Japanese
English
綜説
妊娠後期仰臥位低血圧症候群(1)
Supine hypotensive syndrome in late pregnancy
加藤 順三
1
,
渡辺 卓
1
,
田中 敏晴
2,3
Junzo Kato
1
,
Toshiharu Tanaka
2,3
1東京大学医学部産科婦人科学教室
2東京警察病院産婦人科
3東大産婦人科
pp.277-283
発行日 1963年4月10日
Published Date 1963/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202781
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序言
多くの疾患において正しい診断をまつて,始めて正しい治療が行なわれる。しかし治療を行なつてみて始めて診断が下される場合も少なくない。Diagnosis ex juvantibus—治療による診断—がそれであり,その最も典型的なものの一つがここに述べる仰臥位低血圧症候群である。すなわち妊娠後期の妊婦に仰臥位時に血圧のかなり急速な下降がみられ,あるものではショックにまで至る重症型もあるが,それに伴なつて悪心や生欠伸などの自覚症状が見られるような場合,子宮内容の空虚化や側臥位への体位変換によつて,それらの症状が完全に消失してしまう一つの症候群である。最近,本症候群がとくに注目を浴びるに至つた直接の動機といえば,産科麻酔,なかんづく帝切時の腰麻ショックとの関連であり,麻酔学の発達に伴なつてその重要性が指摘されるに至つたのである。その後,一般正常妊婦さらに産婦にもかなりの頻度でこれが出現することが判明し,もし重症ショック型の本症候群が,分娩時に出現した場合は,本症候群に関する認識さえ充分であれば,直ちに時宜を得た体位変換という簡単な処置によつて難なく急場を切り抜けられよう。
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