臨床泌尿器科 68巻5号 (2014年4月)

知っていると役立つ泌尿器病理・25

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症例:60代・男性

 数か月前から血尿に気づいていたが,尿細胞診にて悪性と診断され,広範な病変が疑われたため膀胱全摘出術が施行された。切除材料ではやや粘膜の肥厚した領域が比較的広範囲に認められた。図1~3はその代表的な組織像(弱拡大,中拡大,強拡大)である。

 1.鑑別診断を述べよ。

 2.病理診断は何か。

綜説

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要旨 低活動膀胱には明確な診断基準がなく,病型分類も未確立で,治療法が限定的であるなどさまざまな問題がある。近年の研究により,低活動膀胱の原因としては,膀胱そのものの,末しょう神経,中枢神経のそれぞれの異常が複合的に関与することが示されている。また,一部の過活動膀胱は低活動膀胱に対する代償機転である可能性を示唆する報告も散見される。動物モデルを用いた低活動膀胱の病態の解明は新たな治療法開発につながる可能性が期待される。本稿では,まとまって論じられることが少ない低活動膀胱について,その疫学,原因,診断,治療とそれぞれに関する今後の課題を概説した。

手術手技 女性泌尿器関連の手術―基本手技とコツ・1【新連載】

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要旨 膀胱瘤に対するメッシュを使用した腟壁形成術のなかで,本邦において最も広く行われていると思われるProlift型a-TVM手術について概説する。腟壁と膀胱外側の剝離操作および坐骨棘付近にメッシュ脚を通すための穿刺操作が重要であり,手術手技として意識するべきポイントがある。今後は,本邦における経腟メッシュ手術の動向についても注意が必要である。

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要旨 膀胱は骨盤内前方に位置し,後上方に子宮が覆い被さっているため,大きく腹腔内圧の影響を受ける。その下方でこれを支えているのは,骨盤底筋群と恥骨頸部筋膜といわれる骨盤底の表面を覆っている筋膜の一部である。子宮および腟は図1のような靱帯・筋膜・筋板によって支えられ,正常な位置を保っている。これらが分娩で損傷を受けたり,加齢現象で脆弱化したりすると,性器脱(子宮脱,膀胱脱,直腸脱)が生じる。膀胱瘤は膀胱を支持する腟前壁が病的に下降するため,膀胱が前下方へ突出している状態であり(図2),外陰部の違和感のみならず,尿失禁を主訴に受診する患者もいる。手術は腟壁縫縮やメッシュ手術(TVM)などが行われるが,本稿では膀胱瘤修復術の適応,術式の選択,手術のポイントなどにつき概説する。

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要旨 前方下垂である膀胱瘤はしばしば子宮頸部の延長下垂を伴い,過去の経腟分娩時の産道損傷が関連する。そこで,分娩時の児が産道を通過するときの骨盤内結合識に与えるストレスを検討した。その結果,A-TVM選択は妥当であるが,手術治療要点は脱の力の作用点の位置や骨盤軸との関係を自然な状態に近づけること,子宮摘出を含めた組織の切除や損傷を避け,無理に挙上しようとして不自然な張力を与えないことであると論じた。

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 尿路上皮癌に対する化学療法時の24時間クレアチニンクリアランス(24時間Ccr)の必要性に関して検討した。2006年1月から2009年4月まで化学療法を施行した24例,70コースを対象とした。評価法は24時間Ccr,Cockcroft-Gault(C-G)推算式,GFR推算式(eGFR)を用いた。24時間CcrはC-G推算式,eGFRと比しそれぞれ70%,90%で高値だった。C-G≧60ml/分かつeGFR≧60ml/分では95%で24時間Ccr≧60ml/分であった。C-G推算式,eGFRいずれも60ml/分以上の症例は24時間Ccr測定が省略できる可能性が示唆された。

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 われわれは骨盤臓器脱に対し経腟メッシュ手術を行った35例を対象に,術中にリニアプローブを用いた超音波検査を試み,その結果について検討した。リニアプローブを用いた術中超音波検査で,膀胱壁,腟壁,尿道長,直腸壁の厚さを計測し,液性剝離の状態,剝離部位,穿刺部位,挿入後のメッシュを観察した。全症例において対象部位の観察が可能であった。大量出血,他臓器損傷などの術中合併症は1例も認めなかった。リニアプローブによる術中超音波検査は,解剖学的オリエンテーションの理解,手術手技向上に寄与し,優れたティーチングツールに成り得ると考えられた。

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症例は72歳,男性。20年来の無痛性腫脹を右陰囊に自覚していた。当科受診半年前に肺癌を新規指摘され,その際に全身のstaging目的のCT検査を行ったところ,右陰囊内腫瘤を指摘されたため当科受診した。採血上,hCGが若干高値を示しており,精巣腫瘍の疑いを否定しきれないために高位除睾術を施行。病理結果としては右精巣平滑筋腫と診断し,術前のhCG高値に関しては偽陽性であったと判断した。術後16か月現在,再発・転移を認めていない。

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症例は76歳の男性。11年前に腎癌(淡明細胞癌,G1>G2,pT3aN0M0)に対する根治的左腎摘除術を行った。10年後に両側肺転移を認め,インターフェロン療法を開始したが,貧血のため中止していたところ,転移から1年後に右臀部の腫瘤を訴えて再診となった。手拳大,弾性硬の腫瘍性病変を触知し,生検で淡明細胞癌を認めた。腎癌右大臀筋転移と診断し,腫瘍血管塞栓術を行ったが,効果不良のため分子標的薬を試みた。

