臨床婦人科産科 17巻4号 (1963年4月)

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 妊娠第12週目絨毛細胞をMethacryrate包埋法を用い,電子顕微鏡により観察を行なつた。基本構造はSyncytium細胞(S細胞),Langhans細胞(L細胞),基底膜,間質細胞,胎児側毛細管である。S細胞はMicrovilliを有し,多数の嚢状小胞体が特徴であり,各種organellaがみられる。L細胞はおのおの明瞭な細胞膜を有し,約1500Åの厚さの基底膜に接している。細胞質内には糸粒体,Golgi装置,発育の悪い小胞体を認めるほか,径200〜400ÅにおよぶGlykogen顆粒が集団的に存在する像がみられる。基底膜は2層状に見え,電子密度の高い層は著明なinfolding像を呈している。基質内には線維芽細胞を始め星状の間葉細胞ならびに胎盤におけるMacrophageであるホフバウエル氏細胞を認める。絨毛中心部には胎児側の毛細管を形成する内皮細胞が赤血球を囲んでみられる。

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 「精神身体医学的報告を期待する」という九嶋教授の提言(本誌第17巻第1号)にたいして,精神医学の観点から一言のべるようにという御指示である。九嶋教授は,改めていうまでもなく,わが国の精神身体医学において指導的な立場にある方で,長年の経験にもとづいての発言は非常に示唆に富んでいる。

 九嶋教授は,医学の領野における精神身体医学的アプローチの必要性を強調しておられるのであるが,この点については誰も異論を唱えるものはないであろう。しかし全般的にみると,わが国ではまだ精神身体医学にたいする誤解が完全には解消されていないし,また精神身体医学をいかに実践したらよいかという具体的な問題にぶつかって,全く当惑しているというのが現状ではなかろうか。

提言 PROPOSAL

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 Gynecological urologyという語のニュアンスから容易に理解できるように,これはGyne—cologyととくに関連のあるUrologyの領域という意味である。正確にはGynecological and obstetrical urologyと称すべきである。泌尿器は,産婦人科と極めて関係が深い。婦人性器と泌尿器は,骨盤腔で互に密接して位置するという解剖的関係によつて,多数の泌尿器疾患が,婦人性器の異常と,因果関係をもつている。産婦人科医は性器のみを対象とするので,泌尿器異常についての智識も浅薄で,また関心が少ない。泌尿器科医は婦人科的原因による泌尿器異常の成立過程については,専門外であるから,智識は概念的たるを免れず,深い洞察に欠ける点があると思われる。両専門科のもつこのような弱点が,Grenzge—bietの進歩をはばんでいると私は考えている。

 膀胱は婦人科で取扱われることが多いが,腟,子宮頚部の慢性炎症との関連が大きい。帯下が外陰から尿路に侵入して発病するほかに,直接淋巴道を介して,膀胱壁に波及する場合を考えねばならない。慢性頚部炎が持続すると,子宮傍組織の硬化,すなわちParametritis chronicaを起すが,同様の機転で膀胱周囲の結合織に炎症がおよび,Dysuria (尿意頻数,排尿痛など)の原因となる。膀胱炎の治療に当つては,性管の炎症の存在に留意しないと,完全な治療はできない。

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序言

 多くの疾患において正しい診断をまつて,始めて正しい治療が行なわれる。しかし治療を行なつてみて始めて診断が下される場合も少なくない。Diagnosis ex juvantibus—治療による診断—がそれであり,その最も典型的なものの一つがここに述べる仰臥位低血圧症候群である。すなわち妊娠後期の妊婦に仰臥位時に血圧のかなり急速な下降がみられ,あるものではショックにまで至る重症型もあるが,それに伴なつて悪心や生欠伸などの自覚症状が見られるような場合,子宮内容の空虚化や側臥位への体位変換によつて,それらの症状が完全に消失してしまう一つの症候群である。最近,本症候群がとくに注目を浴びるに至つた直接の動機といえば,産科麻酔,なかんづく帝切時の腰麻ショックとの関連であり,麻酔学の発達に伴なつてその重要性が指摘されるに至つたのである。その後,一般正常妊婦さらに産婦にもかなりの頻度でこれが出現することが判明し,もし重症ショック型の本症候群が,分娩時に出現した場合は,本症候群に関する認識さえ充分であれば,直ちに時宜を得た体位変換という簡単な処置によつて難なく急場を切り抜けられよう。

