臨床泌尿器科 73巻10号 (2019年9月)

特集 腎移植臨床の進歩―集学的治療における泌尿器科医の役割を再考する

企画にあたって 齋藤 和英
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 腎移植は最も生理的・理想的な腎代替療法として認知されており,その成績は免疫抑制療法や日和見感染症に対する診断・治療の進歩によって飛躍的に向上している.そのため,患者家族にとって腎移植の成功と長期の生存・生着への期待はきわめて高い.しかし一方で,抗ドナー抗体による抗体関連型拒絶反応,移植直後のaHUS・TMA,BKV腎症など,患者の生命予後や移植腎喪失にもつながる,克服しなければならない問題点はまだまだ多い.また,長期生存・長期生着が可能になったからこそ問題になる悪性腫瘍や心血管合併症の発生など,取り組むべき問題はむしろ広がりをみせている.

 腎移植は集学的治療であり,高血圧・脂質代謝・動脈硬化・CKD-MBDなどの内科的合併症の診断・治療,栄養管理,運動療法,社会復帰や精神医学的側面など,多岐にわたる専門領域をもつ医師・メディカルプロフェッショナルとの連携も欠かせない.

〈総論〉

腎移植の最新の統計と成績 八木澤 隆
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▶ポイント

・腎移植の件数は年々増加し,2018年には1855件(2019年2月時点の集計速報)が施行されている.生体腎移植と献腎移植の割合は90%,10%である.

・移植成績は向上し,2010〜2016年実施例での生着率は生体腎で1年98.7%,5年94.3%,献腎で1年96.7%,5年88.0%である.2001〜2009年実施例の10年生着率は85.2%(生体腎),70.7%(献腎)であり,長期成績の向上が課題である.

・移植適応は拡大し,高齢患者,糖尿病患者,未透析患者の移植例が増加している.ABO血液型不適合移植も広く普及している.献腎移植では長期透析例が多くを占めている.

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▶ポイント

・腎移植を選択する慢性腎臓病患者も高齢化している.そのため,内科合併症や透析合併症を多く抱えている.

・腎代替療法選択肢の1つに腎移植がある.患者の療法選択には多職種連携でSDMにより支援することが理想である.

・腎移植術前後の内科合併症,透析合併症への対応のために領域横断的な医師,多種職者の連携が必要である.

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▶ポイント

・まずは,それぞれの施設で確立された標準的な術式を理解,習得することが重要である.

・血管吻合の困難な症例などには,血管形成を臨機応変に行い,血流を保つための最適な血行再建を行う.

・移植患者は慢性腎不全および免疫抑制状態により,些細な合併症でも重篤な全身状態悪化を起こしうることを念頭に置く.

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▶ポイント

・生体ドナー腎採取術は健常人への数少ない手術の1つである.

・腹腔鏡手術のなかでも難易度の高い手術であると同時に,ドナーの絶対的安全確保が最重要である.

・開放性生体ドナー腎採取術では,移植後の急性尿細管壊死の発生はほぼ皆無であったことから,腹腔鏡下生体ドナー腎採取術においても同様の成績が期待される.

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▶ポイント

・移植尿路結石症の発症確率は0.2〜2%である.

・移植尿路結石症の診断方法は,超音波検査,KUB,単純CT scan,移植腎盂尿管造影がある.

・移植尿路結石症の治療は,生体腎ドナーの場合はバックテーブルでの治療が主である.腎移植後発症の場合は,体外衝撃波結石破砕術,経皮的尿路結石破砕術,経尿道的尿路結石破砕術,切石術などがある.

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▶ポイント

・腎移植後のリンパ漏・リンパ囊腫は比較的高頻度に起こる外科的合併症である.

・予防のためドナー,レシピエントともに丁寧な手術操作が望まれる.

・リンパ漏の起因部位はレシピエント側の外腸骨領域リンパ管であることが多い.

・リンパ管造影は診断のみならず治療的効果も期待できる検査法である.

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▶ポイント

・エベロリムスは免疫学的側面だけでなく,非免疫学的側面からも生存率・生着率を改善する可能性がある.

・エベロリムスを導入することで,CNIやステロイドの減量ができる可能性が高い.

・ステロイドの最小化に関しては,再発性腎炎や術前の内服歴を十分に念頭に置いて施行すべきである.

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▶ポイント

・腎移植医療において,抗体関連拒絶反応の制御および加療は非常に重要である.

・特に抗ドナー特異抗体に関して,既存抗体に対しては移植前の減感作療法が,移植後は新規抗体産生の抑止を目的とした免疫抑制療法が必要とされる.

・抗体関連拒絶反応は治療抵抗性であり,依然確立された治療はない.

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▶ポイント

・ABO不適合腎移植において術前の脱感作療法は非常に重要である.

・脱感作療法の内容は患者ごとに個別化できる可能性が示唆される.

・免疫学的順応のメカニズムは,補体制御蛋白の変化と抗体産生の抑制機構が関与している可能性がある.

〈腎移植後の内科的治療〉

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▶ポイント

・腎移植においては,拒絶反応・感染・免疫抑制薬など契機にTMAが発症することがある.

・そのなかには病態が急激かつ深刻である症例もあり,早期診断・早期治療介入を行わなければ,移植腎喪失や高度移植腎障害を引き起こす可能性がある.

