耳鼻咽喉科 53巻1号 (1981年1月発行)

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比較的稀な上顎部の嚢胞山田　一美 , 江夏　努 , 稲福　繁 , 石神　寛通 , 瀧本　勲 53巻1号 , 1981年1月 , pp.4-5

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　耳鼻科領域では比較的稀と思われる上顎部の嚢胞の4症例を，X線写真を中心に紹介する。本邦当科における本疾患統計から2,3まとめて表にした。本稿の4症例は共に嚢胞摘出術のみで経過は良好である。

原著

1側内耳単独奇形（X線的）の2症例亀井　民雄 , 安岡　義人 , 石井　英男 , 清水　龍一 53巻1号 , 1981年1月 , pp.7-13

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　I．はじめに

　組織学的，またX線的内耳奇形の報告はすでに100編を越えるが^16），ふつうそれは，他奇形との合併，また両側性にみられ，1側性の，しかもほぼ内耳にのみ限局した耳奇形の報告は数少ない。しかし幾つかの報告^{4,7,17〜18）}より，それが，先天性1側聾，またはその可能性を含む，幼小児期に発見される，いわゆる原因，発症時期不詳の若年性片側聾^6,9）（または若年性1側高度難聴^8,18））の，隠れた原因として看過し得ないと感じられている。今回筆者らは，最近経験されたかかる1側内耳単独奇形（X線的）の2症例につき報告し，その奇形型，またこの難聴との関係等につき考察を加えてみることにした。

耳管造影X線による耳管機能の分析牛呂　公一 , 本庄　巌 , 岡崎　伸博 , 熊沢　忠躬 53巻1号 , 1981年1月 , pp.15-19

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　I．はじめに

　筆者らは先にイヌ耳管筋の電気刺激実験^1）で，耳管が口蓋帆張筋のみで開くこと，さらにサル耳管のX線観察^2）で，張筋が耳管外壁を前方に引くことにより耳管開大の起こることを確認した。しかし，人における耳管開大のプロセスを示した研究は乏しく，さらに耳管のどの部分が開大するかなどはまだ不明である。一方，筆者らは先にネコのX線的研究を含めた実験^3）により，耳管にポンプ作用様の異物排除機能があることを確認したが，人においてはこの機能のX線的証明はない。そこで本研究では人の耳管X線造影により耳管開大の詳細なプロセスを調べることと，人における耳管のポンプ作用様異物排除機能とをX線的に観察証明しようと試みた。

CNVの臨床応用—特に心因性難聴に対する診断的意義伊藤　真郎 , 細谷　睦 , 広川　剛夫 , 佐藤　恒正 53巻1号 , 1981年1月 , pp.21-26

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　I．はじめに

　CNV（contingent negativc variation）は，Walterら^1）が，予告となる第1刺激と命令刺激となる第2刺激との間に生ずる陰性の電位変動を発見し命名したもので，別名cxpectancy waveとも称されるように，第1刺激を認識した結果，次の第2刺激の出現を期待すると生ずるものとされている。

　すなわち，この電気現象には"認識過程"そのものが客観的に表出されるため，これを聴力検査に応用した場合の臨床的意義はきわめて大きい。すでにBrianら^2,3）が語音聴力検査に，Prevecら^4）が純音聴力検査に応用し，また，本邦では佐藤ら^5）がCNVの臨床応用に対する基礎的検討を行っている。CNVはその特徴から詐病ないし心因性難聴の聴力検査には，特に有効な検査手段になると思われる。筆者らは，これらを疑う症例に同検査を施行し，陽性所見を得たので報告する。

高校生にみられた音楽聴取によると思われる高音障害型感音難聴症例小泉　智 , 鈴木　篤郎 53巻1号 , 1981年1月 , pp.27-32

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　I．緒言

　最近，長野県高教組，高水支部学校保健研究会は，支部所属の6校の高等学校で生徒数4,486人全員に学校聴力検査を実施したところ，全体の2％（90人）が少なくとも1,000Hzか4,000Hzの20dB純音を聴取できない結果を得，同時に行ったアンケート結果を参照して，その主要原因がヘッドホン，イヤホンなどによる長時間の音楽聴取にあると推定した。その成績は，昭和54年度日教組教研集会において「聴力障害の生徒の生活実態」と題して発表された。もしこのことが事実とすれば，それは単に限られた地域の問題ではなく，耳鼻科医としても看過できぬことといわなければならない．今回，このうちの1校より，該当者23名の検査を依頼され，比較的精密な聴力検査を実施したところ，以下の結果を得たので取りあえずここに報告し，ご批判をあおぐ次第である。

顎，顔面，口腔領域における進展再発癌に対する摘出術，再建術と2,3の問題点今野　昭義 , 戸川　清 , 飯塚　桂司 53巻1号 , 1981年1月 , pp.33-40

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　I．はじめに

　図1に示すような進展再発癌症例が，最後の救いを求めるかのように筆者らの外来を訪れることがある。顎，顔面，口腔の癌腫は高度に進展した状態でも局所の腫瘍が直ちに生命にかかわることはないが，治療によって局所腫瘍がコントロールされない限り，多くは顔面，口腔は徐々に破壊され，結局は遠隔転移，頸動脈破裂，または頭蓋内腫瘍進展のために死亡するまで，疼痛，醜形，悪臭，出血，摂食障害，構音障害などで苦しみ続けることになる。