腟カンジダ症の検査法 永井 英男
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はじめに

 産婦人科の診療でしばしば遭遇する疾患に,外陰掻痒感,帯下増量などを主徴とする腟カンジダ症があるが,その診断のための検査法は,一般の場合と同様簡便,的確,迅速,安価であることを必要とする。以下本症の概念,検査法の概況およびその新知見などに就いて述べてみたいと思う。

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 1836年にNasse1)が妊娠貧血に初めて注目してからすでに120余年の歳月が流れた。Kühnel2),Strauss3),Schultz4),鈴木5),志多6),河方7)らをはじめとし,最近ではGoldeck8),Kerr9),古谷10),森田11)らの枚挙にいとまのない数多くの業績が発表されているが,産科の臨床に当つて妊娠貧血の検出,治療ないし予防は遺憾ながら軽視されている傾向が強いように思われる。妊婦の合併症として妊娠貧血が大きく採り上げられない理由として考えられることは,先ず第一に自覚および他覚症状が薄弱であることが挙げられる。一般の貧血は息切れ,幻暈,心悸亢進,易疲労などの非特異的ながら健康者にはみられない一連の低酸素血症に起因する自覚症状がその発見に役立つのであるが,妊婦の場合は腹部の膨隆や妊娠による自律神経系の失調などが原因で一般貧血と類似した症状を訴え,さらに真の貧血が存在してもその症状は打ち消されて妊婦の自覚に登らない。すなわち,妊婦初期3カ月と末期3カ月とでは各々息切れ25%,37%,幻暈39%,16%,心悸亢進40%,47%,易疲労70%,69%の訴えが著者たちの調査ではあり,血液値の低下する妊娠末期に必ずしも訴えが多くなく,その反面,妊娠初期でも貧血様症状を訴えるものがかなり多いことが分る。

文献紹介

肥満婦人と出産,他
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 肥満者は寿命が短かく,危険症に対する抵抗性が低い。身長5フィート7インチ以外,体重160ポンド以上,単胎の妊婦92例を,16〜30週検討。まず食事をしらべ,1日1500Cal,蛋白95gに制限,鉄,VB1は豊富に与う。こうした制限できたもの48名,規定以上摂食したもの44名,これに比較のため同年令層,妊娠関係の一致する48妊婦を設定した。さて肥満婦人は従来の妊娠中,toxe—mioその他の合併症が33%ほど見られた。節食成功者はこの期間に11.3±5.3ポンド体重減少,節食不成功は3.2ポンドの体重減である。成功群からは中毒症・出血・血栓症・腎盂腎炎などの合併症11例,不成功群からは21例出た。つまり成功群では合併症が半減した。成功群からは自然分娩44,不成功群35で,成功群は自然分娩がより多く,したがつて,人工分娩・帝王切開が少い。分娩に要した時間も成功群が短かかつた。肥満妊婦の最大の合併症は出血(アトニー,前置胎盤,早期剥離など)で,これも成功群4,不成功群9となつて,前者に少かつた。成功群は分娩後体重が20ポンド低くなつていたが,不成功群は6.7ポンド減にすぎない。生れた新生児の身長体重には,両群に有意差がない。流産4は成功群から1,不成功群から3。新生児死は成功群1,不成功群1。以上から,肥満者では中毒症が多く,体重を減少せしめると低率になしうる。

講座 健康保険

保険診療の実際(その3) 三井 武
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 われわれが日常おこなつている産婦人科処置あるいは臨床検査について審査の際もつとも多く気がつくことは,これらの処置や検査の適正でないものがかなり多いことである。大学などの医育機関では詳細な検査が数多くおこなわれているにもかかわらず,処置が非常に少なく請求洩れではないかと思われる例が多いのに反し,一般の医療機関のそれは検査があまりおこなわれず,治療効果があがつているのか,いないのか不明のまま,慢然と同じ治療を繰り返しているというような請求例がよくみられる。またたとえば腟洗浄であるが,婦人科医ならば誰でも一応診察の際に行なうはずであるが,社会保険においては御承知の如く腟洗は治療のためにのみおこなわれるものとして「処置」の項に入れてあり,診察のための腟洗料は一切認められず,初診時の腟洗料はそれに該当する疾患がない限りすべて初診料に含まれることになつており,そのため査定の対象となることが往々にしてある。あるいはまた腟式手術または処置当日の腟洗料は認められないことになつているにもかかわらず,このことを知らずに請求して査定される場合が決して少なくない。従つて今回は産婦人科処置に関する問題について実際的に述べることにする。

