臨床泌尿器科 68巻6号 (2014年5月)

特集 腎・尿管結石の治療―こんなときどう対処する?(1)

企画にあたって 郡 健二郎
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 本特集でとりあげたESWL,PNL,TULは1980年代の同じころに開発されたもので,その後尿路結石の外科的治療は大きく進化をとげてきました。わが国に導入された当初は,指導的できる先生が少なく,今の腹腔鏡手術やロボット手術のような指導システムもなく,各先生が見ようみまねで手術手技を学んでいたように思います。当時は今より海外との交流が少なく,マニュアルやガイドラインがなかったためでしょう。

 そのような先人の苦節の上に,ESWLや内視鏡手術(以下,これらの外科的治療法)は尿路結石に対する確固たる治療法になりました。しかし現在では,一部の施設の間では,「これらの外科的治療は専門病院や一部の専門家に任せておけばよいのだ」との風潮があります。確かに,このような考え方は医療が専門化し先端化するにつれて必要なときもありますが,尿路結石は泌尿器科ではもっともポピュラーな疾患です。男性では約7%の人が一生に一度は結石になるまでに増加の一途をたどり,5年再発率は約50%にもなっている時代です。これらの外科的治療をマスターしないで病院における泌尿器科診療はできなくなっています。

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Point

●原則として,抗血栓療法中の患者には,ESWLを第一選択にすべきでなく,経尿道的尿管砕石術(TUL)が薦められる。

●ESWLを選択せざるを得ない場合は,抗血栓薬の厳格な事前調整が必要である。

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Point

●長期臥床患者では,尿路感染を高率に合併し,尿路結石も多く存在する。

●疼痛や血尿以外にも非特異的な症状を有することがある。

●治療はESWLが中心となるが,腎瘻造設などの補助治療も考慮する必要がある。

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Point

●血腫の予防には,十分な量のゼリーと最低限の衝撃波,空気の除去が大切である。

●疼痛が強い場合には血腫の可能性を考慮する必要があると思われる。

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Point

●PM留置患者に対して,ESWLは安全に施行できる可能性が高いと思われるが,循環器医やPM技術者の同席のもと,心電図モニターを行い,緊急時の対応ができるように準備しておくことが大事である。

Ⅰ.体外衝撃波砕石術(ESWL) ≪術中≫

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Point

●疼痛がある場合,破砕治療をいったん中断して,原因を探る。

●不十分な疼痛管理は,破砕成績を下げるだけでなく,治療の中止や合併症の発生を招く。

●超音波照準は,合併症の早期発見に有効である。

Ⅰ.体外衝撃波砕石術(ESWL) ≪術後≫

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Point

●「ESWLは手術である」という認識のもとに,術前評価および術中・術後管理を行う。

●正しい治療法,十分な鎮痛によって予防を行うことができる。

●原則は安静治療である。

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Point

●大きな腎結石に対してESWLを施行するときは,合併症にSS(stone street)があることを念頭に置き,ESWL前の対応やESWL後のフォローに注意する。

●SSに発熱が伴った場合,全身状態や検査所見から,PNSまたは尿管ステントが必要か判断する。

●SSに対する治療として,TULもESWLも安全に施行可能であり,適切な時期に行うようにする。

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Point

●ステントが抜けないときは,強引に引き抜かない。

●ステントへの付着結石が少量の場合,ESWLを行うと抜去可能になることが多い。

●ステントへの付着結石が大きい場合,他の内視鏡的治療を考慮する。

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Point

●下腎杯結石に対しては治療プランが大事である。穿刺部位,使用内視鏡を検討する。

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Point

●オクルージョンカテーテルによる閉塞の確認と,超音波,透視下穿刺の習得が重要である。

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Point

●内視鏡下や透視下のガイドワイヤー挿入を試みる。予防が一番大事である。

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Point

●単一のトラクトから到達できない腎杯に結石が残った場合,複数のトラクト,TULを併用することで治療成績が向上する。

●トラクトの挿入部位を術前にシミュレーションすることが,治療成功の鍵となる。

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Point

●腎瘻刺入部からの出血に対しては,まずは用手的な圧迫止血を試みる。

●コントロール不良な出血の場合は,早急に選択的腎動脈塞栓術を考慮する。

●PNLを安全に行うには,腎杯乳頭部に腎瘻を確実に作成する技術が必要である。

知っていると役立つ泌尿器病理・26

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症例:60代・男性

 5年前に表在性の膀胱癌に対し経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)が施行された。その後再発を繰り返し,生検およびTUR-BTが複数回施行された。今回も経過観察中に多発する再発病変を指摘され,その中で膀胱左側壁の2mm大の乳頭状病変から生検が行われた。図1~3はその代表的な組織像である。

 1.鑑別診断を述べよ。

 2.病理診断は何か。

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要旨 幹細胞治療の分野では,体細胞に4種の遺伝子を挿入し万能性分化を有するiPS細胞が注目されているが,その臨床的応用にはまだ克服すべき課題が多い。一方,体性幹細胞の1つとして多能性幹細胞の骨髄幹細胞は半世紀前から移植の形で臨床的に応用されており,すでに多くの臨床実績があり,実用化という点では優位性がある。また,臨床幹細胞治療において泌尿器科領域は非常にアプローチしやすい分野の1つに挙げられている。本稿では,脂肪組織由来幹細胞(ASC)を用いたTR(translational research)研究において,保険収載を目標としたわれわれの取り組みについて概説した。

