小児科診療 85巻7号 (2022年7月発行)

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特集　血液･腫瘍疾患、急ぐべきときは｢今｣-oncologic emergencyを知ろう

血液･腫瘍疾患を疑う検査結果とその対応　白血球増多荒川　ゆうき 85巻7号 , 2022年7月 , pp.789-794

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▼末梢血中の白血球数が50,000～100,000/μL以上を超える状態を｢著明な白血球増多症｣とよび、おもな原因は白血病である。▼著明な白血球増多症は、白血球停滞をきたしやすく様々な症状を引き起こすoncologic emergencyの状態であり、特に頭蓋内出血と呼吸障害に注意が必要である。▼著明な白血球増多症を伴う白血病に対しては、原疾患の治療を急ぐとともに、白血球停滞を認める場合には白血球アフェレーシスあるいは交換輸血による白血球除去が考慮される。

血液･腫瘍疾患を疑う検査結果とその対応　貧血坂本　謙一 85巻7号 , 2022年7月 , pp.795-799

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▼貧血に伴う呼吸循環不全の有無をまず確認し、｢急ぐべき貧血か否か｣を判断する。▼他の血球異常の有無、MCV、網状赤血球を軸にして貧血の原因を鑑別する。▼赤血球輸血を実施する際は、複数名で製剤認証および患者確認をしっかり行う。

血液･腫瘍疾患を疑う検査結果とその対応　血小板減少の鑑別と対応関口　昌央 85巻7号 , 2022年7月 , pp.801-804

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▼血小板減少の鑑別は多岐にわたるが、産生低下と破壊亢進のいずれが主体か、そして先天性か後天性かに分けて考えると理解しやすい。▼一般的な小児科診療では、感染や薬剤投与に伴う一過性かつ軽度の血小板減少の頻度が高い。▼高度、あるいは遷延性･反復性の血小板減少があれば血液疾患や遺伝性疾患を考慮し、骨髄検査や遺伝子検査などの精査を検討する。▼3系統の血球減少をきたし得る疾患でも、血小板減少だけが先行し得る点に注意する。▼血小板輸血を行う際の血小板数のトリガー値や目標値は、原因疾患や出血の有無によって変わる。

血液･腫瘍疾患を疑う検査結果とその対応　凝固異常石原　卓 85巻7号 , 2022年7月 , pp.805-809

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▼生体内での閉鎖循環系において、よどみない血流循環を維持するためには正常な血管構造および止血凝固機構のバランスを保つことが重要である。▼すなわち止血凝固機構のバランス破綻により出血症状ないしは血栓症をきたすこととなり、重症度によっては生命の危機および生活の質の低下に陥る。▼小児期発生の出血性疾患には好発年齢があること、先天性素因の有無に留意しながら家族歴、既往歴の詳細な問診をとることが診断への重要なポイントである。▼本稿では、小児科で遭遇する出血性疾患の原因となるおもな凝固因子異常に関して、診断に至るためのポイントについて概説する。

血液･腫瘍疾患発症時の症状とその対応　下肢麻痺山田　悠司 85巻7号 , 2022年7月 , pp.811-814

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▼下肢麻痺は腫瘍による脊髄圧迫の症状として出現する可能性がある。▼多くの場合は背部痛を伴う。▼腫瘍性脊髄圧迫を疑った場合は早急に脊髄MRIを撮影する。▼腫瘍性脊髄圧迫を認めた場合にはデキサメタゾン投与を開始し、手術･放射線照射･化学療法などによる圧迫解除を速やかに行う。

血液･腫瘍疾患発症時の症状とその対応　縦隔腫瘍林　健一郎 85巻7号 , 2022年7月 , pp.815-818

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▼縦隔腫瘍は小児胸部腫瘍の発生頻度が高い疾患である。▼縦隔腫瘍に対する検査、処置時の体位や鎮静は、呼吸不全や循環虚脱をきたす可能性があるため、細心の注意をはらう必要がある。▼安全な管理のためには、小児血管腫瘍医を中心とした多部門連係が重要である。

