生体の科学 68巻4号 (2017年8月)

特集 血管制御系と疾患

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 われわれ脊椎動物において,血管系は物質輸送の極めて重要なネットワークを形成している。各組織特有の細胞群が十分に働けるために,栄養と酸素を常に運搬すると共に,不要物の回収と廃棄を効率良く行っている。まさに現代社会の輸送網を体内で再現しているイメージである。更に,血管とリンパ管が発生早期からどのように成立し,また成熟期においてはどのようにして脳や腎臓,肝臓など各組織特異的な血管・組織相互作用を成立させるのかを考えると,血管系の持つ複雑性や多様性の奥の深さに大きな驚きを持たざるを得ない。

 このように身体のほとんどの組織が血管系に依存していることから,血管と様々な疾患が互いに深く関係することは病理学的にも以前から指摘されていた。腫瘍増殖に血管系が重要な役割を果たすとの仮説は米国のJ. Folkman博士が40年以上前に提唱したが,当時は血管制御分子の実態が不明であったため,創薬に結びつけることができなかった。

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 血管は,血液や酸素,種々の因子や栄養素などを運ぶ単なる管ではなく,様々な形で周囲の組織と相互作用しあい,発生過程,臓器形成・維持や病態形成過程などにおいて多彩な役割を果たし,ヒトの生老病死のすべてに深く関与している。例えばがんの進展,予後を左右する血行性およびリンパ行性転移は,まさに血管・リンパ管新生がその中心的役割を果たしている。

 本稿では,こうした血管の発生・新生のメカニズム,特に血管細胞の分化・多様化の機構について概説する。また,ヒトiPS細胞研究,特に臓器組織形成や疾患モデル構築における血管細胞の意義についても考察する。

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 われわれ脊椎動物は閉鎖血管系を持ち,組織への栄養と酸素の供給,また,老廃物の回収を行っている。リンパ管系も脂質や免疫細胞の輸送系として働く。血管系は,動脈硬化や心筋梗塞などの循環器系疾患のみならず,死因の第1位であるがんの増殖・転移などの悪性化に深く関与する。がんにおける血管系の重要性をもとに,米国のFolkman博士は1970年代に新しいがん治療法として腫瘍血管の抑制剤を提唱した。しかし,その当時はどのような分子機構が生理的・病的血管新生に関与するかは不明で,薬剤の開発は困難であった。その後,研究の進展により,血管新生の中心的制御系は,本稿のテーマであるVEGF-VEGF受容体(以下,VEGFR)システムであることが明らかとなり,がんのみならず,血管が関連する他の疾患に対しても新規治療薬の重要な分子標的となっている(図1)。

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 血管は個体の発生と維持に必須であり,がんや炎症などの疾病においても重要な役割を果たす。このため,血管新生の分子機構は各領域において精力的に解明されている。一方,リンパ管に関する研究は血管に比べると立ち後れていた。しかし近年,リンパ管の発生や病態に関する分子機構が研究され,次第にリンパ管の重要性が明らかになり始めた。本稿では,研究領域が拡大しつつあるリンパ管新生において,その中心となるVEGFシグナルに焦点をあて,がんをはじめとする病態におけるリンパ管新生の役割を概説する。

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 生物の分化発生過程において,血管新生をはじめとする脈管系の形成は必要不可欠である。生理的な血管新生は子宮内膜,卵胞形成,創傷治癒などでのみ誘導されて,厳密な制御を受けている。一方,糖尿病,眼内血管新生病,関節リウマチ,動脈硬化症やがんなどで観察される“病的な血管新生”は,その誘導制御は複雑で多様化している。この“病的な血管新生”の誘導に単球・マクロファージが担う働きが注目されている。本稿では,血管制御におけるマクロファージの関与のなかでも,腫瘍関連マクロファージ(tumor-associated macrophage;TAM)の腫瘍血管制御を中心とした最新の知見と治療開発の現状について言及する。

