臨床眼科 52巻7号 (1998年7月)

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 混同色を考慮に入れた,色覚異常者にも見やすいスライド使用色を提案する。色覚正常者には不便な面もあるが,色覚異常者の社会適応を潤滑にするための配慮は必要である。

連載 眼の組織・病理アトラス・141

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 虹彩後面には虹彩色素上皮細胞の基底膜があり,これに加齢変化が観察される。若年者の虹彩色素上皮細胞の基底膜は均一な単一層をなし,細胞膜の陥入が存在する部分でも,陥入の入り口を乗り越えて広がっている。基底膜の周囲には細線維や顆粒状物質は観察されない(図1)。

 一方,高齢者では,虹彩色素上皮細胞に加齢による変性が生じ,細胞膜陥入は幅広く,深く,しかも不整になる。虹彩色素上皮細胞の基底膜は多層化する(図2,3)。多層化した基底膜の周囲には,弾性組織マイクロファイブリル(oxytalan)の特徴を持つ多量の細線維が沈着している。細線維の直径は11〜13nmで,12〜16nmの周期性の縞模様がみられる(図4)。この断面は四角形から六角形をなし,中心は高電子密度で周辺はやや明るい管構造を持ち,チン小帯の断面に似ている(図5)。また基底膜あるいは細線維に関連して高電子密度の顆粒状物質の沈着が高頻度にみられる(図3)。

連載 眼科手術のテクニック・104

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 今回はトラベクロトミー用プローブ(以下,プローブ)の前房への早期穿孔について,2回プローブが前房に穿孔した後,3回目に正しくシュレム管に挿入できた症例について解説する。

今月の表紙

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 症例は18歳の男性で幼少時から視力は中等度の低下を示す。現在の視力は右0.3(0.4×+1.5D),左0.2(0.4×+2.0D)である。眼底は,写真のように黄斑部に皺襞を伴う顆粒状嚢胞様所見がみられるが,螢光眼底所見ではほとんど異常がみられない。眼底周辺部には金箔様反射がみられる。網膜電図(ERG)はb波と律動様小波の減弱がみられ,a波は正常振幅を示していた。以上の所見から若年網膜分離症と診断された。

 本症はX連鎖性劣性遺伝を示し,本症にみられる眼底所見はすべて典型的所見である。眼底黄斑部は嚢胞様黄斑浮腫に似ることもあるが,螢光眼底所見が全く異なる。黄斑部所見が本症より軽微で細隙灯顕微鏡でよく見ないと見落とすこともあるが,眼底周辺の金箔様反射やERG所見を参考にして診断される。

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 20歳男性が交通事故で長管骨を骨折した。左眼に視野狭窄が生じ,受傷から11日後に受診した。矯正視力は右0.8,左0.03であった。右眼底には綿花様白斑が散在し,左眼底には網膜静脈閉塞症様の所見と桜実黄斑があった。螢光造影で,左眼に網膜静脈閉塞と黄斑周囲の毛細血管閉塞があった。右眼の螢光造影所見は正常であった。フラッシュ網膜電図は両眼とも正常であった。フリッカー網膜電図で,右眼に軽度の振幅低下があったが,受傷から22日後に正常化し,視力が1.5に回復した。受傷から2か月後の左眼視力は0.09であった。本例は典型的なPurtscher網膜症であり,全身打撲による急激な逆行圧または白血球凝集による血管閉塞と,これによる網膜静脈圧の上昇が原因と推定された。

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 58歳女性が5日前に左眼の視力低下を自覚し,球後視神経炎として紹介された。視力は右1.0左眼0.02であった。眼底には異常所見はなかった。視野は左眼に求心性狭窄があった。MRI検査で脳下垂体に2cm大の出血と思われる塊があり,下垂体卒中と診断された。手術的に摘出された腫瘤は,嫌色素性の良性腺腫と,これからの出血であった。手術後に視野が正常化し,3か月後に左眼視力は0.9に回復した。下垂体卒中による視力障害が早期治療で回復しうることを示す例である。

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 若年性関節リウマチに併発した白内障に対して,水晶体切除術,前部硝子体切除術を行い良好な経過を得た8歳,女児の1例を経験した。2歳時に単関節型若年性関節リウマチと診断され,その9か月後に右眼に虹彩炎が生じ,ステロイド薬の内服と点眼を行ったが虹彩炎は持続した。8歳時に膨隆虹彩になり,レーザー虹彩切開術でいったん寛解したが,その4週後に眼圧が再上昇して当科を受診した。視力は右手動弁,左1.0であり,右眼に虹彩後癒着と成熟白内障があった。左眼は正常であった。全身麻酔下で右眼に白内障手術を行った。強角膜切開創経由で虹彩後癒着を剥離し,水晶体を吸引したのち,毛様体扁平部経由で水晶体嚢と前部硝子体をできるだけ完全に切除した。術後経過は良好で,眼圧は正常化し,0.2の矯正視力が12日後に得られた。若年性関節リウマチに伴う白内障の手術においては,cyclitic membraneの形成や続発する予後不良の低眼圧を防ぐため,完全な水晶体切除および硝子体基底部の前部硝子体を十分に切除することが重要であると考えられた。