連載 MY THERAPY in series・9

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 破壊性胞状奇胎の診断がつけば子宮単純全剔が行なわれるのが普通であり,単なる胞状奇胎には内容除去術の行なわれるのが普通である。しかし時には単なる奇胎と破壊性奇胎の鑑別がつかない時がある。私の調査した結果でも破壊性奇胎の大半に先ず内容除去が行なわれ,その後しばらくして破壊性であることに気づいている場合が多い。従つて単なる奇胎と思つて掻爬した場合でもその掻爬内容物の組織検索はもちろんのこと一般臨床所見,Friedman反応の追求,Hysterosalpingography,BBT曲線の観察など種々の補助診断法を用いてChorioadenoma des—truens,あるいはChoriocarcinomaの早期発見につとめなければならない。Chorioadenoma destruensでは原則として子宮剔出を行なうべきであるが,若年で将来挙子を希望する場合にはChorioadenomaでは予後が良いだけにできれば子宮剔出を避けて子宮を保存したいと考える時があると思う。すなわち将来に妊娠の可能性を残すわけである。すでに三谷教授が発表している如く,私共はこのような希望を有する患者2例に充分な臨床検査を行ない開腹し,破壊性奇胎穿孔周辺部の子宮壁を病巣とともに一部切除し,さらに切開部より内容除去術を行ない子宮壁を再縫合し子宮を残して観察した。

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 日常産婦人科の外来を訪れる患者の中に精神身体症,PSDと称すべきものにしばしば遭遇する。このPSDについて九嶋は詳細に述べ,療法とくに絶食療法,心理療法,薬物療法を唱えているが,絶食療法は患者側の都合でできなかつたり,心理療法も練達の医師でなければならず,そればかりか繁忙の中では,なかなか思うように行かないものである。従つて薬物療法としてはChlorpro—mazine,Reserpin,Mebrobametや最近はChlordiaze poxide (Contol,Balance)が用いられるようになつたが,これらの効果はある者には有効であり,まことに便利であるが,PSDの全てに有効であるとは残念ながら認め難いのである。それで筆者は薬物療法の無効と思われる者に対してCevetiおよびBiniの考案した電撃療法(Electroschockther—apie以下ESと記す)を行なつて効果を認めているので,以下に簡単に述べることとする。

 筆者はESの実施に当つて,患者の心,腎,肝および全身状態を充分検査したうえで行なうのはもちろんであるが,患者にラボナール0.3grにテラプチクを混じたものを静注して行なうし,人眼につかない安静室を使用,患者にはESの器具は絶対見せないようにし,患者に対して「少し眠るような特別な治療をしますから」といい聞かせて行なつている。

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 ① 骨盤位と診断した場合,外来で外廻転術を行なうか。その時期はどうか。何故か。

 ② 家庭で特別な体位をとらせるよう指導するか。どのような体位か。何故か。

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いとぐち

 Effortilの昇圧作用はSympatholと同様であるが,その効果は強力であり,作用の発現が緩除であり,持続時間も長い。従つて薬理的にはad—renalinとは異なつている。また,右心房内圧の変化や心臓の循環について実験観察を行なつた結果は,此較的少量の投与で心臓の活力を増強することが証明されている。大量投与によつてもなんら不快な副作用はないことが特徴とされている。

 成人に対しては,Effortilが心臓や末梢血管に対して調和のとれた作用をなし,心臓血管系の機能試験によつて心搏出量および分時搏出量の増加を認め,しかも,心搏数になんらの変化を伴なわずに心臓活動を増加する。一方Effortilの投与によつて細動脈の潅流が良好になり,末梢血管抵抗が減少する。この薬剤の投与による静脈圧の上昇や循環血液量の増加は,血液貯溜臓器からの血液の流出が旺盛になることを示している。従つて,毛細管,細動脈および組織の内圧は上昇する。交感神経系に属するadrenalinの誘導体としてのEffortilはadrenalinやEphedrinと共通する薬理作用を示すが,全く副作用がない。成人にあつては治療量の投与では心電図にも認むべき変化もなく,治療量の6倍量を投与してもわずかな,無害な一過性の変化を認めるだけであるといわれている。

