病院 73巻12号 (2014年12月)

特集 検証 平成26年度診療報酬改定

2025年モデルを反映しているのか

巻頭言 神野 正博
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 平成26(2014)年度診療報酬改定を総括すると,その実務にあたった宇都宮啓・前厚生労働省保険局医療課長が巻頭論文冒頭で述べているように,「今回の診療報酬改定においては,社会保障制度改革国民会議の報告を踏まえ,平成37(2025)年のあるべき姿を目指して一体改革を進めることが最大のテーマだった.一体改革へ向けて,介護報酬との同時改定を行った前回の平成24年度改定が第一歩目で,今回は第二歩目と位置づけられる」に尽きるかもしれない.そして,病院に関わる改革のエンジンとして,7対1入院基本料に係る要件の見直し,地域包括ケア病床の新設,各病期における在宅復帰指標の強化,在宅療養後方支援病院の新設などがあげられ,いずれの項目もこれからの病院のあり方を模索する上で影響の大きなものとなった.

 本特集では,この診療報酬の改定の検証とともに,診療報酬改定と両輪となる医療制度改革を担う地域医療構想,新たな財政支援制度(基金)などの動きについて,厚生労働省の考え方を紹介した.さらに,これらに対して,論理的なクリティカル・シンキングの役割を池上直己教授に担っていただいた.

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 平成26(2014)年度の診療報酬改定においては,社会保障制度改革国民会議の報告を踏まえ,平成37(2025)年のあるべき姿を目指して一体改革を進めることが最大のテーマだった.一体改革へ向けて,介護報酬との同時改定を行った前回の平成24(2012)年改定が第一歩目で,今回は第二歩目と位置づけられる.

 筆者は平成20(2008)年には企画官として診療報酬改定に,平成24年には老人保健課長として介護報酬改定に携わったが,それらを含めてこれまでの医療や介護等の経験から気付いた発想や思いを,今回の診療報酬改定で取り入れた.

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 急性期から回復期,慢性期,在宅医療まで,患者が状態に合った適切な医療を受けることができるよう,医療機関の機能分化・強化と連携を図り,病床の役割を明確化した上で機能に応じて充実することにより,「地域完結型」の医療提供を目指す.

 この方向性は,平成26(2014)年度診療報酬改定での「基本方針」1)の重点課題とされ,いくつかの具体的な改定項目として実現された.もとより,この基本的考え方は前回平成24(2012)年度の診療報酬・介護報酬の同時改定,さらにはここ数年にわたる社会保障・税一体改革の議論においても一貫しており,今日の医療・介護政策を通じて目指している「地域ごとに患者・サービス利用者の立場に立った地域包括ケアシステムを構築する」ことでもある.

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 新たな財政支援制度(基金)は,平成25(2013)年8月末の概算要求時点では,地域医療再生基金を延長する形で予算要求を行ったものであるが,同年12月20日に,公費ベースで904億円(国2/3,都道府県1/3負担)を計上し,平成26(2014)年度政府予算案の中で,財政的な措置としてまずは公表された.そして同日には,診療報酬改定率も公表された.

 その後,12月27日には社会保障審議会医療部会から「医療法等改正に関する意見」をいただき,その中で新たな財政支援の仕組みの創設という形で法的な措置を求められ,2014年2月12日に「医療介護総合確保推進法」の一環として法案を提出し,6月18日に国会で成立,25日に公布されることとなった.さらに,本年8月末の平成27(2015)年度予算の概算要求以来,「地域医療介護総合確保基金」(以下,単に基金とする)と呼称することとした.

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 医療提供体制の改革は,社会保障制度改革国民会議の報告書の2025年モデルに基づいており,病気と共存しながらQOLを維持向上させるためには,医療を病院完結型から地域完結型に改める必要があるという認識に基づいている.

 病院については病床数が多く,人員配置が少ないので,選択と集中によって病床の機能を分化させ,急性期医療のスリム化と同時に人的・物的資源を集中投入することによって在宅復帰の促進,入院期間の短縮,病院外での看取りの増加を目指している.同報告書を受けて,「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」,いわゆる医療介護確保推進法が成立し,改革が進められようとしている.

