臨床泌尿器科 67巻6号 (2013年5月)

知っていると役立つ泌尿器病理・14

症例:20代・男性 浦野 誠 , 黒田 誠
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症例:20代・男性

 運動時の腹痛を主訴に受診。画像診断にて左腎下極に腎実質から突出する充実性腫瘍を認めた。他臓器に転移を疑う所見は明らかでなかった。左腎全摘術が施行された。図1は左腎腫瘍の肉眼像(割面)で,図2,3はその代表的な組織像である。

 1.肉眼像における鑑別診断を述べよ。

 2.病理診断は何か。

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要旨 ヒトは青壮年期には就寝中に排尿のために起きることはほとんどない。これは睡眠中に腎での尿産生量が減少するとともに,膀胱での蓄尿量が増加するためである。逆に小児期の夜尿症や高齢者の夜間頻尿では夜間の尿産生量の増加や機能的膀胱容量の低下が認められる。時計遺伝子が形成する概日時計(circadian clock)の研究の進歩とともに,生体の日内変動現象の多くが時計遺伝子による分子的現象として解明されており,腎・膀胱では尿産生や機能的膀胱容量の日内変動に寄与している。本稿ではヒトおよび齧歯類の排尿日内リズムについて最近の分子時間生物学の進歩と関係付けながら臨床的および行動生理学的知見と展望を概説する。

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 この本は,聖路加国際病院出身の50名の医師たちが書いた本ですが,誰のために書かれたのでしょうか? さっと全体に目を通せば,これからキャリアを築いていく研修医・専門研修医や医学生が読むのに最適な本であることがわかります。すなわち,若手医師の最大の関心事である進路の選択やキャリア形成を経験した先輩の文章が掲載されていて,ロールモデルや後輩へのアドバイスを見出すことができるからです。

 さらに読み進めると,聖路加国際病院でさらなる研修を続けた医師,あえて国内の病院へ異動して研鑽を続けた医師,リサーチのための留学や海外での臨床研修やフェローシップの機会を得た医師,あるいは他の病院で研修後(海外も含めて)スタッフとして迎えられた医師など,その多様さに驚くと同時に,「みんなちがってみんないい」(金子みすゞの詩より)というフレーズを思い起こします。

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 一昔前,がんサバイバーというと「治療後5年を経過した稀な幸運な人」を意味し,最初の5年間は医師も患者ももっぱら疾患コントロールに傾注し,心の問題は後回しという風潮ではなかったかと思う。現在では,生存率の大幅な改善とともに,米国のサバイバーは1,200万人に達した。「がんと診断されたその瞬間に人はがんサバイバーとなり,一生サバイバーであり続ける(全米がんサバイバーシップ連合,1984)」という定義が米国国立がん研究所(NCI)に採用されて以降,プロセスを意味するサバイバーシップの概念とともに広がり,日本ではがん対策基本法(2007)以降浸透してきたといえる。

 本書は,あらゆる医療者のための,がん診断時からのサバイバーシップ指南書であり,よくある疑問や懸念に正面から向き合っている。特筆すべき点は,心の問題や回復過程をロードマップとして目に浮かぶように本書の前半分を割いて詳述していることで,疫学的問題,医学的問題の後半へと続く。編集者のKenneth D. Miller所長は,現在,Dana-Farberがん研究所Lance Armstrongサバイバーシッププログラムの所長を務めているが,腫瘍内科医であり,がんサバイバーの夫でもある。彼は,サバイバーシップ研究のエビデンスが蓄積したところで,編集して本書を誕生させた。

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 病気を治そうとして,不幸にも医療事故が起こった場合,医師は診療結果に失望し,同時に患者さんや家族との信頼関係が損なわれると,クレームの嵐に晒されることになる。一流の名医といわれる医師でも,人間である限り,医療事故は免れない。そうならないような備えと起こったときにどうするかが重要であり,本書はそのための手がかりを与えてくれる。

 まず,本書の「はじめに」を読むと著者が本書を著した意図がよくわかる。医学や医療の問題に深く切り込み,医師および患者の心理学,救急診断学に必要な医学的知識,そして救急診療のヒントなどが読みやすく書かれており,このような本は今までなかったように思う。著者のこれまでの経験に基づく優れた洞察力による研究書でもある。医師側および患者側の両者にとって不幸な事例に対し,何が問題であったのかを丁寧に解説し,同じことが起きないようにとの温かい配慮がなされている。これは著者自身の医師としての長い経験と多くの医療事故の分析に裏打ちされていることによるものと思う。日常診療において研修医だけでなく,経験を積んだ医師も気をつけなければならないことが書かれている。そして,時間外当直での診療,あるいは救急患者の診療には恐ろしい落とし穴がいくつもあるように感じる方も多いと思う。たしかに,思い込みや忙しさからのミスは起こりうるので,いつも念頭に置く必要がある。