血液･腫瘍疾患発症時の症状とその対応　腫瘍出血小松　秀吾 , 照井　慶太 , 菱木　知郎 85巻7号 , 2022年7月 , pp.819-822

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▼腫瘍出血はoncologic emergencyの重要な一要因であり、小児のショックを伴う急性腹症においては頻度としては低いものの鑑別として常に考える必要がある。▼腫瘍出血の治療では、保存的治療のみでの管理が困難と判断される場合には速やかに外科治療へ移行する必要があり、そのことを念頭においた準備をしておくべきである。▼小児に対するinterventional radiologyは低侵襲で有用な止血手段であるが、手技の難しさや合併症のリスクなどから熟達した技術と慎重な手技が要求される。

血液･腫瘍疾患発症時の症状とその対応　頭痛･嘔吐･ふらつき宇佐美　憲一 85巻7号 , 2022年7月 , pp.823-826

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▼小児脳腫瘍の初発症状は多彩であり、複数の症状を有することが多い。▼頭痛･嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状に対しては、まず頭位挙上30°を行う。▼頭蓋内圧亢進に対しては、浸透圧利尿薬、ステロイドの投与を行う。▼けいれん発作は必ず止痙させ、再発を防止するために抗てんかん薬を使用する。

血液･腫瘍疾患治療中の症状とその対応　腫瘍崩壊症候群森　麻希子 85巻7号 , 2022年7月 , pp.827-832

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▼腫瘍崩壊症候群(TLS)は、腫瘍細胞が急激に崩壊することで発症する｢oncologic emergency｣な病態である。▼TLSは発症すると致死的となり得るため、発症を予防することが肝要である。▼TLS発症リスクをくり返し評価し、適切な予防･治療を行う必要がある。

血液･腫瘍疾患治療中の症状とその対応　感染症松井　俊大 85巻7号 , 2022年7月 , pp.833-838

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▼小児の発熱性好中球減少症においては、感染源が特定されないことが多い。▼好中球減少中の小児がん患者は、｢発熱｣がなくても重症感染症を呈していることもある。▼発熱性好中球減少症と診断した場合は、速やかに診察、血液培養の採取などを行い、60分以内に抗緑膿菌作用のある抗菌薬の投与を開始する。

血液･腫瘍疾患治療中の症状とその対応　悪心･嘔吐歌野　智之 85巻7号 , 2022年7月 , pp.839-842

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▼抗腫瘍薬の種類により悪心･嘔吐のリスクが異なるため、抗腫瘍薬の催吐リスクに基づいた制吐薬の使用が重要である。▼成人で使用されている制吐薬であっても、小児に対して適応外の制吐薬があるため、注意が必要である。▼小児における抗腫瘍薬による嘔吐のリスクは、抗腫瘍薬の種類だけでなく、年齢や抗腫瘍薬の治療期間が影響する可能性がある。

血液･腫瘍疾患治療中の症状とその対応　疼痛余谷　暢之 85巻7号 , 2022年7月 , pp.843-848

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▼疼痛管理の最初のステップは症状の評価である。発達段階に応じた評価方法を考慮する。▼痛みの原因を画像所見や身体所見から検討する。▼薬物療法の基本は、痛みの原因に合わせて行う。▼腫瘍による脊髄圧迫は緊急の対応を要する。▼子ども自身への痛みの教育は、鎮痛効果を上げるためにも重要である。

血液･腫瘍疾患治療中の症状とその対応　出血小倉　妙美 85巻7号 , 2022年7月 , pp.849-856

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▼小児期に遭遇機会が多い。免疫性血小板減少症、血友病の出血時対応を示した。▼どこからの出血かをきちんと診断し、出血部位に応じた治療を行う。▼出血時の対応(受診の必要性等)を患者･家族に日常診療のなかで説明しておくことが重要である。▼不十分な治療は合併症を引き起こすことがあるため、注意が必要である。

血液･腫瘍疾患治療中の症状とその対応　膵炎箕輪　圭 , 鈴木　光幸 , 清水　俊明 85巻7号 , 2022年7月 , pp.857-862

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▼アスパラギナーゼ治療中の患者に腹痛を認めた場合、｢急性膵炎を疑うこと｣が重要である。▼膵炎を疑った場合には絶飲食のうえ、輸液を開始し、バイタルサインのモニタリングを開始する。▼急性膵炎と診断したら早期に重症度判定を行い、その後も経時的に重症度評価を継続する。▼治療の基本は十分な外液輸液と疼痛管理であり、症例により抗菌薬の予防投与を考慮する。

