鏡下咡語
温故知新—久保猪之吉教授,第17回万国医学会参列復命書
大藤 敏三
1
1日本医科大学
pp.54-55
発行日 1981年1月20日
Published Date 1981/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209204
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われわれ明治生まれの者の受けた教育の基本は論語的であったことは否めない。その中の「子曰,温故而知新」とは,古来深く根を下した日本人の伝承語としても今後もなお生き抜く詞ではないかと思うので題名とした。中国に生まれた孔子は西暦紀元前400〜500年代の人であり,その言行録が日本に伝えられたのは紀元後285年だから,何れにしても古い話である。孔子は「学而時習之,不亦説乎」と言う。また曰く「人不知而不慍,不亦君子乎」。これらは皆一連の句であるので,一括して日本の故語としても味読三昧の価値があるので,標題を補足する意味で並べたのである。
科学の世界は日進月歩で一瞬の停滞も許されないことは表面である。その裏面には今までの発展の径路,歴史の痕があるはずである。換言すれば人類の文化の歴史である。その歴史の跡を眺めて人間の文化に思いを致すことも,科学技術の進歩に重要なことである。社団法人・日本耳鼻咽喉科学会は他の学会に先駆けて,この史料編纂に着手した。記録の整理は次の時代の文化への重大な遺産であるからである。
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