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症例は67歳,男性。腹痛を主訴に当科を受診した。右尿管癌と診断し,右腎尿管全摘術を行った。組織結果は小細胞癌(pT3N1)であった。術後化学療法を行う予定であったが,術後2か月で再発しており,化学療法,放射線療法を行った。現在術後2年経過し多発転移を認めるが,化学療法を継続し治療中である。

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症例は58歳,女性。発熱と右側腹部痛を主訴に近医受診。CTおよびMRIにて後腹膜腫瘍を疑われ当科紹介。発熱を伴う腎細胞癌と診断し,腎摘出術施行。病理結果は血管筋脂肪腫であり術後解熱した。その後残存腎に直径約1cmの血管筋脂肪腫と思われる腫瘤性病変を認めたが,6年間増大傾向は認めていない。

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42歳男性。右陰囊腫脹を自覚。2年後,両下肢浮腫で受診。血液検査で腎不全を示し,腹部CTで巨大な後腹膜リンパ節腫大と両側水腎症を認めた。透析後に両側腎瘻造設。右高位精巣摘除術を施行。組織型はセミノーマ,AFPは高値にて非セミノーマと診断。BEP3コース中,敗血症を繰り返した。3か月後の全腫瘍マーカーは正常化。1年後CTで残存腫瘤は1cm未満。後腹膜リンパ節郭清は行わず。5年間経過観察中で再発はない。

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腹膜炎の原因として,淋菌による骨盤内炎症性疾患が疑われた3例を経験した。3例とも急激な腹痛を呈し,腹膜刺激症状陽性であり採血上高度炎症反応の上昇,CTで麻痺性イレウス像を認めた。子宮頸管分泌物より淋菌を検出したため淋菌性腹膜炎が疑われた。抗菌薬治療により3例とも軽快した。過去に淋菌性腹膜炎として報告された症例はすべて外科的手術が行われていたが,今回われわれは保存的に治癒することができたため報告する。

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82歳男性,外陰部パジェット病加療中に直腸診にて前立腺に硬結を認め当科受診。PSAは正常範囲内であったが,直腸診にて前立腺癌を疑い,経直腸的前立腺針生検術を施行。病理診断にて前立腺マラコプラキアの診断であった。比較的稀な疾患である。今回外陰部パジェット病に偶然合併した前立腺マラコプラキアを経験したので報告する。

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患者は50歳,男性。膀胱癌T3N0M0に対して膀胱全摘除術およびU字型回腸利用新膀胱造設術施行。外来通院中,右上腹部痛と嘔気・嘔吐を認め,当院に救急搬送された。黒色の嘔吐とCT上free airを認めたため,上部消化管穿孔を疑い,緊急手術を施行したところ新膀胱穿孔であった。新膀胱摘出と両側尿管皮膚瘻造設術を施行した。新膀胱穿孔について若干の文献的考察を加える。

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 患 者 49歳,男性。

 主 訴 右季肋部痛。

 既往歴・家族歴 特記すべきことなし。

 合併症 高血圧(未治療)。

 現病歴 夕食後より,特に誘因なく間欠的な右季肋部痛が出現し,翌朝になっても症状が持続したため,当院を受診した。腹部CTで,内部に出血を伴う右腎腫瘍を認め,当科入院となった。

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 従来,経皮的腎瘻造設術の体位は腹臥位が標準とされている。われわれは最近,修正Valdivia体位でのPNLを行っており1,2),その経験から必ずしも腎瘻は腹臥位でなくても安全に造設できることがわかってきた。現在,当院ではすべての腎瘻造設術において半側臥位を第一選択としており,その手技のコツとこれまでの成績を報告する。

 まず仰臥位で後腋窩線と前腋窩線,中腋窩線をマーキングする(図1a)。腋窩枕のようなゲルパッドを肩甲骨裏と臀部に置いて20度程度の半側臥位とし,11肋骨,12肋骨,腸腰筋と腸骨稜の辺縁をマーキングする(図1b)。レントゲン透視とエコーガイド下に穿刺する。たいてい穿刺部位は後腋窩線の前後になる。穿刺方向は,やや斜め上向きになる(図1c)。

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欧文目次

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■日  時 2014年6月5日(木) 10:00~17:00

■場  所 講義:千里ライフサイエンスビル5F 501~503号室

      実習:大阪大学 微生物病研究所 最先端感染症研究棟2階

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著作権譲渡同意書

編集後記 大家 基嗣
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 今月号から新しい編集委員会の体制で皆様に「臨床泌尿器科」をお届けします。「臨床泌尿器科」の編集委員は3名で,投稿いただいた論文のすべてを全員が査読しております。郡 健二郎教授と藤岡知昭教授が定年により退官されたのを機に編集委員を辞されました。郡先生,藤岡先生,長年にわたりありがとうございました。新しい編集委員として日本医科大学の近藤幸尋教授と福島県立医科大学の小島祥敬教授をお迎えしました。どうぞよろしくお願いします。

 私が編集委員に就任したのは,2007年9月でした。右も左もわからない私を優しく指導していただき,今日に至っております。編集会議でのご指導は多岐にわたりました。魅力あるトピックの取り上げ方,原稿の質をいかに向上させるかなど,編集に必要な多くのことを学ばせていただきました。編集作業を通して,泌尿器科学の範疇を超えて,学問への真摯な態度,社会との接点,医師としての生き方などについても学ばせていただきました。毎月の編集委員会が楽しみなのも,お2人の先生の豊かなお人柄に垣間見えるリーダーとしてのあり方,新鮮なものの考え方など,模範となる多くのことを学べたからです。これからも迷った時は,教わったことを根拠に決断していきます。

基本情報

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臨床泌尿器科
68巻5号 (2014年4月)
電子版ISSN:1882-1332 印刷版ISSN:0385-2393 医学書院

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