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ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)は絨毛性疾患の診断,治療効果の判定,緩解後のfollow upなど治療上最も重要なtumor-markerであり,その測定法に関しては従来より各種の方法の開発改良が行なわれている。歴史的には生物学的測定法であるFriedman反応の時代から,最近広く臨床で使用されている免疫学的方法へと測定感度の上昇とともに移行してきた。免疫学的方法の中でもいわゆるラジオイムノアッセイ(RIA),最近では赤血球凝集反応(HAR),赤血球凝集阻止反応(HAIR),ラテックス凝集反応などを利用した簡易キットの開発が行なわれている。このような免疫学的方法の最も重要な点は,使用される抗体の特異性である。したがってできる限り高い特異性をもつ抗体を利用して,hCGを選択的に測定する方法を確立する努力が続いているのが現状である。
一方hCGは他のhLH,hFSH,hTSHなどの下垂体由来のゴナドトロピソと同様,α,βと呼ぼれる二つのsubunitよりなる糖タンパク質である。α-subunitはこれらのホルモンの間でほとんど同じ一次構造であるが,β-subunitはホルモンに特異的な活性を担った部分で一次構造も異なると考えられている。しかしその中でhCGとhLHは類似した生物活性を示し,β-subunitの一次構造も互いによく似ている。そのために抗hCG抗体は全くhCGとhLHを区別できず,また現在最も特異性が高いとして広く使用されている抗hCGβ抗体といえどもhLHとの交差性から完全に逃れることは不可能である。ところが興味あることにhCGのβ-subunitには,そのカルボキシル末端にhLHには存在しない特異的な約35個のアミノ酸残基(carboxyl-terminal peptide=CTPと略)が存在することがわかった1)。図1はhCGとhLHのβ-subunitの一次構造を示したものである。もしこの部分に対する抗体を作ることが可能であるならば,それはhLHとは全く交差しない新しいRIA系の確立が期待された。ここではわれわれの研究をもとに抗hCGβ-CTP抗体の作成,特異性の決定などについて述べ,またその臨床応用という立場から最近の進展について述べてみる。
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