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 昨今,医療訴訟や紛争のニュースを目にしない日はない。しかし,多くの医療従事者はそれらを人ごとだと思っているのではないか。実際,「法学」と聞くと,たちどころに拒否反応を起こす医療従事者も少なくないだろう。われわれは,ジョージ・クルーニー扮するTVドラマ「ER」の小児科医ダグ・ロスのように,「目の前の患者を救うためには法律など知ったことではない」というアウトロー的な行動に喝采を送る。医療訴訟,そして,弁護士と聞くと,常に前例や判例を持ち出す理屈屋,医療過誤でもうける悪徳野郎といったイメージが浮かぶ。医師兼弁護士などは資格試験オタクだ。しかし,この『医療法学入門』は,法学に対するそうした浅薄な先入観をいとも簡単に裏切ってくれる。

 医師であり,弁護士でもある著者らの医療従事者へのまなざしは,寄り添うように温かい。本書は,よくある判例の羅列や味気ない法律の条文の解説ではない。各章が明快なメッセージで統一されて書かれているので,上質のエッセイを読むかのごとくページが進む。序文にある著者らの決意表明が心地よい。増え続ける司法の介入に対して,「何よりも問題なのは,医学・医療の知識もなく,医療現場に対してなんらの責任もとらない刑法学者等が空理空論で“正義”を振りかざしたこと」であり,「医療を扱う法学は実学でなければ」ならず,「医療を行う医師,医療を受ける患者という生身の人間から離れず,多数の制限下において現実に行われている医療現場から規範を形成する『医療法学』こそが必要」だと説く。

手術手技 泌尿器腹腔鏡手術―もう一歩,ステップアップするために・4

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要旨 本邦で腹腔鏡下根治的前立腺摘除術(LRP:laparoscopic radical prostatectomy)が導入されてから約15年が経過するが,その間,本術式はさまざまな改良が加えられ,限局性前立腺癌に対する低侵襲手術として一定の評価を確立しつつある。本稿では,われわれが導入当初より施行してきた経腹膜的アプローチによるLRPの要点を,ステップごとに解説する。

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要旨 本邦において前立腺癌に対する腹腔鏡下前立腺全摘除術を施行する際には,施設認定を得る必要がある。認定を目指すにあたり,安全に手術を施行することが必須である。一方,本術式は上部尿路の腹腔鏡下手術と違い,前立腺の形状,骨盤の形態に個人差があり,症例により難易度に大きな差がある。本稿では安全に手術を施行するためのポイント,トラブルシューティングの方法に注目し,概説する。

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要旨 現在,腹腔鏡下根治的前立腺摘除術については,ロボット手術が急速な広がりをみせている。しかし日本国内においては,多くの施設で腹腔鏡下手術が“標準”術式と考えられる。当教室では腹腔鏡下根治的前立腺摘除術(pure laparoscopic radical prostatectomy:LRP)をおよそ600症例に行い,そのままロボット手術にsmoothに移行できた。当教室が行ってきたLRPは後方アプローチであり,大きな前立腺やロボット手術にもそのまま応用できる。今回LRPにおける注意点を“コツ”として述べた。

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 当院で低用量ドセタキセル療法を施行した去勢抵抗性前立腺癌27例を対象とし,治療成績について検討を行った。ドセタキセルは25mg/m2をDay 1,8に点滴静注し,3週ごとに投与を行った。患者背景は年齢54~84(中央値69)歳,治療開始時PSA 1.005~1,710(中央値28.1)ng/ml,治療回数0~49(中央値10)回であった。21例(84%)においてPSAの低下を認め,50%以上のPSA低下は13例(52%)で認めた。PFSの中央値は8.7か月で,OSの中央値は27.6か月であった。Grade 3以上の骨髄抑制は1例(4%)のみであった。低用量ドセタキセル療法は,重篤な有害事象をきたすことは少なく,去勢抵抗性前立腺癌に対して有効な治療法であると考えられた。

