臨床外科 45巻10号 (1990年10月)

特集 胸水・腹水への対処

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 胸腔・心嚢・腹腔内液体の診断には従来,理学的所見と単純X線が主として用いられてきたが,現在では超音波法が,とくに心嚢や腹部領域では最も簡便でしかも鋭敏な検査法として,ベッドサイドで欠かせないものとなっている.CTやMRI法は簡便性という点ではこれらに劣るが,貯留液の分布やその性状,さらには周囲臓器のより詳細な診断情報などを提供してくれる長所があり,有用性の高い検査法として広く用いられている.これらの画像診断法の現況と有用性について述べた.

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 乳糜胸は比較的稀な疾患であり,手術,外傷,悪性腫瘍が主な原因である.確定診断には,胸水中の脂肪蛋白電気泳動によるchylomicronの証明,中性脂肪の高値が重要である.原則として,胸腔ドレナージと高カロリー輸液による保存的治療を行うが,治癒が遷延して低栄養から死亡することもあり,食道や肺切除後など原因疾患によっては早期に積極的な外科的治療が必要であろう.一般には,乳糜の排液が1,500ml/日以上の場合,もしくは,2週間以上持続して減少の傾向がない場合を手術適応としている.手術は,乳糜貯留側で開胸して胸管の結紮を行うが,胸管の走行には非常にバリエーションが多いので注意を要する.

心嚢液貯留 小池 加保児 , 藤村 重文
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 心嚢液貯留の機序に関しては,解明されていない点が多々ある.本稿では,体腔内液貯留に関する一般的な考え方に基づき,心嚢液貯留の機序に関して検討を加えた.心タンポナーデは救急処置を必要とし,早急に診断をつけなければならない.このため,臨床的自覚症状と他覚症状の発現機序に関し解説した.同様に,臨床検査法に関し一般的なものから順に述べた.診断および治療の点で,心嚢穿刺は不可欠である.この手技を述べるとともに,心嚢腔内カテーテル留置術,剣状突起下および胸骨穿孔術下心嚢開窓術につき,基本手技の手順を解説した.

肝硬変腹水 川崎 誠治 , 出月 康夫
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 肝硬変症における腹水生成の基本的な機序であるStarlingの平衡について述べた.腹水の貯留は有効循環血漿量との関係が示唆され,さらに有効循環血漿量は腎での水・ナトリウム貯留傾向と密接な関連があるが,この腎での水・ナトリウム貯留傾向に関する神経性・体液性諸因子について最近の知見を掲げた.腹水の治療に関しては,保存的治療,利尿剤投与,peritoneo-venous shunt,腹水穿刺について述べた.また,肝硬変合併症例における外科手術後の腹水貯留への対策,肝腎症候群の概念について概説した.

癌性胸腹水 田口 鐵男 , 木本 安彦
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 癌の末期的な病態としての癌性胸腹水について,その病態生理,臨床症状,治療に関し論述した.治療法としては,栄養管理,排液および内科的対処,化学療法,免疫療法につき考察した.癌性胸腹水は,治療にはよく反応する病態と思われるが,その治療効果は,すなわち,癌の根治にはつながらない.しかし,癌性胸腹水の制御は,全身状態の改善とともに,次の治療の可能性を生む.臨床家としては,可及的副作用の少ない方法で,癌性胸腹水を制御した後に,残った病巣の治療に希望をかけなければならない.

カラーグラフ Practice of Endoscopy

胃・十二指腸内視鏡シリーズ・Ⅶ

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 出血血管を物理的に把持止血することは,外科手術における最も確実な止血法であるが,最近開発され使用されている,オリンパス社製HX−3Lによる経内視鏡的クリップ止血法も,外科手術の針糸結紮に相当する確実な止血手技である(図1,2).

 クリップ止血法の最大の利点は再出血が極めて少ないことであり,初回に十分なクリップ把持ができた症例では,ほとんど再出血はなく,クリッピングの追加も必要としない.手技に慣れるとほとんどの症例を止血できるようになるが,止血不可能な症例ではクリップ把持そのものが不可能な症例が多く,この点で,一時的に止血することの多い他の止血法とは大きく異なる.しかし観点を変えると,このクリップ止血の適応が明確であることは,外科手術を考慮する上で好都合であり,また頻回な内視鏡的止血が不可能で,比較的早期に外科手術に踏み切らなければならない,われわれの施設のような一般病院に適した手技と考える.

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はじめに

 腹腔鏡的胆嚢摘出術(laparoscopic cholecystectomy)は,近年,Perissatら1,2)を中心に欧米で急速に普及しつつある新しい胆石症の治療法であり,開腹せずに,胆嚢を結石(あるいはポリープ)とともに摘出するユニークな手技である.

 本法の特徴は,ESWL(体外式衝撃波療法)や胆石溶解療法と異なり,開腹胆嚢摘出術と同様の胆石症に対する根治療法である点にある.また,開腹術に比べ美容上醜悪な瘢痕を残さず,術後イレウスの危険が少ないと考えられ,かつ生体に与える侵襲も軽い,などの利点を有している3)

 欧米ではすでに数千例が本法により治療を受けているが,本邦では本年5月に教室で第1例目が施行されたところで,まだまったく新しい手技である.現在も症例を重ねつつあるが,本法の手技についてはわれわれも1症例ごとに反省し,改良を加えている段階である.今回は,現時点での本法についてのわれわれの考え方,行っている手技について概要を解説する.