DPC制度改定の影響と今後 小山 信彌
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 平成26年の診療報酬改定は,未曾有のマイナス改定であったといっても過言ではない.消費税分を薬価引き下げで得られた“浄財”を当てたという,ルール違反も甚だしい改定であった.また,地域包括ケア病棟(床)の創設により,超急性期病院から療養病床に至るまで,在宅復帰が求められ,全く新たな医療制度が始まった感がある.しかし,平成22(2010)年,平成24(2012)年改定を見るとこれらの様々な突然とも思える改定のメッセージが多く含まれている.つまり,これからの診療報酬改定の方向性は,間違いなく2025年問題に向けて進んでいる.そのような中で,DPC/PDPSは,どのような改定を行っているのか,また,そこから見えてくる今後の方向性について述べる.

2025年モデルを反映しているのか 【病院種別影響】

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 平成26年度診療報酬改定では,医療については消費税増税の補塡分を除き,本体0.1%増,薬価改定等マイナス1.36%で,ネットでマイナス1.26%という結果であったが,改定率から見えない影響として,施設基準,算定要件の変更によるマイナス影響が大きいものと思われる.特に,重症度,医療・看護必要度の見直し等により,7対1入院基本料の維持が難しいケースや平均在院日数が短くなり病床利用率が低くなった病院では,医業収入減を余儀なくされる状況となり,厳しい経営が続いている.また,消費税増税の負担は材料費や委託契約といった費用で,思った以上に病院経営に大きな影響を及ぼしている.日本病院会が行った「平成26年度診療報酬等に関する定期調査」(以下,本調査)の結果を見ても,改定後の診療報酬が微増に対して,材料費等の費用の伸びがそれを上回るという構造が見えてきた.

 日本病院会では,病院経営の質推進委員会に診療報酬改定影響度調査ワーキンググループを昨年より立ち上げ,従来,改定年度に実施してきた調査を昨年より毎年に改めて実施している.本稿では,会員病院にアンケートをお願いし,寄せられたデータを分析検討した中間集計の結果1)について報告する.

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 全日本病院協会では毎年「病院経営調査」を実施している.平成26(2014)年度の改定率は,診療報酬本体で+0.73%(+0.63%消費税対応分),医科で+0.82%(+0.71%消費税対応分),全体改定率では+0.1%(+1.36%消費税対応分)の改定率となり,消費税対応分を除くと結局のところ1.26%のマイナス改定となった.過去の改定率を振り返ってみると,平成12(2000)年度に全体で0.2%とかろうじてプラス改定であったが,その後,平成14(2002)年度から平成20(2008)年度までは4回連続してマイナス改定となった.特に平成18(2006)年度の改定は,診療報酬本体についても-1.36%,医科で-1.5%,全体の改定率では-3.16%となる大きな改定であり,この改定により様々なことが現在,さらには将来に向けた流れに大きな影響をもたらしたものと考えられる.その後は,現状維持とも言える若干のプラス改定が続いた.改定年は経営が悪化し翌年には会員病院の経営努力により辛うじて改善する傾向にあったが,平成26年度の診療報酬改定が会員病院にどのような影響を与えたかを,これまでの診療報酬改定の内容などを踏まえながら考察する.

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■はじめに

 回復期リハビリテーション病棟(以下,回リハ病棟)は「脳血管疾患または大腿骨頸部骨折などの患者に対して,リハビリテーション(リハ)を集中的に行って,ADLの向上による寝たきりの防止と家庭復帰を実現する」という明確な目的を持つ.介護保険法が施行された2000年に創設され,2014年7月25日時点で,1,250病院,1,568病棟,69,372床,54床/人口10万に達した(回リハ病棟協会調べ).回リハ病棟の占める割合は8,506病院中14.7%,1,571,461病床中4.4%となった(2014年6月厚生労働省医療施設動態調査).病棟の分布には地域差があり,最も少ない茨城県で30床/10万,最も多い高知県で140床/10万と4.7倍,2次医療圏内でもばらつきが大きい.2014年6月に「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」が成立し,病床機能報告制度が創設された.同年10月には各病院は病棟単位で高度急性期・急性期・回復期・慢性期の中から病床機能の現状と今後の方向性を都道府県に報告,それに基づいて都道府県は地域医療構想を策定(2015年4月)し,医療計画に反映させることになる.団塊の世代(昭和22〜24年生まれ)が75歳以上に達する2025年に向かって,1985年の第一次医療法改正以降の病床の量的制御から機能制御という新たなフェーズへの移行に,回リハ病棟も適応しながら役割を果たすことが求められる.

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 平成26(2014)年度診療報酬改定においては,「充実が求められる分野を適切に評価していく視点」として,精神疾患に対する医療の推進,認知症への対策の推進が盛り込まれたことなどから,精神科に配慮された改定が期待された.精神科急性期医師配置加算,精神保健福祉士配置加算などの項目が新設され,加えて精神療養病棟の医師要件の緩和が認められるなど,一見,精神科病院にとって有利な改定のように見える.しかしながら,実際には,基準や要件の厳しさなどからなかなか届出に至らないという声が多く聞かれる.

