Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
血管新生は基底膜の分解から新生血管の形成に至る一連の生体反応であり,炎症,網膜症,創傷・潰瘍治癒をはじめとする多くの病態との関連が深い反応である。特に,腫瘍の増殖・転移には必須の現象であり,治療標的としての意義が大きい。これまでに,がん依存性の血管新生,炎症,創傷・潰瘍治癒時の血管新生に,生理活性脂質であるプロスタグランジン(prostaglandin;PG)が重要な役割を持つことを報告してきた。遺伝子改変動物での検討から,腫瘍依存性の血管新生では,PGの作用部位は,宿主側の間質組織いわゆる“ストローマ”であることを報告してきた1,2)。間質ストローマ組織は,骨髄より動員される造血系の細胞で構成される。筆者らは,その過程が血管新生に依存する創傷治癒においても,骨髄より動員されるPG受容体発現細胞が,重要な役割を発揮していることを明らかにしてきた3)。
一方,血管新生に加えて,リンパ管新生の病態生理学的な意義に,急速に注目が集まりつつある。従来の考えでは,がんのリンパ行性転移は,既存のリンパ管に浸潤到達した腫瘍細胞が移行することにより起こるとされてきたが,血管と同様に間質ストローマ,更には腫瘍組織においてリンパ管が新生し,それへ腫瘍細胞が移行するとの見方が重要視されてきている。リンパ管新生に血管内皮細胞増殖因子VEGF(vascular endothelial growth factor)のアイソフォームであるVEGF-Cが重要な役割を持つことが報告され,炎症性サイトカインIL-1によりVEGF-Cがup-regulateされるという報告がある。すなわち,炎症反応とリンパ管新生がリンクし,血管新生と同様に炎症反応の制御を介したリンパ管新生の抑制が,がんの浸潤および転移の抑制に有効であることが大いに期待できる。
Copyright © 2017, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.