・初期治療に不応な場合は,腎移植後の二次性TMAであっても,症例によっては適正にaHUSと診断し,エクリズマブ投与も含めた集学的治療が必要である.

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▶ポイント

・移植医は拒絶反応だけでなく,腎移植後に起こりやすい感染症,特に日和見感染症のマネジメントについても熟知しておく必要がある.

・移植前のリスク評価とワクチン接種のほか,移植後の経過時間によって発生しやすい感染症が変化することを押さえておく.

・サイトメガロウイルス感染症については,腎移植に特化したガイドラインとして本邦から発刊されており,その他の感染症は米国のKDIGOのガイドラインのほか,本邦の造血細胞移植のガイドラインシリーズが参考となる.

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▶ポイント

・6歳未満の小児ドナーからの腎臓提供では,両腎を1人へ移植するen bloc腎移植の選択が可能である.

・en bloc腎移植では血管吻合にドナーの大動脈と下大静脈が主に用いられる.

・尿路障害を有する小児への腎移植は,適正な時期を見定めて計画的な治療介入が必要である.

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 重症敗血症では播種性血管内凝固症候群を併発することがある.われわれは,急性腎盂腎炎による敗血症性DICにおけるrTMの投与期間は急性期DIC診断基準に基づいて決定しており,その有用性を検討した.2009年4月〜2016年9月に急性腎盂腎炎による敗血症性DICと診断された27例を対象とした.急性期DIC診断基準で4点以上の患者にrTMを投与し,3点以下となった時点で投与終了とした.投与8日目でのDIC離脱率は85.2%で,最終的には全例でDIC離脱の結果が得られた.治療後の28日死亡率は14.0%で,重症合併症は認めなかった.以上より,急性期DIC診断基準に基づくrTM投与期間の設定は有用である可能性が示唆された.

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 76歳女性.遊技店で倒れているところを発見され,CTで長径8cm大の右腎動脈瘤および膀胱タンポナーデを認め,救急搬送となった.腎動脈瘤破裂の診断でTAEを施行した.TAE前後で腎機能の著明な低下を認めず,腎摘出術を回避できた症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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 今回われわれは,RARPで用いたHem-o-lok®クリップ(HOLC)が膀胱内へ迷入した2例を経験した.症例1 : 膀胱尿道吻合部の糸が緩んだためHOLCで寄せて縫縮.術後3か月時,膀胱頸部にHOLCの迷入を認めた.症例2 : 膀胱三角部を縫合修復.術後5か月時,同部位に側茎処理で用いたHOLCの迷入を認めた.2例とも無症状で,膀胱癌の経過観察中に偶然に認められた.膀胱尿道吻合部や膀胱縫合部近傍ではHOLCの使用を控えることが望ましい.

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 本書は第1章の総論に続いて,第2章から第11章までは各論として臓器別に記載されていて,さらに第12章から第15章までは「小児・先天異常」,「外傷・後腹膜血腫」,「リンパ節」,「IVR」と,少し切り口を変えた構成になっている点が特徴的である.

 総論部分では,各画像検査における理論的な特徴を解説することによって,目的とする疾患を描出するためにはどういったことが必要か,なぜこの疾患を見るにはこの画像診断法が適しているのかということが非常にわかりやすく書かれている.第2章以降の各論では本書のタイトルにあるように,症例ベースでの解説となっているので,その症例における画像所見の特徴や注意点がわかりやすく解説されている.「画像所見のポイント」というところでは,放射線診断の先生にお聞きしたい事項を整理して記載されていて有り難い.また,所々に出てくる「Note」というコーナーは重要なポイントをわかりやすく解説しているので,読者にとって非常に有用である.各提示症例には,「問題」まで用意されていて,理解度のセルフチェックにも使える.

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目次

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次号予告

編集後記 小島 祥敬
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 医学部入試の面接試験で,「医学部を志望した理由は何ですか?」という定番の質問があります.そしてその質問に対して,時々遭遇する受験生の解答は,「家族が病気になったとき,家族を救えるような医師になりたいと思い,医学部を志望しました」です.面接官として,よりよい受験生に入学してもらいたいと必死な私は(ある意味心が捻じ曲がっているのかもしれませんが),高校や予備校での特訓の末に身につけた受験生の解答術に騙されないよう,その“模範解答”の中に隠されているであろう受験生の心の奥底を一生懸命探ろうとします.しかし,かくいう私は,そんな「家族のために」などという高い志をもつこともなく医学部を受験し,そして現在医師をしています.

 さて私ごとですが,先日母親が地元近くの病院で,虫垂癌の膀胱浸潤と診断され,TURBTで組織診断をされたのち,腸切除術と膀胱全摘除術を受けました.半年以上前から頻尿と血尿があったようですが,近くの開業医で抗生剤を処方され続けていたという,浸潤性膀胱癌ではありがちな話です.さしたる高い志をもつことなく医師になった私にとっても,家族が大きな病気になったという事実とともに,母親が膀胱全摘除術を受けたという事実は,疾患が膀胱癌ではなかったものの,泌尿器科医としては大変ショッキングなことでした.

基本情報

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臨床泌尿器科
73巻10号 (2019年9月)
電子版ISSN:1882-1332 印刷版ISSN:0385-2393 医学書院

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