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ユーミンこと松任谷由実さんがデビュー40周年を迎えられたそうです。最近はあまり新曲を披露されていないように見受けるのですが,1970年代から1980年代にかけて私は大好きで,アルバムが出るたびに購入していました。感受性豊かな若い女性の心を歌った歌詞には男性でも共感できるところがあり,また,曲を聞きながら,おしゃれでポップな生き方を味わっていました。いい意味でも悪い意味でもユーミンの歌詞は女性の感性を知るのにたいへん参考になりました。若き日の思い出が曲とともによみがえります。
そのユーミンに歌碑があることをご存知でしょうか? 私が知る歌碑は,JR青梅線西立川駅の北口にあります。くしくも,2月号の編集後記で取り上げた「多摩」にある駅です。改札は昭和記念公園に通じています。昭和記念公園は都内では有名なお花見スポットです。桜の季節に家内と弁当を持って花見に出かけました。駅前でコンビニに寄ってビールでも買おうとしていたところ,コンビニどころかまったく店がありません。唖然としてキョロキョロし,偶然みつけました。歌碑は「雨のステイション」です。1975年に発表された3枚目のアルバム「COBALT HOUR」に収録されています。「新しい誰かのためにわたしなど思い出さないで」,「6月は蒼く煙ってなにもかもにじませている」,「会える気がしていくつ人影見送っただろう」という歌詞から,別れた恋人を忘れることができず,かといって過去に戻ることもできず,ただ駅でたたずむしかないせつない気持ちが伝わってきます。歌碑に添えられた説明によると,10代のユーミンはディスコで夜通し踊って,始発の電車を待って帰宅し,なにもなかったように登校していたそうです。ディスコは立川基地の中にあり,基地の跡地がこの昭和記念公園です。1970年代の若者の文化は基地の中から発信されていました。1980年代の初頭にタワーレコードの1号店が渋谷に誕生するまで,輸入レコードは基地内の売店で手に入るものでした。「雨のステイション」の歌碑は,今はなき立川基地へのレクイエムのようです。
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