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 過去2年間に眼内レンズの毛様溝縫着を21眼に行った。12眼は無水晶体眼に対する眼内レンズの二次挿入であり,9眼は水晶体脱臼に対する水晶体摘出後の眼内レンズ挿入であった。前群では8眼,後群では9眼で視力が改善した。手術前後での角膜内皮細胞減少率は,それぞれ13.9±11.4%と16.3±14.7%であり,術後乱視はそれぞれ2.4±1.9Dと1.4±0.5Dであった。どちらについても両群間に有意差はなかった。術後合併症として,高眼圧が脱臼群で多く,外傷によるものと推定された。水晶体脱臼に対する水晶体除去と眼内レンズの毛様溝縫着は有効であり,比較的安全であると結論される。

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 網膜静脈閉塞症に合併した嚢胞様黄斑浮腫11眼に対して,人工的後部硝子体剥離の作製を目的とした硝子体手術を行った。視力改善は5眼,不変6眼,悪化なしで,術後視力は術前に比べ有意に改善した(paired t-test,p<0.01)。検眼鏡あるいは螢光眼底造影で評価した黄斑浮腫は減少7眼,不変4眼で増力口はなかった。画像解析ソフトNIH lmageを用いて嚢胞腔面積を比較した7眼では,平均19.3%の減少がみられ,術後の嚢胞腔面積は術前に比べ有意に減少していた(Wilcoxon's signed ranktest,p<0.05)。硝子体手術は,網膜静脈閉塞症に合併する嚢胞様黄斑浮腫に対して,有効な治療法となりうる。

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 眼痛で眼科を受診し,片眼の虹彩腫瘍が発見された2症例で,肺癌の転移であることが判明した。いずれも男性で,年齢は82歳と52歳であった。原発巣は,それぞれ肺小細胞癌と肺腺癌であった。1例では前房水に異型細胞が検出され,CEAとCAI5-3が前房水では高値を示し,血清値は正常範囲であった。本例では,前房水の腫瘍マーカーの検索と細胞診が,転移性虹腫瘍の補助診断に有用であった。

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 症例は23歳の男性で右顔面にSturge-Weber症候群の血管腫があり,右眼視神経乳頭耳側に黄斑部を含む約7乳頭径の大型の脈絡膜血管腫を認め,下方周辺部に胞状の続発性網膜剥離が存在した。レーザー光凝固,インターフェロン全身療法,網膜下液排液などの治療は無効であった。低線量の放射線外照射(計22Gy)を行ったところ,放射線療法終了後から眼底所見は著明に改善し,5か月後には腫瘍は扁平化し,網膜剥離は消失して網膜は復位した。難治の脈絡膜血管腫に対して低線量放射線外照射が有効な症例を経験した。

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 63歳女性の左上眼瞼縁に,18日前から腫瘤が生じた。細隙灯顕微鏡による観察で,腫瘤は生きている虫体であることが判明した。殺虫剤で処理した後,外科的に除去した。虫体はヤマトダニlxodesovatusと同定された。本症例は従来の報告の中で生きたまま,最も長く眼瞼に放置された例である。

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 X連鎖性網膜分離症の1家系3症例を報告した。症例1は8歳の男児,症例2は5歳の男児で,互いに母系のいとこであり,それぞれの母親は二卵性双生児であった。2例とも,検眼鏡的に中心窩網膜分離と周辺部網膜分離が両眼にみられた。症例3は54歳の男性で,症例1と2の母方祖父にあたり,両眼に黄斑部の萎縮巣と下耳側網膜の色素沈着があった。症例1および2を走査型レーザー検眼鏡(SLO)で観察した。黄斑部にアルゴン青(488nm)で症例1は斑状の,症例2は車軸状の高輝度の領域が観察されたが,赤外光(780nm)では症例1でのみ顆粒状の高輝度の病変がみられた。SLOは,検眼鏡でとらえられないような網膜色素上皮や脈絡膜の病変を検出するのに有用であった。

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 特発性黄斑円孔20眼に対して,超音波水晶体乳化吸引術と眼内レンズ挿入を併用した硝子体手術を行った。内訳はstage3が12眼,stage 4が4眼,再手術4眼である。術直後から,ガスを通して,アムスラー表を使った検査と近方視力検査を行った。円孔が閉鎖すると,アムスラー表での成績が顕著に改善し,50%では変視症が自覚されなくなる。細隙灯顕微鏡と非接触レンズを使つた黄斑部の観察で円孔の閉鎖が確認できたら,夜間は側臥位にさせた。1回の手術で円孔の閉鎖が得られた19眼のうち,17眼では術翌日に,2眼では2日目には閉鎖を確認した。3眼では円孔が再発し,初回手術の成功率は16眼80%であった。円孔閉鎖が確認できた後,強制体位を緩和しても,閉鎖率には従来の報告と大差がなく,患者の苦痛軽減に有用であった。