 そこで,日本精神科病院協会(日精協)医療経済委員会では,今回の改定について,届出や取り組みの実態に関して会員病院へアンケート調査を行うことで,現時点での影響度を推し量ることとした.

慢性期医療への影響 武久 洋三
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■医療体制を覆すような革命

 平成26(2014)年4月の診療報酬改定は,どの項目が何点上がった,何点下がったなどという生易しいものではない.平成18(2006)年改定の7対1入院基本料新設,療養病床への医療区分導入と療養病床の大幅削減というどちらかというと慢性期病床の絞り込み改定が主であった時以来の大改定である.むしろ改定というより革命であり,今回は平成18年に新設した7対1病棟の大幅削減という急性期の絞り込みが激しい.さらにこの改定にとどまらず,病床機能分化や非営利ホールディングカンパニー型法人制度や2次医療圏にとってかわる医療介護総合確保区域という新しい概念による医療体制そのものを大きく覆すような革命である.

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■地域のリハビリテーションを担う

 全国有数の湧水量を誇る温泉と,由布岳に囲まれる湯布院病院は,2014年4月,年金・健康保険福祉施設整理機構法の改正により,湯布院厚生年金病院から独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)湯布院病院(以下,本院)となった.

 リハビリテーションや地域医療の担い手として医療を提供している本院は1962年,成人病リハビリテーションの専門病院として発足.現在は内科,整形外科,リハビリテーション科,循環器科を持つ.2003年に大分県地域リハビリテーション支援センターに指定され,地域リハビリテーション活動の核となっている.

連載 アーキテクチャー 第239回

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■機能的かつ,快適な病院を目指して

 野口病院は1922(大正11)年に創立された,甲状腺疾患の治療と研究に関する国内トップレベルの病院(120床)である.

 今回のプロジェクトは,創立以来の現病院用地での建て替えとしてスタートした.しかし,機能的な医療環境を実現するためには,建て替えプロセスにおける平面計画上の制限が非常に大きく,また,既存病院に対する騒音・振動の影響,工期が長期化することが問題となった.

連載 世界病院史探訪・21【最終回】

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 1873(明治6)年に山形県天童村で創設された私立病院は,翌年移転・移管され,現在の山形市七日町で山形県公立病院として開院した.1876年8月に初代の山形県令に就任した鹿児島出身の三島通庸(1835-1888)は,県公立病院本館の新築を計画した.1876年に東京医学校(現 東京大学医学部)から転任した病院長の長谷川元良(1835-1896)と県官吏の筒井明俊に,三島県令は1877年,東京・横浜の病院を視察させ,筒井は新病院の設計図を完成させた.1878年2月に鹿児島出身の大工棟梁 原口祐之はこの設計図をもとに,七日町で山形県公立病院本館の新築工事に着手し,9月に1階がドーナツ型の病室・外来で,尖塔,バルコニーを持つ3階建ての特異なデザインの病院本館が竣工した.三層楼と呼ばれ,病院は済生館と命名された.

 こうして山形県公立病院済生館は,1879(明治12)年1月8日に開館した.三島県令は1880年9月にウィーン大学医学部を卒業したオーストリア人医師アルブレヒト・フォン・ローレッツ(Albrecht von Roretz, 1846-1884)を金沢医学校から山形県公立病院済生館医師兼山形県医学校の教頭として招いた.これより先,1874年に山形県公立病院医学寮で,洋医養成が開始されていた.ローレッツはこの病院・医学校で,母校で習得した医療と医学教育を行った.1882年に三島通庸は福島県令として転任し,ローレッツは同年7月にオーストリアに帰国した.地方税をもって医学校の経費を支弁してはならないとする1887(明治20)年制定の勅令48号により,山形県医学校は翌年廃校となった.県公立病院済生館も,1888年に私立病院となり,1904年に山形市立病院済生館になった.そして戦災にも遭わず,現在も七日町で運営されている市立病院本館として利用されてきた.1960年代に至り,老朽化のため,いったんは取り壊しが計画された.しかしながら,市民から保存するべきだとの声があがり,1966(昭和41)年には擬洋風建築物として,国の重要文化財に指定された.