血液･腫瘍疾患治療中の症状とその対応　神経合併症横須賀　とも子 85巻7号 , 2022年7月 , pp.863-867

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▼小児血液、腫瘍性疾患において、診断前後、治療前後に様々な神経学的合併症が起こり得る。▼急性期に起こり得る神経症状や病態として、意識障害、けいれん、頭蓋内圧亢進、脳血管障害、脊髄圧迫があげられる。▼それぞれの原因には、腫瘍性、感染性、薬剤性、血管障害性、電解質異常、凝固障害、放射線によるものなどがある。

血液･腫瘍疾患治療中の症状とその対応　眼合併症野村　耕治 85巻7号 , 2022年7月 , pp.869-874

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▼ステロイド薬による眼圧上昇例については、緑内障点服薬によるおおむね眼圧管理可能である。▼結膜炎や角膜上皮障害の大半は抗菌眼軟膏、角膜上皮保護点眼液により改善するが、まれに角膜潰瘍や結膜偽膜を形成する。▼放射線照射例で難治性の角膜上皮障害となり、治療に抵抗、高度の視機能障害をきたす場合がある。▼サイトメガロウイルス感染症において、網脈絡膜炎の発症リスクがあり網膜萎縮や視神経萎縮をきたす。

血液･腫瘍疾患治療中の症状とその対応　抗腫瘍薬漏出松本　幸男 , 吉田　和恵 85巻7号 , 2022年7月 , pp.875-878

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▼点滴漏れは正式には血管外漏出と呼称され、小児では重症化しやすい。▼血管外漏出は予防と早期発見が重要である。▼抗腫瘍薬は組織障害性があり、血管外漏出を発見した際は早期の対応が重症化予防につながる。▼抗腫瘍薬の血管外漏出は、患者やその家族が医療過誤と捉えることがあり、丁寧な対応を要する。

血液･腫瘍疾患治療中の症状とその対応　再発加藤　元博 85巻7号 , 2022年7月 , pp.879-880

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▼小児血液･腫瘍疾患の再発は治療開始後の最多のイベントである。▼再発の多くは、症状の出現前に定期的なフォローアップで発見される。▼再発の症状としては、発熱や疼痛などの非特異的な症状が多く、必ずしも初発時の症状と一致しない。

原著

小児の非器質性胸痛60例の後方視的検討犬塚　幹 , 山田　克彦 85巻7号 , 2022年7月 , pp.881-884

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胸痛を主訴に当科を受診した小児のなかから、器質的原因を除外した非器基性胸痛60例(心因性胸痛11例、特発性胸痛49例)を後方視的に検討した。心因性胸痛の背景には学校不適応や人間関係のストレス、家族の死などのエピソードが認められた。心因性胸痛と特発性胸痛には発症年齢や胸痛の特性において明らかな差は認められず、非器質性胸痛を心理的要因の有無により細分類する意義は乏しいと考えられた。

症例報告

遷延する嘔吐、下痢の症状から溶連菌感染症の診断に至らず、リウマチ熱を発症した1例有村　萌 , 米衛　ちひろ , 丸山　慎介 , 上野　健太郎 , 岡本　康裕 85巻7号 , 2022年7月 , pp.885-888

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症例は7歳女児。発熱と咳嗽、軽度の咽頭痛、悪心･嘔吐を認めたが、抗菌薬を使用せず解熱した。しかし解熱後も悪心･嘔吐、下痢が2週間以上持続した。35病日に舞踏病を発症。心臓超音波検査で僧帽弁閉鎖不全を認めた。抗ストレプトリジンOも陽性であり、77病日にリウマチ熱と診断した。咽頭所見が乏しくても消化器症状が遷延する場合には溶連菌感染症も鑑別にあげることが適切な治療につながると考えた。

基本情報

小児科診療
85巻7号
(2022年7月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0386-9806 診断と治療社

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