍帯血を何mlかは採取しておいて,新生児に関する血液検査が不必要なことがはっきりするまではそれを保存しておいて,新生児からの採血を節約することを提唱するとともに,2)臍帯血を検査することによる新生児黄疸の予測について述べてみる。

  • 文献概要を表示

 ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)は絨毛性疾患の診断,治療効果の判定,緩解後のfollow upなど治療上最も重要なtumor-markerであり,その測定法に関しては従来より各種の方法の開発改良が行なわれている。歴史的には生物学的測定法であるFriedman反応の時代から,最近広く臨床で使用されている免疫学的方法へと測定感度の上昇とともに移行してきた。免疫学的方法の中でもいわゆるラジオイムノアッセイ(RIA),最近では赤血球凝集反応(HAR),赤血球凝集阻止反応(HAIR),ラテックス凝集反応などを利用した簡易キットの開発が行なわれている。このような免疫学的方法の最も重要な点は,使用される抗体の特異性である。したがってできる限り高い特異性をもつ抗体を利用して,hCGを選択的に測定する方法を確立する努力が続いているのが現状である。

 一方hCGは他のhLH,hFSH,hTSHなどの下垂体由来のゴナドトロピソと同様,α,βと呼ぼれる二つのsubunitよりなる糖タンパク質である。α-subunitはこれらのホルモンの間でほとんど同じ一次構造であるが,β-subunitはホルモンに特異的な活性を担った部分で一次構造も異なると考えられている。しかしその中でhCGとhLHは類似した生物活性を示し,β-subunitの一次構造も互いによく似ている。そのために抗hCG抗体は全くhCGとhLHを区別できず,また現在最も特異性が高いとして広く使用されている抗hCGβ抗体といえどもhLHとの交差性から完全に逃れることは不可能である。ところが興味あることにhCGのβ-subunitには,そのカルボキシル末端にhLHには存在しない特異的な約35個のアミノ酸残基(carboxyl-terminal peptide=CTPと略)が存在することがわかった1)。図1はhCGとhLHのβ-subunitの一次構造を示したものである。もしこの部分に対する抗体を作ることが可能であるならば,それはhLHとは全く交差しない新しいRIA系の確立が期待された。ここではわれわれの研究をもとに抗hCGβ-CTP抗体の作成,特異性の決定などについて述べ,またその臨床応用という立場から最近の進展について述べてみる。

  • 文献概要を表示

 視床下部のgonadotropin放出ホルモン(Gn-RH)の発見と構造の決定,合成により,このホルモンは,下垂体前葉gonadotropin放出予備能を知る目的で各種内分泌疾患患者に用いられてきている。

 このGn-RHは,近年,同様に無排卵患者に排卵誘発を行なうために利用されてきたが,その多くは卵胞の成熱を促すもので,排卵誘発や妊娠への成立に結びつくものではなかった。

  • 文献概要を表示

 下垂体性腺系にみられるフィードバックの調節機序に関する研究は,従来より盛んにおこなわれてきた。とくに下垂体から分泌するLHが性腺から分泌する性ステロイドホルモンと逆相関の関係にあることはネガティブフィードバックとしてよく知られている。一方,下垂体から分泌されるFSHの調節因子については現在もなお未解決な問題が多い。

 1932年,McCullagh1)が雄ラットを去勢することにより出現する下垂体機能の亢進を示す去勢像は,精巣の脂溶性抽出物を投与しても全く影響を受けないが,非ステロイド性の水溶性抽出物を投与すると阻止されることを認めた。この下垂体の調節因子である水溶性抽出物をMcCull-aghはInhibinと呼んだ。Setchellら2)は,精巣の水溶性抽出物を去勢雄ラットに投与すると下垂体からのFSH分泌のみが特異的に抑制されると述べ,De Jongら3)およびSteinbergerら4)は,ラット精巣のセルトリー細胞因子を下垂体細胞の分離培養系に加えると培養液中に放出されるFSH量が減少することを報告した。したがって精巣の水溶性抽出物あるいはセルトリー細胞因子は,下垂体前葉への直接作用によってFSH分泌を特異的に抑制する物質すなわちInhibinを含有するという。最近,精巣のセルトリー細胞と同類の卵巣細胞は,顆粒膜細胞であるところからラット顆粒膜細胞の培養系を用いて,この細胞がInhibinを産生することが証明された5)。また,ウシ卵胞液を去勢した雌ラットに投与するとFSH分泌が特異的に抑制されることから,Inhibinが卵胞液中にも存在することが実証された6)。以上の事実からInhibinの生理的役割として卵巣におけるFSH分泌の調節に関与していることが示唆される。しかしヒト卵巣におけるInhibinの存在あるいは生理的意義については不明な点が多い。

