理学療法と作業療法 5巻4号 (1971年8月発行)

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特集　呼吸不全

呼吸不全の病態生理とその対策古賀　良平 5巻4号 , 1971年8月 , pp.251-256

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　呼吸不全とは

　まず最初に呼吸不全と肺不全とを区別して把握する必要がある．肺不全（Pulmonary insuficiency）とは生理学的データの有無にかかわらず，肺あるいは肺を中心とした，呼吸器系の疾患を基礎疾患とした息切れ，呼吸困難をきたすか，あるいは正常な活動をなしえない状態をいい，これに対して呼吸不全（Respiratory failure）は肺機能障害を有する人で，生理学的データ，特に動脈血のO₂分圧（PaO₂）およびCO₂分圧（PaCO₂），あるいはそのいずれかが正常範囲を逸脱して異常な値を示し，そのため，生体が正常な機能をなしえない状態を呼ぶことになっている．

呼吸器系の理学療法―特に呼吸訓練と体位排痰法について栗原　延子 5巻4号 , 1971年8月 , pp.257-264

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はじめに

　1930年以後，慢性呼吸器疾患の治療として呼吸訓練が喘息，慢性気管支炎，肺気腫などの患者のために行なわれているが，それは，むしろ姑息的療法としてである．この場合の運動の価値は，疾患そのものの経過からみた場合に効果はないが，呼吸の効果的な様式（腹式呼吸）をとりいれることにより，息切れの改善がみられ，楽な呼吸を身につけることができるという利点におかれている．

　近年，医学はおのおのの外科分野における手術法や麻酔法の進歩，また，新しい化学薬剤の出現などにより著しく進歩し，それに伴い手術層が，老人から乳幼児までへと幅が広がってきている．老人は特に呼吸機能が低下し，すべての面で生体予備力に関して劣っている．また，壮年層にも慢性の肺疾患や気管支炎をもっている者，麻酔時の気管内チューブのための気道の刺激，術後に投与された薬剤（筋弛緩剤，麻薬）などによる呼吸抑制，傷の痛みのための不十分な浅い速い呼吸，疼痛により咳ができなく，気道分泌物の喀出が困難なためガス交換が阻害され，肺合併症の原因ともなること，開胸を伴う気管支・肺・食道・心臓の術後の肺の虚脱による肺機能の一時的低下などが起こりやすい状態となっている．肺機能の回復を助け，合併症を防止し，全身状態の回復を早めるためには，術後の呼吸管理が重要視される．

　このように，内科的な呼吸器疾患や術後の呼吸管理の一端をになうものとして，理学療法部門での呼吸訓練や体位排痰法がクローズアップされる．以下，呼吸器系の理学療法の中で行なわれる①呼吸訓練，②体位排痰法につき，その方法を述べたい．

グラフ

モザイク山口　鞆音 5巻4号 , 1971年8月 , pp.242-243

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骨X線像の基礎知識（1）大田　仁史 5巻4号 , 1971年8月 , pp.244-246

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とびら

心と手と生活吉原　明 5巻4号 , 1971年8月 , pp.249-250

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　心

　寛容と忍耐，これは人間のもつ最も人間らしい，他を許し自身を戒める格言と考える．

　私たちが他人を見るとき，まず自らの尺度で人を評し，その人の意図する事柄や，物事に対して胸襟を開くことをせず，自分勝手な考えのもとに都合のよいように物事を運びたがるものである．

講座

運動療法の実際（2）武富　由雄 5巻4号 , 1971年8月 , pp.265-269

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　関節可動域訓練（ROM Exercise）の実際

　関節や筋の障害によって，関節可動域（ROM）は制限される．たとえ筋力は十分でも，機能回復は著しく妨げられる．下腿三頭筋の短縮による尖足では，かかとに十分体重をかけられず，歩行は不安定となり，姿勢異常を招く．

　ところで拘縮を予防し，拘縮に陥った関節の運動範囲を改善するためには，正常の関節機能を熟知しておくことが，ぜひ必要である．

骨X線像の基礎知識（1）―腰椎のX線像―正常像大田　仁史 5巻4号 , 1971年8月 , pp.270-272

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　骨のX線像をはじめて学ばんとするものにとって，解剖学的に複雑な構造をしている脊椎のX線像を，立体的な感覚でとらえることはきわめてむずかしいことです．X線像は，いわば立体的なものを平画に投影した影絵のようなものですから，よほど解剖学的な関係を頭に入れておかなければ，理解できないでしょう．脊椎のX線像に比較すれば，解剖学的に簡単な長管骨のX線像を理解することは，それほどむずかしいことではありません．

　脊椎の普通写真をいろいろの角度からとって別にかかげましたので，どこがどういうふうに写っているのか覚えてください（写真1-5，図1参照）．腰痛を訴える患者には，最低2方向からX線をとります．必要に応じては斜位で2方向とります．また脊椎の運動性が問題となる場合は，前・後屈位で側面からとります．断層撮影をすることもありますが，特殊な場合ですから今回はかかげませんでした．