連載 医療計画・地域医療ビジョンとこれからの病院マネジメント・6【最終回】

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 社会の高齢化の進行は後期高齢者の増大を意味する.連載第2回で大分県北部医療圏の例で示したように,後期高齢者の増加に伴って肺炎,骨折,脳血管障害の入院患者が増加する1).しかしながら,この分析は第一主傷病のみを用いて分析した結果であり,実際の後期高齢者の場合,医療ニーズは複合的である.すなわち,上記の傷病は相互に関連しながら顕在化し,そして認知症を合併している場合も少なくない,さらに,こうした高齢者は介護のニーズも持っており,したがって医療介護の両面から総合的に考える必要がある.

 おそらく地域の医療介護関係者はこうした認識をすでに持っていると思うが,具体的な数字が示されていないために,その対策は進んでいない.厚生労働省は地域包括ケアの実現を今後10年間の最も重要な政策課題として位置づけていると考えられる.その実現のためには医療ニーズ・介護ニーズの高い高齢者が,できうる限り在宅で生活できることを支えるためのサービス提供体制を実現することが求められる.

連載 病院のお悩み相談室・12【最終回】

事務長の後継者育成 垂水 謙太郎
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 全12回にわたって連載してきた「病院のお悩み相談室」も今回が最終回となりました.しかし,事務長に求められる役割はこの12回の連載による解説では尽くせないほど多く存在します.

 永続的に安定した病院経営をしていくためには,事務長候補となる職員を育成し,当該職員が事務長となった際には即戦力として経営の中枢を担っていくことが求められます.最終回の今回は,後継者の育成に関するポイントを解説します.

 また,診療報酬改定を受けて8か月が経ちました.最終回のコラムは報酬改定を振り返り,その影響についてコメントをします.

連載 医療者からみた高齢者の「こころとからだ」・6【最終回】

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 過去5回にわたって高齢者の「満足した生活」がどんな要因と関わりあっているかについて,主として心身の障害度から計量的な試みも含めて考えてみた.今回は最終回として,高齢者に関わる社会的な側面や生活環境について考えてみたい.

 「激動の社会」で頑張ってきた高齢者.団塊の世代は2015年で65歳を迎え,世界に類を見ない超高齢社会を突き進む.心身の不調を抱えながら,世界トップクラスとなった「生の延長(寿命)」をどう生きていくのかが問題である.高齢者を取り巻く社会環境は大きく変化した.例えば,日本では長男が家,財産を継ぐという習慣があったが,近年はこうした習慣は薄れてきている.それでは,誰が介護の必要な親を最期までケアしていくのか.新しい問題が現れている.

連載 リレーエッセイ 医療の現場から

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 「病院歯科」という言葉をご存知でしょうか? 歯科診療所ではなく「病院の中にある歯科」という意味で,歯科関係者が一般的に使用する語です.「病院内科」とか「病院耳鼻科」などとは言いませんので,それだけ歯科については,病院の中に歯科があるということが特殊なことで,区別して表記する必要があるということなのかもしれません.この病院歯科ですが,1993(平成5)年の1,528施設をピークに減少傾向にあります.この背景や原因などについては,『病院』2012年10月号の特集「病院における歯科」をぜひご覧になってください.

 減少傾向にある病院歯科に代わって増えてきているのが「歯科訪問診療」です.歯科という診療科は特殊で,免許も違えば,レセプトも違う用紙を使用するし,同一医療機関であっても医科と歯科で医療機関コードが異なります.また,歯科の標榜がない病院に入院中の患者に対し,歯科診療所からの「歯科訪問診療」が可能となっています.これは,「対診」で対応しなくてはいけない眼科・耳鼻科・皮膚科などとは依頼したいシチュエーションが似ているにもかかわらず,取り扱いが大きく異なります.事務部門としては,レセプト請求や自己負担金などに全く手を煩わせる必要がないため,歯科訪問診療というシステムは,ある意味便利かもしれません.読者の皆さんの施設にも,契約している訪問歯科や,契約はしていないけれども必要な時に対応してくれる歯科が出入りしていると思います.

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前編では,医療安全,質改善の取り組みのルーツを振り返りながら,エポックメーキングな出来事や先駆者の活動を紹介した.

後編では,米国の医療界でKAIZEN手法を学ぶなどの取り組みが始まる頃,日本で動き出した医療安全と質改善取り組みを踏まえ,これからの課題と展望を探る

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第17回日本在宅医学会もりおか大会

日時:2015年4月25日(土)〜26日(日)

会場:マリオス盛岡地域交流センター(岩手県盛岡市)ほか

投稿規定

次号予告

「病院」第73巻 総目次

基本情報

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病院
73巻12号 (2014年12月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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