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編集後記
小島 祥敬
pp.780
発行日 2019年9月20日
Published Date 2019/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413206725
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医学部入試の面接試験で,「医学部を志望した理由は何ですか?」という定番の質問があります.そしてその質問に対して,時々遭遇する受験生の解答は,「家族が病気になったとき,家族を救えるような医師になりたいと思い,医学部を志望しました」です.面接官として,よりよい受験生に入学してもらいたいと必死な私は(ある意味心が捻じ曲がっているのかもしれませんが),高校や予備校での特訓の末に身につけた受験生の解答術に騙されないよう,その“模範解答”の中に隠されているであろう受験生の心の奥底を一生懸命探ろうとします.しかし,かくいう私は,そんな「家族のために」などという高い志をもつこともなく医学部を受験し,そして現在医師をしています.
さて私ごとですが,先日母親が地元近くの病院で,虫垂癌の膀胱浸潤と診断され,TURBTで組織診断をされたのち,腸切除術と膀胱全摘除術を受けました.半年以上前から頻尿と血尿があったようですが,近くの開業医で抗生剤を処方され続けていたという,浸潤性膀胱癌ではありがちな話です.さしたる高い志をもつことなく医師になった私にとっても,家族が大きな病気になったという事実とともに,母親が膀胱全摘除術を受けたという事実は,疾患が膀胱癌ではなかったものの,泌尿器科医としては大変ショッキングなことでした.
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