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編集後記
pp.314
発行日 1971年8月9日
Published Date 1971/8/9
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100469
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7月20目経済企画庁原案の国民生活白書が閣議で承認された.今回の白書は‘豊かな社会への構図’という副題がつけられ,内容も高度成長が国民生活に与えた害悪の分折に力を入れ,消費者運動や住民運動に示された抗議を前向きに評価,事前の対策を講ずるよう提起している.この点はこれまでの‘おしきせ白書’より1歩進んでいるとしてまずは認めておきたい.
しかしだからといって,行政府の姿勢がコペルニクス的転回をとげたと考えるのは誠に早計であり,これらはむしろ次の2点に由来するものと考えたほうが妥当であろう.第1にスタグフレーションと国際収支の大幅な黒字などにみられるように,日本経済は高度成長から安定成長政策の時期にはいったこと.第2には産業優先の行政措置が4大公害訴訟やスモン訴訟,四日市石原産業事件あるいは大気汚染などに現われたように再生産構造そのものを破壊するし,さらにこれに伴う住民の不満をかわすことができなくなったということである.
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