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胎児心拍数・陣痛図(CTG)の記録は,現在では分娩時にほとんどroutineに行なわれるようになった検査法である。CTGは先に述べたpH測定法に比較して,操作が簡単であること,胎児に侵襲を加えないこと,連続的に測定できるので,急激に発生する臍帯の圧迫や子宮の強直性収縮にもとづく胎児のanoxiaの発生を早期に発見できることなどの利点を有している。
しかし,CTGの所見からだけでは誤った判定を下してしまうことが往々にしてある。特に多い誤まりは,正常胎児を胎児仮死(fetal distress)と判定してしまうことであり,そのため,最近,無用の帝王切開術が増加したことも事実である。Haverkampら1)は,ハイリスク妊婦を,1)古典的胎児心音聴取法によって管理した群,2) CTGによって管理した群,および3) CTGと胎児末梢血pH測定の両者で管理した群の3群に分けて児の予後と帝王切開施行率を比較したが,児の予後は3群とも同じであったにもかかわらず,帝王切開の頻度はCTG群が18%と他の2群(各6%)に比較してはるかに高率であったと報告している。Quilliganら2)も,CTGとpH測定の両者の検査を行なうことによって,不必要な帝王切開の数を半減させることができたと述べている。したがって,CTGだけでは子宮内の胎児の状態を正確に把握することは不十分であり,pHの測定のような他の方法を併用することがきわめて大切である。胎児の心拍数の変化と,胎児血液のpHを中心とした生化学の異常との関係を正確に理解することは,周産期の胎児を管理する上できわめて大切なことであり,本稿ではこの点に関して最近の知見を中心に述べてみたいと思う。
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