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 血管新生は基底膜の分解から新生血管の形成に至る一連の生体反応であり,炎症,網膜症,創傷・潰瘍治癒をはじめとする多くの病態との関連が深い反応である。特に,腫瘍の増殖・転移には必須の現象であり,治療標的としての意義が大きい。これまでに,がん依存性の血管新生,炎症,創傷・潰瘍治癒時の血管新生に,生理活性脂質であるプロスタグランジン(prostaglandin;PG)が重要な役割を持つことを報告してきた。遺伝子改変動物での検討から,腫瘍依存性の血管新生では,PGの作用部位は,宿主側の間質組織いわゆる“ストローマ”であることを報告してきた1,2)。間質ストローマ組織は,骨髄より動員される造血系の細胞で構成される。筆者らは,その過程が血管新生に依存する創傷治癒においても,骨髄より動員されるPG受容体発現細胞が,重要な役割を発揮していることを明らかにしてきた3)

 一方,血管新生に加えて,リンパ管新生の病態生理学的な意義に,急速に注目が集まりつつある。従来の考えでは,がんのリンパ行性転移は,既存のリンパ管に浸潤到達した腫瘍細胞が移行することにより起こるとされてきたが,血管と同様に間質ストローマ,更には腫瘍組織においてリンパ管が新生し,それへ腫瘍細胞が移行するとの見方が重要視されてきている。リンパ管新生に血管内皮細胞増殖因子VEGF(vascular endothelial growth factor)のアイソフォームであるVEGF-Cが重要な役割を持つことが報告され,炎症性サイトカインIL-1によりVEGF-Cがup-regulateされるという報告がある。すなわち,炎症反応とリンパ管新生がリンクし,血管新生と同様に炎症反応の制御を介したリンパ管新生の抑制が,がんの浸潤および転移の抑制に有効であることが大いに期待できる。

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 軟骨など一部の臓器を除き,ほぼすべての臓器・組織は動静脈により閉鎖系の血流路が展開され,組織細胞は細動脈から分岐した毛細血管から酸素や養分の供給を受けている。毛細血管から透過した酸素や養分は,組織の硬度,粘性などにも影響されるが,おおよそ50μmの距離までしか拡散せず,そのため非常に血管密度の高い毛細血管網が全身で構築される。毛細血管から続く細静脈は,体内異物を認知した白血球が組織へ侵入する扉として機能し,速やかな炎症の終息にかかわる。また,近年,血管の新たな機能として,いわゆる血管内皮細胞から分泌される分子が,近接細胞の生存や維持を誘導する,いわゆるangiocrine signalの組織構築や維持における重要性が示されてきた。つまり,血管は様々な機能により,個体の恒常性維持において非常に重要な役割を果たしていると言える。

 胎児期に生じる血管形成は脈管形成と呼ばれ,中胚葉細胞からの血管内皮細胞の分化,内皮細胞による管腔形成,そして血管平滑筋細胞やペリサイトといった壁細胞の内皮細胞の裏打ちによって,安定した構造の血管が形成される。血管が形成されたのちに新しく血管が必要になると,新しい血管が既存血管から分岐し,伸長して新規の血管が形成される。この過程は血管新生と呼ばれ,炎症や創傷治癒などの組織再構築や,がんや網膜症といった様々な血管病で誘導される。正常組織では,血管内皮細胞同士の接着や,壁細胞と内皮細胞の接着が誘導されて透過性の制御された血管が誘導されるが,慢性炎症部位やがん組織では,内皮細胞同士の接着がルーズで,壁細胞が内皮細胞を裏打ちせずに未成熟な血管形成が持続している。これが血管透過性の亢進を招き,がんにおいては,低酸素の持続によるがん細胞の悪性化,組織間質圧の亢進による薬剤送達性の低下,pHの低下による放射線療法に対する抵抗性の獲得,がん細胞の血管内移送によるがんの転移などの原因となっている。腫瘍内の血管を正常化すると,薬剤送達性が改善し,放射線療法にも感受性が生じ,また転移も抑制されるということが判明してきている。このように,未成熟な血管を成熟な血管に誘導することは,がんや慢性炎症などの治療法の開発にも応用されると考えられ,また再生医療において,機能的な臓器の構築には必須であると考えられる。本稿では,未成熟な血管がいかに成熟化していくのか,特に血管新生過程において,血管内皮細胞に発現する二つの受容体Tie2,APJの観点から解説する。