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敬弔

 米国New York Cornell医科大学名誉教授George N. Papanicolaou氏は昨年(1962年)の2月19日に79歳でFlorida洲Miamiで長逝された。特に剥脱細胞学(exfoliative Zytologie)別名・塗抹細胞学(sme—ar cytology)を子宮癌の診断に創意せる功労者として,深甚の謝意を表すると共に,尚お有為な生涯の断絶を哀惜する次第である。

 教授は1883年5月13日ギリシヤ国Insel EuboeaのKymi (Coumi)に生る。Athen大学に医学を学び1904年にDr. med.となり間もなくドイツのMünchen大学に入り1910年にDr.phil.の学位を得た。1913年にU.S.Aに移りNew York病院の病理研究所に入り助教授となり,終にCornell医科大学の正学授となつた。

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 故Pommerenke教授は,昭和29年に,私が会長に推され,神戸で開催した日本産科婦人科学会総会の際に,「不妊症」について,特別講演をされた人である。

 それで私は,先般海外視察の途次,ワシントンに立ちよりて,その未亡人を訪うことにした。

Kranke (4)
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 指導あるいは教育といわれるものには,個人的なものと,集団的なもののあることは申すまでもないことであるが,妊婦指導にもその集団指導がある。すなわち母親学級である。

 最近の母親学級に対する一般妊婦の関心は日に日に高まり,数年前までは,人集めに苦労していた保健所が,現在では収容しきれない妊婦に悲鳴をあげている状態である。

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 子供に絵本を買つてやりたいと思い立つてあれこれ本屋で物色してみた。あまり経験のないことで手早くきまらない,そのもどかしさも,事が絵本となると,子供の笑顔がだぶつてきて,そうわるいものではない。二才半になるが,テレビより絵本の方に質の高い興味を示しだしたので,「こぶとりじいさん」につづく何かをおみやげにしてやればきつと大悦びにちがいない。女の子らしいものをと特に考慮するほどの年ではなしと,主におはなし風のものを私は熱心にさがしてみた。そして,気がついた。「舌きり雀」にせよ「かちかち山」にせよ「シンデレラ」にせよ「白雪姫」にせよ,どうも悪ものがそのままの表現で登場させられていて,子供の単純素朴で,飛躍の多い判断力に対し安心して与え放しにしてしまえない措辞が,件のおはなしの中に使われているのである。「舌きり雀」には「慾の深いおばあさんは」とあるし「白雪姫」には「まま母なので」とある。現に娘には二人の「おばあちやん」がいるのだし,私自身,母は実の母ではなかつた。

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 開腹術ならびに麻酔実施上,心疾患の有無は重要な問題である。心疾患については,術前にその存在を見つけこれに対処することはもちろんであるが,むしろさらに大きな問題はこのような侵襲による心疾患の発生をいかに予知するかにかかつてくる。頻度からいえばこのような症例は非常に少ないのであるが生死にかかつてくることとておろそかにすることはできない。

 われわれはこのような点で興味ある症例を経験したのでここに報告するとともにこの問題について検討を加えてみた。

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はじめに

 Graefenberg (1930)が子宮腔内に銀螺旋環を挿入して避妊効果をあげたと発表して以来,これに関する幾多の追試が行なわれ避妊の目的はある程度達し得るが,子宮腔内の異物による障害については有害であるとするもの,あるいは無害を主張するものなどがあつて意見の一致を見ない。わが国では太田(1933)が銀螺旋環を改良して,「プレセアリング」と名づけ避妊器具としての有効性を強調している。しかし子宮腔内に異物を挿入したのちの子宮内膜像についてはGraefenberg,Fraenkel,Aschheim,太田,沢崎,藤森,橋本らによつて種々議論されたが,その障害の有無については意見が分れている。

 私も避妊リング挿入後の子宮内膜像の組織学的観察を行なつたので,その結果について報告する。

流早産

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 習慣性流早産(渡辺氏の所説により連続2回以上のものとした)は,臨床上,複雑多岐な原因を有し,従つてその治療法は多種多様であるが,比較的近年,実地的価値が注目されるようになつた子宮頚管無力拡大症に対する手術療法を中心にして,治験感想を述べてみたい。