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 69歳女性の右眼に急性閉塞隅角緑内障の発作が起こった。全幅虹彩切除では浅前房が改善せず,眼圧も下降しなかった。水晶体亜脱臼と膨隆白内障の所見がなく,悪性緑内障が疑われた。散瞳薬の5日間の点眼で発作は寛解せず,core vitrectomyと前房形成術も無効であった。さらにアトロピンの点眼継続で眼圧は正常化した。1年後に,水晶体亜脱臼と続発閉塞隅角緑内障が発症した。水晶体嚢内摘出と前部硝子体切除で治癒した。最初の発作は特発性の悪性緑内障であり,水晶体の前方移動が原因と考えられた。

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 糖尿病黄斑症7眼に硝子体手術を行い,中心窩下に沈着した持続性の硬性白斑を摘出した。術後の観察期間は6か月から46か月,平均22か月であった。硬性白斑は,4眼では中心窩に限局し,3眼では中心窩を含む血管アーケード内に広範囲に沈着していた。術前視力は全例で0.1以下であった。術後視力は6眼で2段階以上改善し,全症例での最高視力は0.2であった。黄斑円孔4眼,白内障2眼,黄斑前膜1眼が手術の合併症として生じた。硬性白斑で黄斑部網膜が障害されていることと,中心窩に限局している白斑では癒着が強いために網膜欠損が起こりやすいことが,術後の視力改善が低い原因として考えられた。糖尿病黄斑症での硬性白斑摘出術は,視力低下が強い例では適応になりうると考えられた。

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 水晶体脱臼13眼と眼内レンズ脱臼12眼に対し,硝子体手術を併用した摘出または整復を行った。水晶体脱臼の原因は,Marfan症候群8眼,外傷1眼,白内障術中の核落下1眼,特発性3眼であった。術後観察期間は3か月から53か月,平均27か月であり,21眼では6か月以上観察した。手術により全例で視力の改善または維持ができ,25眼中22眼で最終観察時まで視力が維持された。21眼84%で,0.4以上の最終視力が得られた。経過中に1眼で眼内レンズの再落下,1眼で嚢胞様黄斑浮腫が進行した。合併症として一過性の眼圧上昇,パーフルオロカーボンの残留,網膜再剥離があったが,対症療法で改善した。

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 過去16か月間に,特発性黄斑円孔32眼に対して硝子体手術を行った。15眼はstage3,17眼はstage4の円孔であった。15眼では術後に硝子体を20%SF6で置換し,約10日間,腹臥位を維持させた。17眼では,同じく100%の空気で置換し,約4日間,腹臥位をとらせた。SF6群では,stage 3円孔の83%とstage 4円孔の63%が閉鎖した。空気群では,同じく78%と67%の閉鎖率であった。視力改善は,SF6群ではstage3円孔では83%,stage4円孔では63%で得られた。空気群では,同じく89%と67%で得られた。両群間には円孔閉鎖率と視力改善率について有意差がなかった。黄斑円孔の硝子体手術の腹臥位期間を短縮することが可能である。

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 頸動脈海綿静脈洞瘻が30か月前に発症した68歳の女性が,同側の視野異常で受診した。患側に浅前房と脈絡膜剥離が発見された。インドシアニングリーン赤外螢光造影で,後極部から上方の中間周辺部に脈絡膜循環障害による低螢光斑と,後極部から鼻側にかけて脈絡膜静脈の拡大があった。このような所見は,海綿静脈洞瘻で好発するものであり,脈絡膜剥離に特異な変化であるとは考えにくい。赤外螢光造影で検出できない脈絡膜血管の透過性亢進が持続しているためと推定された。浅前房と脈絡膜剥離は1か月後に自然寛解した。

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 35歳の医療器械の技術者が皮膚科用のQスイッチ・ルビーレーザーを保護眼鏡なしで点検中,右眼でレーザー光を直視した。波長694nm,照射野径6mm,照射時間25nsec,照射出力10J/cm2の1回照射と推定された。翌日の受診時の右眼矯正視力は0.07であり,眼圧36mmHgで,角膜浮腫,前房の炎症細胞,虹彩腫脹,水晶体の上皮混濁,硝子体出血,中心窩の上方に浮腫を伴う網膜前出血があった。1週後に眼圧は正常化し,網膜の浮腫と出血,硝子体出血が軽減した。2週後に凝固部に網膜円孔と網膜上膜が生じた。6か月後の右眼視力は0.8であった。プレドニゾロンの全身投与が,網脈絡膜の瘢痕化,黄斑皺襞進展と網膜下新生血管発生の抑制に有効であると判断された。

基本情報

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臨床眼科
52巻7号 (1998年7月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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