血管制御系Vasohibinの役割 佐藤 靖史
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 血管新生は促進因子と抑制因子の局所バランスによってコントロールされているが,抑制因子には,例えば軟骨など無血管性を維持するため恒常的に産生されているものと,血管新生が過剰とならないように血管新生刺激に反応して産生されるものとに区別される。筆者らは,血管内皮細胞が産生して血管新生を負にフィードバック調節する分子としてVasohibin-1(VASH1)と,そのホモログで血管新生を促進するVasohibin-2(VASH2)を発見したが,VASH1は抑制因子としては後者に分類される。血管内皮細胞は,常に血流や血圧といった物理的刺激や血中の様々な物質に曝されている。そのため,これらのストレスに長年にわたり曝露されることから,自分自身を保護するための機構を保持しており,その一つとしてもVASH1は作動している。

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 哺乳類の生体内には一部の無血管組織(角膜や軟骨,椎間板など)を除いて,全身くまなく血管網が張り巡らされる。また,その血管ネットワークの解剖学的特徴,発生のメカニズムは臓器によって多様であり,多くの場合,その臓器の主たる構成細胞(例:心臓では心筋細胞,肝臓では肝細胞)により規定されると考えられる。大脳の血管網は,胎生初期にまず脳の表面(脳軟膜)にしっかりした血管網が張り巡らされ,この間,脳の内部(脳実質)に血管は進入せず,脳実質はいわゆる“無血管組織”として発達する。胎生約10日目になって,脳軟膜の血管ネットワークから脳実質方向への垂直方向の枝分かれが生じ,その枝分かれによってできた細い穿通血管が,脳実質内の特定の層で新たな血管叢を形成する。この一連のプロセスにより,多層から成る三次元的な脳の血管ネットワークができあがる。大脳の血管網はこのような段階的なステップを経て形成されるが,この過程を反映してか,出生後もなお脳軟膜血管網に比して,脳実質の血管は細く,密度は疎である。

 大脳の血管パターニングがなぜこのような様式をとるかの合目的性については,全くもって不明であるが,おそらく神経内部,特に軸索や樹状突起の多く存在する部位では,血流によるノイズが多少なりとも神経活動に影響を及ぼすのではないかと考えられる。また,表面上の太い血管から,臓器内部へ伸びる細い血管が枝分かれするパターンは“strain vessel”と呼ばれ,脳だけではなく,網膜や心臓,腎臓においてもみられ,臓器の低灌流(血流の減少)から身を守るために有利な構造であると考えられている1)

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 腫瘍血管はがんの増大・転移に不可欠であり,現在,がんに新生される腫瘍血管を標的とする血管新生阻害薬が新しい抗がん剤として広く用いられている。しかし,現在の血管新生阻害療法にも限界があることが示されている。この新しい治療法の成功のためには,腫瘍内の血管,更にそれを構成する血管内皮細胞の生物像の理解が重要である。

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 腫瘍血管新生や血管新生阻害薬の病態生理に関しては他の項で詳細に解説されているため,本稿では消化器がんにおける血管新生阻害治療の実態について解説する。なお,本稿における“消化器がん”は上皮性のがんと非上皮性悪性腫瘍の両者を指している。

 消化器がん領域においても血管新生阻害薬は既に日常診療に必須の薬剤となっている。血管新生阻害治療は腫瘍の栄養と酸素を絶つ,いわゆる“兵糧攻め”であることから,当初,あらゆる固形腫瘍に有効な薬物治療となることが期待され,実際に種々の血管新生阻害薬を用いた実験的検討では,概ね腫瘍の種類を問わず一定の抗腫瘍効果が示された。しかし,これらの前臨床結果を得て開始された臨床試験は予想とは異なる結果となり,日常診療における血管新生阻害薬の“立ち位置”は,がん種により全く異なるものとなっている。例えば,大腸癌に対してはkey drugの一つと位置づけられているが,食道癌,膵臓癌に対して保険収載されている薬剤はない。また,固形腫瘍の増殖に血管新生が必須であることを考えれば単剤でも有効であるはずであるが,標的分子が単一である抗体医薬単独で有効性が認められているのは胃癌におけるramucirumabのみである。消化器がんに対して単剤での使用が認められているそれ以外の薬剤は,すべてtyrosine kinase inhibitor(TKI)で,複数の標的分子を有しており腫瘍血管新生阻害作用も認められるため,広義の血管新生阻害薬に分類されている。