モザイク（1）―モザイク工作の一般的特性山口　鞆音 5巻4号 , 1971年8月 , pp.273-276

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　モザイクを作業療法に応用する意義

　‘ものを作る’ということは，人間本来の喜びであろう．だれもが幼いころから，あるときはひとりで思いついたり，また，模倣したりしながら，作ることの喜びを体験してきたものと思う．最近では，男の子どもたちのほとんどがプラモデルを好み，‘作る楽しさ’は，意識の集中力の乏しい子どもたちでさえも，熱中させる力をもっている．

　作業療法の一治療手段として，手工芸が取り入入れられているのは，‘作品を作り出す’という基本的な喜びを与えながら，他方では，製作工程のなかで必然的に要求される身体的・精神的な活動を，いろいろな障害の要素に対して，治療的に取り入れ，応用しようとするものである．手工芸の一種であるモザイクを，単なる工作の段階にとどめず，治療の手段とするためには，作品を作ることだけにとどまらず，製作工程の全般にわたって，精神的・身体的な面から動作の分析を行ない，障害の種類や程度などに適応した，効果的な応用ができるように心がけることが，たいせつである．

研究と報告

義肢支給出張時の調査結果報告竹内　由里子 , 袖本　光子 , 高橋　章江 5巻4号 , 1971年8月 , pp.277-280

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はじめに

　昭和44年度厚生年金による義肢再新調による巡回診断には，医師1名，義肢製作者4名，PT2名，OT1名計8名があたり，5か月の間に処方，採型，仮り合わせ，装着に，それぞれ1週間ずつ費やしている．今回の調査に使用したものは，①厚生団指定の調査表（診療録），②義肢検定表，③ADLテスト，④YG，CMIテスト（報告は省略），⑤疼痛アンケート，⑥義肢回収伝票である．これらの調査をまとめたものを述べ，諸兄姉のご教示をあおぐしだいである．

Ankle dorsi FlexionとVibrator刺激について池谷　義道 , 渡辺　洋 , 前嶋　正子 5巻4号 , 1971年8月 , pp.281-285

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はじめに

　CVA片マヒにおいて歩行上重要性をもつ足背屈（Ankle dorsi Flexion）の随意的誘発と，分離については，多くの困難な問題が含まれている．これは損傷ダメージの程度および痙性，共同運動などの影響を強く受けるためと考えられる．

　われわれはファシリテーション・テクニックの一方法としてVibrator刺激（以下vib刺激と略す）を用い，足背屈の誘発と，それに伴ういくつかの現象について分析したので報告する．

誌上カンファレンス

リウマチのリハビリテーションと外科的治療梅田　晃昌 5巻4号 , 1971年8月 , pp.288-292

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　座長（明石講師）　リウマチという病気は，リハビリテーションをやるうえにおいて，非常に複雑な要素が深くからまってきているように思います．たとえば患者の痛みがとにかくひどい，痛みのコントロールが行なわれてなければ，患者さんたちは理学療法，作業療法になかなか協力してくれない，また家庭の状態によって，リハビリテーションのニードが異なることなど，いろいろの変化があるように思います．きょうは，第1例として蓮○末○さんについて，主治医の高取先生より簡単に症例のご説明をお願いいたします．

海外だより

アメリカのPT教育について奈良　勲 5巻4号 , 1971年8月 , pp.293-295

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　体育教師からPTへと転身

　著者は鹿児島大学の教育学部高等体育科を1964年の春に卒業，その春から東京の高校で体育の教師をしておりました．そのころ，日本のリハビリテーションの向上発展の必要性を痛感して，比較的，体育との関係が深いPTの分野への関心が起こり，1966年の夏渡米，その年の秋からカリフォルニア州のローマリンダ大学（医科系の専門大学）で，PTの勉強を始めました．

　このころ日本にはまだPT学校が1校しか存在していなかったし，日本のPTは世界PT連盟加盟にほど遠いところにありました．どうせPTの勉強を始めるのなら本格的にPTを行なっているアメリカで，という考えで，別に英語に自信があったわけではありませんが，この決心にいたりました．

書評

脳性まひ児家庭療育の指導書「脳性まひ児の家庭療育」―ナンシーR. フィニー著　小野啓郎，他訳寺山　久美子 5巻4号 , 1971年8月 , pp.296

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　‘ことCPに関するかぎり，PT，OT，STとセラピストを分断するのはよくないのではないか．CPセラピストとしての認識，つまりCPを全体としてダイナミックにとらえる姿勢をもたなくては，すぐれたセラピストたりえない’というのが私のかねてからの持論であった．この著者フィニー女史は有名なボバース夫妻のもとにあるPTであるというが，まことにその意味でCPのあらゆる面を熟知したセラピストと見受けた．CP治療歴13年という．

　CPは周知のごとくやっかいな障害である．いやになって他に転向した者，毎日マンネリの中に暮らすセラピストを私はたくさん知っている．この本から想像する著者は，つねにフレッシュな気持ちでCPを細かく観察し，いろいろ試み，確かめてきた人であろう．冒頭まず著者のその努力に敬意を表したい．

