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DESKジヨッキー(3)—絵本を選ぶ
遠
pp.351
発行日 1963年4月10日
Published Date 1963/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202800
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子供に絵本を買つてやりたいと思い立つてあれこれ本屋で物色してみた。あまり経験のないことで手早くきまらない,そのもどかしさも,事が絵本となると,子供の笑顔がだぶつてきて,そうわるいものではない。二才半になるが,テレビより絵本の方に質の高い興味を示しだしたので,「こぶとりじいさん」につづく何かをおみやげにしてやればきつと大悦びにちがいない。女の子らしいものをと特に考慮するほどの年ではなしと,主におはなし風のものを私は熱心にさがしてみた。そして,気がついた。「舌きり雀」にせよ「かちかち山」にせよ「シンデレラ」にせよ「白雪姫」にせよ,どうも悪ものがそのままの表現で登場させられていて,子供の単純素朴で,飛躍の多い判断力に対し安心して与え放しにしてしまえない措辞が,件のおはなしの中に使われているのである。「舌きり雀」には「慾の深いおばあさんは」とあるし「白雪姫」には「まま母なので」とある。現に娘には二人の「おばあちやん」がいるのだし,私自身,母は実の母ではなかつた。
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