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 悪性腫瘍の制御において,腫瘍血管新生を抑制するという概念は1970年代にHarvard大学のFolkmanが提唱したものである1)。腫瘍血管新生を惹起させるシグナル伝達経路としてはVEGF(vascular endothelial growth factor)経路が重要な役割を担っており,腫瘍細胞や間質由来のVEGFが血管内皮細胞に特異的に発現しているVEGFR-1, 2に結合し,下流のシグナルを活性化させる。本シグナル伝達経路は幅広いがん種において治療標的となっており,現在までに様々な血管新生阻害薬の臨床開発が進められてきた(表1)。

 本稿では呼吸器がんにおける血管新生阻害薬の位置づけについて,これまでに施行された臨床試験の結果を含め各薬剤について概説する。

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 乳癌を含めた固形腫瘍では,機能および構造異常を伴う腫瘍血管の増加により血流が障害され,酸素供給不全となり組織低酸素となることが知られている。血管新生阻害薬は,異常な腫瘍血管を阻害することでがんへの栄養や酸素を遮断し,がんの増殖を抑制することを期待された薬剤である。乳癌領域における血管新生阻害薬は抗VEGF療法が中心であり,本稿では,臨床試験結果,課題,今後の展望を含めて解説する。

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 悪性グリオーマは,原発性脳腫瘍のなかで最も頻度の高い腫瘍であり,手術,放射線療法,化学療法を併用しても極めて予後不良である1)。その原因としては,グリオーマの早期増大,進展,治療抵抗性獲得,腫瘍血管新生や腫瘍浸潤が挙げられる。本稿では,グリオーマの特に血管新生に関する標的分子,新規分子標的治療薬と臨床試験について概説する。

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 胎盤は血管に富んだ組織である。妊娠初期における胎盤は,その形成過程において種々の血管新生因子の精緻な働きに支えられて,子宮壁側と胎盤側のそれぞれで血管系の発達が進行する。本稿では,VEGFファミリーシグナル,LPAシグナルに着目して,胎盤脈管形成におけるかかわりについて近年の知見を紹介する。また,それらの血管形成制御機構の異常が妊娠高血圧症候群(特にpreeclampsia)の発症に深くかかわっており,妊娠高血圧症候群に対する新規の予知,治療の視点から現状と今後の展望について述べる。

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 腫瘍や炎症性疾患にみられる血管新生機構の解明が進められ,血管系シグナル伝達に関与する因子が明らかにされてきた。そのなかでも,血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor;VEGF)は,血管新生制御において中心的な役割を果たすことが知られている1)。VEGFは,血管内皮細胞に対する増殖因子および血管透過性亢進因子の性質を持つ糖タンパク質で,血管新生や血管透過性亢進誘導のほか,内皮細胞の遊走や細胞接着因子の発現制御作用を有し,生体内で酸素欠乏が生じた際には,血流改善と酸素供給を促進する1-3)。近年,VEGFが幾つかの神経変性疾患の病態に関連することが明らかにされた4,5)。本稿では,神経変性疾患とVEGFの関連について紹介する。

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 血管新生は,眼科領域の疾患において非常に重要な生理現象である。脈絡膜に新生血管が生じる加齢黄斑変性,網膜に新生血管が生じる糖尿病網膜症や未熟児網膜症など,血管新生が生じる眼疾患は多岐にわたる。本稿では,眼疾患における血管新生の分子メカニズムと,それらの疾患に対する血管新生・血管透過性阻害薬の臨床知見について述べたい。

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 もやもや病は,両側内頸動脈(internal carotid artery;ICA)終末部と付近の頭蓋内主幹動脈が進行性に狭窄・閉塞し,代償性に異常血管網の発達を認める疾患である1,2)。小児や若年成人の脳卒中の原因として重要な疾患であるが,その原因はいまだ不明である1)。近年,もやもや病の疾患感受性遺伝子RING finger protein(RNF)213が発見され,本疾患の基礎研究が新たな局面を迎えている3,4)。本稿では,疾患感受性遺伝子ならびにバイオマーカーについての最近の知見を紹介し,もやもや病発症の機序について考察する。