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 疫学研究の方法を解説した,「楽しい研究」シリーズ第一弾『基礎から学ぶ楽しい疫学』は,「黄色い本」として辞書代わりに活用している人も多い。第二弾として今回出版された「青い本」では,研究の発表方法を一から学べるようになっており,やはり長く使い続けることになるであろう。疫学や公衆衛生学をリードしてきた研究者であり,医学生や保健医療者の研究指導をしてきた教育者でもある著者が,長年蓄積してきた学会発表や論文執筆の方法を惜しげもなく伝授してくれている。さらに,学術誌の編集委員長を務めてきた経験から,査読者の視点や意識まで解説してくれている。2年間に及ぶ連載をまとめただけあって,ノウハウが詰まった濃い一冊である。

 この本はコメディカルや大学院生など研究の初学者向けに執筆した,と著者は書いている。発表する学会の選び方や抄録の書き方,口演での話し方からポスター用紙の種類まで,至れり尽くせりで効果的な学会発表のノウハウが示されており,確かに初学者が「基礎から」学べるようになっている。しかしこの本は,キャリアのある臨床家や研究者が,よりインパクトのある発表をしたり,より採択されやすい論文を執筆したりするためにも,十分に適している。「基礎から,かなり高度なレベルまで」学べるようになっているのである。

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 この度,『図解 解剖学事典 第3版』が実に30年振りに全面改訂されて出版された。もう改訂はないのではと漠然と思っていた全面改訂が,わが国の解剖学の泰斗である山田英智先生,石川春律先生,廣澤一成先生,および坂井建雄先生の手によりさらにグレード・アップした,しかも美しい形で改訂されたことにまずは御礼を申し上げる。

 本書に掲載されている解剖学用語は,世界標準である国際解剖学用語集“Terminologia Anatomica”と日本解剖学会の『解剖学用語 改訂13版』に準拠し,日本語,英語,およびラテン語で記載されている。本書の基本構成は見開きページの左に用語を,右に対応するイラストを載せて両者を視覚的に結び付ける旧版の優れたスタイルを完全に踏襲しており,解剖学の効果的な学習を可能にしている。本書は旧版より70数ページ増加しているが,それは主に解剖学総論と脳の部分であり,前者のページ数増加は解剖学を初めて学ぶ学生にとって大いに役立つであろう。脳の部分のページ数増加は主として脳断面での半細胞構築学的組織像と神経路の記載増加によるものであり,これは複雑な脳構造の局所解剖学的および機能解剖学的理解をより容易にするであろう。動物実験では存在が明らかであるが,人ではその存在が未確認である神経路は,そのこともきちんと記載されている。

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69歳,男性。左陰囊内腫瘤と違和感を主訴に受診,精巣上体腫瘤摘出術を施行した。術中迅速病理診断で腎淡明細胞癌の転移が疑われたため,高位除精術を追加した。術後の腹部CT検査では腎腫瘍を認めず,臨床経過,病理組織学的所見,画像所見を総合し,精巣上体乳頭状囊胞腺腫と診断した。また,フォン・ヒッペル・リンドウ病に特徴的な全身性の腫瘍性病変も認めず,散発症例と診断した。術後1年経過し,再発を認めていない。

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欧文目次

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日 時:平成26年7月28日(月)10:00~16:10

場 所:千里ライフサイエンスセンタービル5Fライフホール

次号予告

バックナンバーのご案内

読者アンケートのお願い

投稿規定

著作権譲渡同意書

編集後記 近藤 幸尋
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 小職が泌尿器科医となった約30年前は,泌尿器科医が外国雑誌を毎月個人購読することもなく,『日本泌尿器科学会雑誌』および『臨床泌尿器科』は先輩に毎月泌尿器科医が購読すべき雑誌として紹介された雑誌でした。いつしか時は流れ学会も多くなり,それに伴って学会誌も増えており,海外の雑誌もWEB上で多くを読むことができるようになりました。それでも現在の若い先生においては『臨床泌尿器科』は有用な情報源であることには変わりありませんが,残念ながら必需品ではなくなってきているようです。

 本年4月より,郡 健二郎先生および藤岡知昭先生の後任として私と小島祥敬先生が編集委員をさせていただくこととなりました。両先生のような重みはありませんが,唯一の違いは小島先生をはじめとした若さにあると思います。より若い先生の心をつかむ雑誌にしていきたいと考えております。心をつかむとは若い先生の必需品であるスマートフォンのように常に傍に置いて確認したい雑誌を意味します。高校野球などの世界では,古豪復活という言葉がありますが,この『臨床泌尿器科』において偉大な両監督を引き継いでの復活の道は厳しいとは思いますが,若輩ゆえにできるチャレンジをして,『臨床泌尿器科』が若い医師のスマートフォンの脇に置いていただけるように努力させていただきます。

基本情報

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臨床泌尿器科
68巻6号 (2014年5月)
電子版ISSN:1882-1332 印刷版ISSN:0385-2393 医学書院

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