特別寄稿

日本におけるPT教育におもうアーカート　イアン A 5巻4号 , 1971年8月 , pp.297-300

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　日本で理学療法士の教育機関が作られたのは，ごく最近のことである．これほど短い期間に，これほど多くのことが，これほどうまくなしとげられたのは，実際驚くべきことである．しかし，こういったからといって，教育機関についてこれまでなされてきたことが，完全であり，非の打ちどさろがないというわけではない．それはすばらしい出発であった．しかし，それがあくまで出発であったということは，現在，教育期間の延長や，教育内容の深化が，盛んに議論されていることからもわかる．

　今私が，この文を書きながら考えているのは，日本のセラピストのための，より高度な教育の，より基礎的，そしてより臨床的ないくつかの面についてである．

トピックス

第6回日本理学療法士学会開かる星　虎男 , 井野　省三 5巻4号 , 1971年8月 , pp.301-305

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　第6回日本理学療法士学会（学会長谷岡淳氏）は，さる6月21日（月）・22日（火）の両日，上野の東京文化会館で，全国から516名の参加を得て行なわれた．

　今学会のかかげたテーマは，基礎的研究のもとに，理学療法の学問的体系をめざすことであったが，はたして，その第1歩を踏み出しえたであろうか．ここでふり返ってみよう．

資料

リハビリテーションに関しての国会質疑応答 5巻4号 , 1971年8月 , pp.306-310

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　本誌5巻2号の巻頭緊急特報（第2報）に一部既報のとおり，理学療法士及び作業療法士法の特例延長問題をめぐる，PT・OT両協会側の運動のひとつの成果として，本年3月18日の衆議院社会労働委員会で，リハビリテーション全般の問題に関して，野党議員（社会党田辺誠氏）から，かなりつっこんだ質問が政府側になされ，政府側をして将来に関して積極的な姿勢を示さざるをえない立場に追い込んだ．

　国会の場でリハビリテーションに関してこれだけ広範囲な議論が行なわれたのははじめてであり，画期的なことである．その意味で，ここにその全文を紹介する（第65回国会衆議院社会労働委員会議録第12号から，小見出しは編集部）．

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読者の声／職業とわたし 5巻4号 , 1971年8月 , pp.272

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　今まで，病院においては全国病院マッサージ協会時代から数多くの視力障害者の手によって，理学療法がなされてきた．しかしこれも今となってはその職場を追われる身となっているのはまちがいない．全盲に至ってはその影すら消えつつあるといってよい．

　盲人に与えられた職はあんま，はり，きゅうの3療しかない．しかし，それすら正眼者の手によって食い荒らされまた盲人の新職業開拓もいっこうに進んでいない．

　（国立東京視力障害センター　小笠原博美）

文献抄録 5巻4号 , 1971年8月 , pp.286

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文献抄録 5巻4号 , 1971年8月 , pp.287

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会員の目大東　章 5巻4号 , 1971年8月 , pp.302

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会員の目楠　一義 5巻4号 , 1971年8月 , pp.303

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会員の目篠田　昱子 5巻4号 , 1971年8月 , pp.304

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会員の目加藤　栄一 5巻4号 , 1971年8月 , pp.305

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編集後記 5巻4号 , 1971年8月 , pp.314

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　7月20目経済企画庁原案の国民生活白書が閣議で承認された．今回の白書は‘豊かな社会への構図’という副題がつけられ，内容も高度成長が国民生活に与えた害悪の分折に力を入れ，消費者運動や住民運動に示された抗議を前向きに評価，事前の対策を講ずるよう提起している．この点はこれまでの‘おしきせ白書’より1歩進んでいるとしてまずは認めておきたい．

　しかしだからといって，行政府の姿勢がコペルニクス的転回をとげたと考えるのは誠に早計であり，これらはむしろ次の2点に由来するものと考えたほうが妥当であろう．第1にスタグフレーションと国際収支の大幅な黒字などにみられるように，日本経済は高度成長から安定成長政策の時期にはいったこと．第2には産業優先の行政措置が4大公害訴訟やスモン訴訟，四日市石原産業事件あるいは大気汚染などに現われたように再生産構造そのものを破壊するし，さらにこれに伴う住民の不満をかわすことができなくなったということである．

基本情報

理学療法と作業療法
5巻4号
(1971年8月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0386-9849 医学書院

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第1位つま先接地による下肢荷重量の調節溝呂木忠,遠藤敏,中沢住夫,中島喜代彦,山田純生理学療法と作業療法 17巻 5号 pp. 319-323 (1983年5月15日) 医学書院
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第9位 Finger-Function Quotient（FQ）花村都理学療法と作業療法 7巻 4号 pp. 267-275 (1973年4月15日) 医学書院
第10位呼吸不全の病態生理とその対策古賀良平理学療法と作業療法 5巻 4号 pp. 251-256 (1971年8月9日) 医学書院

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