連載講座 生命科学を拓く新しい実験動物モデル−13

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 ES細胞やiPS細胞を用いた研究が進み,多能性幹細胞という言葉を頻繁に目にするようになった。多細胞動物のなかにはもともと多能性・全能性幹細胞を持ち,多能性・全能性の維持や分化を制御し,体の恒常性の維持ばかりでなく,再生,無性生殖に用い,生殖細胞も体性幹細胞に由来している動物も多数存在する。プラナリア,ヒドラ,カイメンなどがそのような動物の代表であるが1-3),これらの動物に多能性・全能性幹細胞を自在に制御する細胞・分子機構を学べるはずである。なかでもカイメン動物は全能性幹細胞を持ち,また現存する多細胞動物のなかで最も進化系統樹の根元に位置づけられており,幹細胞の進化や起源的な分子基盤を明らかにするために非常に重要である。筆者らは研究開始当時,分子生物学的な解析がほとんどされていなかったカイメン研究分野において,分子生物学的な解析が必須と考え,一つひとつ実験法を確立して解析を進めてきた。

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 1967年にNakaneらがHRP(horse radish peroxidase)を抗体に付けて,酵素反応により可視化する方法を開発1)したことを皮切りに,1980年代に病理診断の現場に免疫染色が取り入れられ,現在では必要不可欠なものとなっている。免疫染色の自動化が進み,その所要時間は通常約2-3時間で,それ以前の“手染め”に比べ格段に時間と手間が軽減された。術中迅速病理診断時にも免疫染色の応用が期待されたが,そのクオリティーは決して満足すべきものではなかった。迅速に免疫染色を行うため,抗体濃度は通常希釈濃度と比較し高濃度にする必要があり,コストパフォーマンスの悪さも懸念されていた。マイクロウェーブや超音波などを用いる方法など様々なものが提案されてきた2-4)が,いずれも医療現場に広く普及するものではなかった。このようななか,2014年5月に迅速免疫染色(rapid immunohistochemistry;R-IHC)が可能な電界撹拌技術を搭載した装置ヒスト・テック®R-IHC®,通称ラピートが発売された(図1A)。本稿ではその原理,利点,診断,研究への応用について概説する。

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 「藤田・藤田の組織学」という名で親しまれてきた名著『標準組織学 各論』の第5版が,装いも新たにして出版された。原著者であるお二人の藤田先生の薫陶を受けられた岩永敏彦先生(北大教授)と,石村和敬先生(徳島大名誉教授)の手になる労作である。

 組織学は人体を構成する臓器や組織の構造を知るために,主に光学顕微鏡を使って,さまざまな細胞がどのように配置されているかを調べ,臓器や組織の生理機能を支える構造を学ぶ学問である。当然のことながら,組織学がカバーする範囲は人体の隅々にまで及び,含まれる情報量は膨大なものになる。多くの科目が詰め込まれている医学部・歯学部の6年の学部教育課程の中で,組織学をどのように学んだらよいか? 世の中に出回っている教科書のスタンスは,2つに分かれるようである。

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次号予告

あとがき 野々村 禎昭
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 特集『時間生物学の新展開』の号(67巻6号)に私が「あとがき」を書いたとき,合衆国現大統領はアメリカメディアから総スカンで先ず当選することはないだろうと,書いてしまった。ところが現実は現在の通りで私は謝らなければならない。しかし現大統領はアメリカを弐等国にしてしまい,いつまで続くか分からないような状態である。世界中の科学者にとってもこの人の大統領が続かないことを望む。

 10年以上前,澁谷教授は「癌と血管新生の分子生物学」という書物を17章のべ31人の著者を集め編集し出版された。当時は癌に集まる新生血管を叩くことが抗癌作用への有効な戦略と考えられ,未来への可能性を秘めた非常な好著集であった。

基本情報

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生体の科学
68巻4号 (2017年8月)
電子版ISSN:1883-5503 印刷版ISSN:0370-9531 金原一郎記念医学医療振興財団

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