　近年再建外科の発達により，従来は切除不可能であった頭頸部領域の進展癌症例に対しても，根治を目的とした拡大切除術が行われるようになった^1〜5）。筆者らの教室においても，開講以来，再発癌に対して根治切除が可能と判断された症例においては，わずかでも残されている根治への可能性を求めて，照射療法，化学療法，免疫療法との併用をもとに，かなり徹底した腫瘍切除術を行ってきた。

副鼻腔真菌症—症例とCT所見の検討西川　益利 , 西川　恵子 , 八木　幹忠 , 野口　高昭 , 関谷　透 53巻1号 , 1981年1月 , pp.41-44

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　I．はじめに

　副鼻腔における真菌症例は比較的稀ではあり，その報告は少ない。近年増加の傾向にあるといわれ，その原因は抗生物質，副腎皮質ホルモンなどの頻用であるといわれている^1〜4）。当教室においてもすでに頭蓋内真菌症例^5,6），上顎洞真菌症例^7）を報告している。今回筆者らは昨年経験した症例について，computed tomography（以下CTと略す）所見について2，3検討し，若干の文献的考察を加えて報告した。

頭頸部adenoid cystic carcinomaに対する化学療法の検討犬山　征夫 , 堀内　正敏 , 甲能　直幸 , 増野　精二 , 小津　雷助 , 浅岡　一之 53巻1号 , 1981年1月 , pp.45-52

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　I．はじめに

　頭頸部管腔に発生する悪性腫瘍は扁平上皮癌が大部分を占めており，その治療法についても手術および放射線療法はもちろん，化学療法に関する報告も枚挙にいとまがないほどである^1）。しかしながら，adenoid cystic carcinoma（以下ACCと略す）に関しては発生頻度が低いこともあって，その治療法に関する報告は少なく，ことに化学療法に関するまとまった報告はほとんどみられない。今回筆者らは頭頸部ACC15例に対して化学療法を行い若干の知見を得たので報告する。

胃に落下した異物の転帰について立木　孝 , 斉藤　達雄 , 阿部　隆 , 平田　秀登 53巻1号 , 1981年1月 , pp.57-60

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　I．はじめに

　食道の異物は，直達鏡下に摘出することを原則とするが，異物を誤嚥したと訴えて来院する患者の中には，すでにその異物が宵または腸に落下していて，直達鏡下摘出の対象とならない場合がある。一般には「噴門を通過した異物はすべての関門を通過する」といわれ，異物は正常の消化道を経て無事排出される場合がほとんどであるが，中には腹腔内で種々の合併症を起こした症例も報告されており，噴門を通過して胃に落下すればすべて安全と考えることは危険である。

　この報告は，そのような視点に立って消化管異物，特に胃または腸に落下した異物の転帰について調査したものである。

口腔底癌の2症例永野　隆治 , 山本　英一 , 稲垣　千果夫 , 沖田　容一 , 折田　洋造 53巻1号 , 1981年1月 , pp.61-64

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　I．緒言

　口腔底癌は全口腔内癌中10〜15％を占め，比較的頻度は少ないが，予後は最も悪く，また形態機能的問題もあって手術を躊躇する疾患である。当教室において2例の口腔底癌を経験したので，若干の文献的考察を加えて報告する。

聴器癌5症例上野　則之 , 皿井　靖長 , 田内　光 , 江口　哲 , 鳥山　稔 53巻1号 , 1981年1月 , pp.65-69

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　I．はじめに

　聴器に発生する腫瘍は稀であるといわれている。当科にて約4年間に5例の聴器悪性腫瘍を経験したので，その経過，処置を表1にまとめて報告し，諸家のご批判を仰ぎたい。

鏡下咡語

温故知新—久保猪之吉教授，第17回万国医学会参列復命書大藤　敏三 53巻1号 , 1981年1月 , pp.54-55

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　われわれ明治生まれの者の受けた教育の基本は論語的であったことは否めない。その中の「子曰，温故而知新」とは，古来深く根を下した日本人の伝承語としても今後もなお生き抜く詞ではないかと思うので題名とした。中国に生まれた孔子は西暦紀元前400〜500年代の人であり，その言行録が日本に伝えられたのは紀元後285年だから，何れにしても古い話である。孔子は「学而時習之，不亦説乎」と言う。また曰く「人不知而不慍，不亦君子乎」。これらは皆一連の句であるので，一括して日本の故語としても味読三昧の価値があるので，標題を補足する意味で並べたのである。

　科学の世界は日進月歩で一瞬の停滞も許されないことは表面である。その裏面には今までの発展の径路，歴史の痕があるはずである。換言すれば人類の文化の歴史である。その歴史の跡を眺めて人間の文化に思いを致すことも，科学技術の進歩に重要なことである。社団法人・日本耳鼻咽喉科学会は他の学会に先駆けて，この史料編纂に着手した。記録の整理は次の時代の文化への重大な遺産であるからである。

基本情報

耳鼻咽喉科
53巻1号
(1981年1月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0386-9679 医学書院

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