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 腹圧性尿失禁に対するtension-free vaginal tape(TVT)手術において,術中超音波検査を試みた。2012年2~11月の間にTVT手術を行った22例を対象とした。経会陰,経腟走査により術中超音波検査を行い,尿道の解剖学的評価,恥骨後面の液性剝離の状態および挿入されたTVTテープを観察した。超音波検査において,恥骨,恥骨後面の液性剝離,膀胱を観察可能であった。これらを確認後に行った穿刺において,膀胱損傷は認めなかった。挿入後のTVTテープの位置,状態も超音波で観察可能であった。術中超音波検査を行うことにより,TVT手術の安全性かつ有効性に寄与することが示唆された。

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76歳,男性。前立腺癌に対して内分泌療法併用放射線療法を施行されていたが,下肢の疼痛と腫脹を主訴に受診した。CTで下大静脈内に血栓を認めて深部静脈血栓症が疑われ,下大静脈フィルターの留置および抗凝固療法が開始された。一時的に血栓は縮小したが,3か月後のCTで血栓は増大した。MRIで再評価したところ,腫瘍塞栓の診断となった。その後,PSAの上昇とともに腫瘍塞栓は急激に増大し,数か月後に死亡した。

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55歳,男性。検診エコーにて右副腎腫瘍を指摘され受診。CTにて肝と癒着した5.5cm大の副腎腫瘍あり。肺にも多数の小結節を認めた。副腎腫瘍の鑑別を行い,MRIや血清抗体検査などから副腎エキノコックス症と診断し,手術を施行した。世界において,副腎のエキノコックス症の報告はこれまで2例のみである。肝からの浸潤を伴った右副腎腫瘍の場合,居住地や画像診断などから,エキノコックス感染症を鑑別に挙げる必要がある。

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 患 者 32歳,既婚男性,1児あり。

 主 訴 無症候性肉眼的血尿。

 家族歴・既往歴 特記すべきことなし。STDの既往なし。

 現病歴 2011年9月に上記症状を認めたため,当科を受診した。

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 患 者 22歳,男性。

 主 訴 左上腹部痛。

 既往歴 特記すべき事項なし。

 現病歴 2012年10月,深夜に原動機付き自転車を2人乗りで走行中,カーブを曲がりきれずに衝突して転倒した。衝突時の速度は不明であった。救急隊到着時,意識は清明であったが,左上腹部痛の訴えおよび冷汗と橈骨動脈触知微弱あり,交通外傷と出血性ショックの疑いで当院に救急搬送された。

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 結石の治療後挿入したdouble J(DJ)カテーテルに結石が付着して抜去困難に陥ることがある。無理に抜去しようとすると尿管損傷を引き起こす。体外衝撃波で結石付着部位を破砕後,抜去を試みる方法もあるが,文献的にも成功率は低い1)。当院では,尿管鏡でHo-YAGレーザーで結石を破砕する方法(TUL)を第一選択にしている2)

 一般に,DJカテーテルの脇から尿管鏡を挿入するのは困難であるという印象がある。しかし,fTULでアクセスシースが入らない場合に,DJカテーテルを挿入して数週間後に二期的に行うと容易にアクセスシースを挿入することが可能になる。このように,DJカテーテルには尿管のブジー効果がある。しかも,結石が付着しているのは,たいていDJカテーテルのカール部分であり(図1),尿管口は意外に浮腫もない。

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 腎盂尿管癌に対する標準的術式は,腎尿管全摘除術である。腰部斜切開と下腹部正中切開を組み合わせ,腎尿管を一塊として摘出する方法が標準とされるが,腎盂癌や上部尿管癌の場合,尿管引き抜き法が有効となる。この術式は,出血量の減少,手術時間の短縮,創部の縮小による術後回復力の向上などの点から,高齢の患者やhigh riskの患者には有効とされる。しかし,完全重複尿管の場合,引き抜きが適応外との意見や,尿管がうまく引き抜けるかという問題点が主治医を躊躇させることとなる。

 一方,最近になり,完全重複尿管の症例に引き抜き術を行ったという報告もみられ1),われわれも積極的に施行しており,次のような工夫で成功すると考える。

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 マニセプスTMは,深部の狭い術野でも容易にワンタッチで運針することを可能にした深部持針器である1,2)。すなわち,針の貫通と糸の回収が1回の操作で完了するという特徴がある。具体的には,片方のジョーの先端持針部に糸付き直針を装着し,縫合する部位を挟むように閉じると,直針がもう一方のジョーの先端受針部に挟まれ直針が受け渡されるという仕組みである。泌尿器科では,腎,膀胱,前立腺などの手術で使用されてきている。しかし,従来型マニセプスTM(以下,従来型)には,使用上,いくつかの問題点があったため,改良型マニセプスTM(以下,改良型)を開発した。以下に,従来型(図1a)での問題点(下記①~④)とその改良型(図1b)の特徴(下記①~③)を列記する。