 過去1カ年間(昭和36年7月1日より昭和37年6月0日迄)に来院した習慣性流早産患老は第1表の10例(別表)で,そのうち手術的に治療したものは2例(症例5と9)である。年令は第2表の如く23〜34才にわたり,26〜30才が最も多い。

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緒言

 婦人科外来治療において最も頻繁に遭遇し治療上困難を感ずるものに帯下や出血を主訴とする諸疾患があり,その主なものは腟トリコモナス腟炎,腟カンジーダ症,細菌性腟炎,頚管炎またはいわゆる腟部糜爛などであり,したがつて,臨床検査上,腟トリコモナス原虫,カンジーダ,原因菌と考えられるグラム陰性および陽性の各種の細菌,多量の白血球が認められる。陳旧会陰裂傷による陰門哆開,陳旧頚管裂傷,頚管粘膜の外飜などに病原体(主として細菌)が感染して惹起されたものがあるほか卵巣機能不全(ことにエストロゲン欠乏)などの原因にもより病原体(ことにカンジダなど)が感染して発病したものも少なくなく,その結果としていわゆる腟清浄度は第3度を示すものであり,ために,内分泌性のものは難治でしかも再発する傾向が強い。これらの疾病に対し従来,種々の腟錠が目的に応じ使用され,中でも抗生物質の応用は治療上大きな意義を有している。

 今日一般に用いられているものはすなわち,トリコマイシン,オーレオマイシン,アクロマイシン,テラマイシン,クロラムフェニコール,ロイコマイシンなどを含有する腟錠である。これらの腟錠を長期間使用する場合,使用された抗生剤に対する抵抗性を病原体がえて来ることがあり,事実,長期間通院患者中に自覚症状の改善がなかなか得られず,また,病原体の消失を認め得ない例もあつて,これにより強い感受性を有する新抗生剤の使用が望まれるわけである。

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はじめに

 われわれは先にフラジール腟坐薬によりトリコモナス腟炎の治療を行ない,一次治癒率100%,再発率21.6%の好成績を得たが,本剤は動物実験により内服によつてもかなりの血中濃度が保たれ,副作用も少ないことが知られている。外国の文献でも内服単独療法で相当の治癒率が得られており,われわれも前回腟錠による再発例,難治例の一部に内服を併用して好結果を認めた。

 今回はまた塩野義製薬より1錠中250mgの有効成分を含有するフラジール内服薬および腟錠の提供を受け,トリコモナス腟炎に対して内服単独療法および患者の内服,腟内挿入と配偶者の内服の併用療法を行ない両者の成績を比較検討したので報告する。

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はしがき

 産婦人科外来におけるトリコモナス腟炎の難治性については,しばしば臨床家を困惑させるものであり,最近においても大川他(1662)は,この点について詳細な検討を試みている。一方,トリコモナス原虫に対する薬剤の進歩は,目をみはるものであり,数多くの薬品が発見されて次々と市販されており,いずれも一次治癒率は100%に近いのである。

 しかし,再感染によるのであるか,あるいは根治しえないためであるのか,その再発例は,どの薬剤においても現実に多くみられ,松本他(1962)の調査では各種の薬剤を投与した19報告で,10.5%から64.0%において再発が報告されている。

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はしがき

 日常,婦人科外来を訪れる患者の中で,もつとも多い疾患は子宮腟部糜爛であるが,これに次ぐものはトリコモナス腟炎である。そして,この疾患の頑固で難治なことはしばしば臨床医の悩まされるものの一つであることはいうまでもない。

 近年,化学物質および抗生物質の発達は,医学の各分野において驚異的な発展と治療効果がおさめられ,炎症性疾患の大半はこれらの薬剤によつて治癒を認められている。

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緒言

 トリコモナス腟炎を婦人科外来で診療する数は年々増加しており,最近は第5性病といわれるほどの蔓延ぶりでこれに対する治療および予防対策を樹立することは極めて重要であるといわねばならない。

 諸家のトリコモナス腟炎に対する治療成績を通覧すると分るように,種々なる薬剤を使用することによつて,その薬剤の一次消虫率はかなり良いのに,治療後放置すれば短期間で原虫が再現して来る再現率が高いのは,原虫の生活環境や,患者の性生活,寄生部位の問題などが複雑に介在しているからに他ならない。

基本情報

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臨床婦人科産科
17巻4号 (1963年4月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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