イラストレイテッドセミナー 一般外科手術手技のポイント

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 LESSON 20(本誌45(4),1990)でとり上げたが,もう一度細部について述べる。

心の行脚・13

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 45年目の終戦記念日がきた.あのときも実に蒸し暑い日であった.当時,私は学徒出陣の陸軍見習士官で,たまたま代用血液製造の用務で久留米にいた.玉音放送をきいたのは柳川のある酒屋さんだった.ひどい雑音の中で,辛うじて聞き分けられる天皇の悲痛な肉声をたしかに聴いた.昨日のことのように鮮やかに思い出される.

 最近,小堀桂一郎氏の「宰相鈴木貫太郎」を読んだ.ポツダム宣言を日本が受諾する経緯が冷静な眼で記述されており,終戦を軍隊で迎えた私にとっては感銘深いものであった.

一般外科医のための形成外科手技・22

人工皮膚と創傷被覆材の知識 山田 敦
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はじめに

 皮膚の機能は外的刺激から内部臓器を保護し,体液の漏出を防ぐなど複雑多岐である,広範囲熱傷や外傷により皮膚が失われると,著しい疼痛,細菌に対して感染しやすく,水分・蛋白質・電解質などの体液の喪失は大きい.治療法としては正常に機能する自家皮膚で欠損部を覆うことが重要であるが,広範囲熱傷など範囲および状況によっては,受傷直後に自家植皮できない場合がある.このような場合,一定期間創面を安全に被覆し,上皮化を促進させ,また良好な移植床を形成させる目的で創傷被覆材が利用されている.近年の化学工業の発展によって,多くの創傷被覆材が開発され,鎮痛,不感蒸泄の抑制,分泌物の吸収や排出などに対しかなり対応可能となっている.しかし,適応を誤ると細菌感染などが増強し,むしろ被覆材のために創傷治癒を遅らせる結果となることもある.したがって,それぞれの被覆材の特徴を熟知した上で使用しなければならない.本稿では代表的な被覆材について述べる.

膵臓手術の要点—血管処理からみた術式の展開・4

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Ⅰ.膵全摘術と門脈合併切除

 膵全摘術に特有の血管処理はないが,残胃の栄養血管として左胃動脈を注意深く温存する,短胃動静脈を結紮切離して,脾および膵体尾部を大きく右方へ翻転する1)

 膵全摘術が必要な症例の多くは門脈合併切除を要するので,あらかじめ鼠径部を開いて,大伏在静脈と上腸間膜静脈の間にアンスロンカテーテルを挿入しておく2).門脈肝血流遮断時間はできるだけ短縮すべきであるから,カテーテルはクランプしておき必要時に備える.それに関連して,肝動脈剥離にはとくに注意が必要であり,操作時の攣縮がとれ,強い拍動が得られてはじめて門脈遮断が可能となったと判断すべきである3).門脈合併切除を予定した場合の血管処理について述べる.

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はじめに

 筋強直性ジストロフィー症は1909年Steinertらにより総合的に記載された筋強直,筋萎縮(特に顔面,頸部),白内障,若禿,性腺萎縮,内分泌機能不全などによって特徴づけられる遺伝性変性疾患である.本疾患は発症頻度が約10万人に1人の比較的稀な疾患であるが1),われわれは本症を合併した2症例に対して開腹手術を行う機会を得たので若干の文献的考察を加え報告する.

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はじめに

 長期間の松葉杖使用による慢性鈍的外傷のために腋窩動脈瘤を生じ,その血栓性閉塞と壁在血栓に起因した上肢動脈塞栓に対して緊急手術を施行し,良好な結果が得られた1例を経験したので報告する.

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はじめに

 副乳癌は稀な疾患であるが,診断,治療,定義上の問題点は多い.最近われわれは,術前に右乳癌と診断したが,術後検索にて副乳癌と診断しえた1例を経験したので,本邦報告例とあわせて検討し,報告する.

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はじめに

 サルコイド反応を伴った悪性腫瘍の報告は過去に多くみられるが1〜15),食道癌に関する報告はみうけられない.われわれは頸・胸・腹部リンパ節に広範なサルコイド反応を伴った食道癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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はじめに

 大腸原発の悪性腫瘍はそのほとんどが高および中分化型腺癌であり,扁平上皮成分を有する腫瘍の報告はきわめて少ない.

 われわれは,上行結腸に発生し,腸閉塞を来した腺扁平上皮癌の1例を経験したので報告する.

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はじめに

 S状結腸軸捻転症が青年期に発症することは稀であるが,今回われわれは25歳男性例を経験した.またこの症例では,下行結腸の固定が正中近くへ偏位し,かつ不十分であったことが誘因になったと思われる稀な症例である.

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はじめに

 先天性の肝左葉欠損は稀であり,その報告は少ない.また,これまでの報告例では胆道造影や血管造影を併用しないで診断された例もあり1,2),その診断根拠が不明瞭なものもある.われわれは,右肝管の閉塞を疑われて来院した患者に対し,術前に胆道造影,CT,血管造影,肝胆道シンチを施行して,右肝管完全閉塞および肝左葉外側区域欠損と診断し,手術で肝左葉外側区域欠損を確認した症例を経験したので報告する.

基本情報

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臨床外科
45巻10号 (1990年10月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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