病院めぐり

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 100万ドルの夜景,異国情緒あふれる港町,風情あふれる路面電車,歴史を感じる五稜郭,そしてなにより海の幸。北海道の最南端,年間430万人が観光に訪れる函館市。そんな函館市街地の正に「中央」,五稜郭公園近くの市電電停前に当院は位置しています。

 当院の設立は昭和5(1930)年,社会福祉法人函館厚生院が経営する病院として誕生。現在病床数は527床,診療科は22科,常勤医師数90名(うち歯科医師3名)であり,道南の歴史ある中核病院として機能しています。平成20(2008)年2月に道南圏の総合周産期母子医療センターとして指定を受け,同年4月にはICUセンターが開設されています。診療内容の進歩・発展に反して,病院の建物は,老朽化すると同時に,増改築を繰り返してきた結果,複雑な構造の病院となってしまいました。

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 慶應義塾大学泌尿器科学教室は,1926年に国内において3番目の泌尿器科学講座として開設され,本年で87周年を迎えました。現在,6代目の教室主任である大家基嗣教授のもと,計24名の教室員で診療・研究・教育に携わっています。また,毎年3~8名の新入局医員があり,ほぼ例年女性泌尿器科医も誕生しています。

 年間外来患者総数約48,600人,入院患者数約16,800人,総手術件数約900件〔平成22(2010)年度〕の診療にあたっています。腎臓がん,尿路上皮がん,前立腺がん,精巣腫瘍などの悪性腫瘍はもとより,腎不全(人工透析),腎移植,副腎腫瘍,尿路感染症,尿路結石症,神経因性膀胱,前立腺肥大症,尿失禁,勃起不全,不妊症など多岐にわたる良性疾患の診療も行っています。2009年からは小児泌尿器チームを発足させ,先天性水腎症や尿道下裂からウイルムス腫瘍まで幅広い小児疾患に関しても対応が可能となり,現在,泌尿器科学のすべての領域において各専門医が揃い,質の高い診療が提供できる体制となっています。

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欧文目次

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日 時:2013年7月4日(木)10:00~17:00

場 所:千里ライフサイエンスセンタービル5Fライフホール

次号予告

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投稿規定

著作権譲渡同意書

編集後記 大家 基嗣
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 ユーミンこと松任谷由実さんがデビュー40周年を迎えられたそうです。最近はあまり新曲を披露されていないように見受けるのですが,1970年代から1980年代にかけて私は大好きで,アルバムが出るたびに購入していました。感受性豊かな若い女性の心を歌った歌詞には男性でも共感できるところがあり,また,曲を聞きながら,おしゃれでポップな生き方を味わっていました。いい意味でも悪い意味でもユーミンの歌詞は女性の感性を知るのにたいへん参考になりました。若き日の思い出が曲とともによみがえります。

 そのユーミンに歌碑があることをご存知でしょうか? 私が知る歌碑は,JR青梅線西立川駅の北口にあります。くしくも,2月号の編集後記で取り上げた「多摩」にある駅です。改札は昭和記念公園に通じています。昭和記念公園は都内では有名なお花見スポットです。桜の季節に家内と弁当を持って花見に出かけました。駅前でコンビニに寄ってビールでも買おうとしていたところ,コンビニどころかまったく店がありません。唖然としてキョロキョロし,偶然みつけました。歌碑は「雨のステイション」です。1975年に発表された3枚目のアルバム「COBALT HOUR」に収録されています。「新しい誰かのためにわたしなど思い出さないで」,「6月は蒼く煙ってなにもかもにじませている」,「会える気がしていくつ人影見送っただろう」という歌詞から,別れた恋人を忘れることができず,かといって過去に戻ることもできず,ただ駅でたたずむしかないせつない気持ちが伝わってきます。歌碑に添えられた説明によると,10代のユーミンはディスコで夜通し踊って,始発の電車を待って帰宅し,なにもなかったように登校していたそうです。ディスコは立川基地の中にあり,基地の跡地がこの昭和記念公園です。1970年代の若者の文化は基地の中から発信されていました。1980年代の初頭にタワーレコードの1号店が渋谷に誕生するまで,輸入レコードは基地内の売店で手に入るものでした。「雨のステイション」の歌碑は,今はなき立川基地へのレクイエムのようです。

基本情報

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臨床泌尿器科
67巻6号 (2013年5月)
電子版ISSN:1882-1332 印刷版ISSN:0385-2393 医学書院

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