最新目次

  • 文献概要を表示

 今回,米国Mosby社の御好意により,世界的な産婦人科雑誌である上記の最新目次を,日本の読者にいち早く,提供できるようになりました。下記の目次は,発売前にファックスで送られてきたものです。この雑誌の御購読は,医学書院洋書部(03-814-5931)へお申込み下さい。本年の年間購読料は,施設¥29,400,個人¥22,900です。雑誌は,ST.LouisのMosby社より,直送いたします(300頁も併せてご覧下さい)。

  • 文献概要を表示

Transactions of the First Combined Annual Meeting of The American Association of Obstetricians and Gynecologists and the American Gynecological Society

Fetal Monitoring講座 基礎から臨床応用へ

  • 文献概要を表示

 胎児心拍数・陣痛図(CTG)の記録は,現在では分娩時にほとんどroutineに行なわれるようになった検査法である。CTGは先に述べたpH測定法に比較して,操作が簡単であること,胎児に侵襲を加えないこと,連続的に測定できるので,急激に発生する臍帯の圧迫や子宮の強直性収縮にもとづく胎児のanoxiaの発生を早期に発見できることなどの利点を有している。

 しかし,CTGの所見からだけでは誤った判定を下してしまうことが往々にしてある。特に多い誤まりは,正常胎児を胎児仮死(fetal distress)と判定してしまうことであり,そのため,最近,無用の帝王切開術が増加したことも事実である。Haverkampら1)は,ハイリスク妊婦を,1)古典的胎児心音聴取法によって管理した群,2) CTGによって管理した群,および3) CTGと胎児末梢血pH測定の両者で管理した群の3群に分けて児の予後と帝王切開施行率を比較したが,児の予後は3群とも同じであったにもかかわらず,帝王切開の頻度はCTG群が18%と他の2群(各6%)に比較してはるかに高率であったと報告している。Quilliganら2)も,CTGとpH測定の両者の検査を行なうことによって,不必要な帝王切開の数を半減させることができたと述べている。したがって,CTGだけでは子宮内の胎児の状態を正確に把握することは不十分であり,pHの測定のような他の方法を併用することがきわめて大切である。胎児の心拍数の変化と,胎児血液のpHを中心とした生化学の異常との関係を正確に理解することは,周産期の胎児を管理する上できわめて大切なことであり,本稿ではこの点に関して最近の知見を中心に述べてみたいと思う。

  • 文献概要を表示

Ⅰ.mRNA processing

 第三のサブグループではDr.M.Tsaiらを中心にmRNA processingの研究が行なわれている。

 DNAから最初にtranscription (転写)されたmRNAは成熟し完成したmRNAよりも10〜50倍以上の大分子のHnRNA (Heterogenous nu—clear RNA)として合成される。そして大分子のHnRNAがPre-mRNAを経過して成熟したmRNAに完成する過程をmRNA processingと呼び,第一にIntervening sequence (介在遺伝子RNA配列)のsplicing (切断)。第二にmRNA 5'端のcapping (cap structure)。第三にmRNA3'端のpoly A付着の三つの主要な過程によって構成されている。始めにmRNA processingの最も重要なステップであるIntervening sequenceのsplicingについては,DNAのレベルで特異的蛋白がコードされているstructure gene (構造遺伝子)は非連続に配列され,その間にIntervening gene(介在遺伝子)というtranscriptionがなされるが,translationされないgeneが介在していることが最近の研究でわかってきている。

  • 文献概要を表示

 外陰にはしばしば炎症,潰瘍,腫瘍など種々の疾患がみられる。

 従来,尖圭コンジロームは淋疾に特有なものであると考えられたこともあるが,むしろ局所の帯下による持続的な湿潤,汚染によるものと考えられ,妊婦にはしばしばみられる。また最近ではウイルス性疾患で,性交によって伝染すると考えられている。

基本情報

03869865.35.4.jpg
臨床婦人科産科
35巻4号 (1981年4月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月14日~9月20日
)