検査と技術 47巻4号 (2019年4月)

病気のはなし

多発性筋炎・皮膚筋炎 天野 浩文
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Point

●多発性筋炎(PM)は躯幹筋・四肢近位筋を中心とした横紋筋の炎症性疾患であり,皮膚筋炎(DM)は筋病変に加えて特徴的な皮膚病変を併発したものである.

●間質性肺炎(IP)や悪性腫瘍の合併頻度が高く予後を左右するため,それらのスクリーニングとフォローが重要である.

●筋炎症状に乏しく皮膚症状が中心である場合,amyopathic/hypomyopathic DMあるいは筋無症候性皮膚筋炎(CADM)と呼ばれ,しばしば急速進行性間質性肺炎を合併する.

●CADMに合併したIP患者では,抗MDA-5抗体が高率に検出され,予後は極めて悪く,進行した段階ではあらゆる治療に抵抗するため,早期からステロイドと免疫抑制剤を併用した強力な免疫抑制療法を行う必要がある.

技術講座 病理

DFSの好酸球顆粒染色 嵯峨 彰太
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Point

●好酸球性疾患では好酸球の正確なカウントを求められる場合があります.

●DFS染色はアミロイドの染色法で有名ですが,好酸性物質も染まります.

●DFS染色を用いて,好酸球顆粒のみを染めることが可能です.

●DFS染色は,好酸球の判定で視覚認識性に優れています.

技術講座 生理

シリーズ 臨床に伝わる画像記録とレポート作成の工夫・2

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Point

●大動脈解離には心タンポナーデ,大動脈弁逆流(AR),冠動脈血流障害などの致命的な合併症が存在する.

●Stanford A型大動脈解離を見落とさないために,胸骨左縁(上位肋間)アプローチで上行大動脈の観察を試みる.

●ファイリングおよびレポーティングシステムを活用し,前回画像と比較しながら心機能変化を評価する.

●依頼内容や主訴,身体所見などの情報から疑うべき疾患を想定し,その答えを画像記録とレポート作成に反映させる.

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Point

●閉塞性換気障害の代表である気腫有意の慢性閉塞性肺疾患(COPD)では,胸部X線写真において横隔膜位の低下,肺の透過性の亢進,肋間の開大がみられる.

●肺活量の減少は重度のCOPDや間質性肺炎などでみられる.前回値から急激に肺活量が減って,画像の異常(間質性肺炎の増悪,無気肺,胸水の貯留)などがみられれば,ただちに主治医に連絡すべきである.

●気胸や肺結核は呼吸機能検査の禁忌である.典型的な画像を示したので,見かけた際には検査前に主治医に問い合わせる.

技術講座 血液

シリーズ 末梢血液像観察の基礎・1

白血球編 阿南 建一
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Point

●末梢血液像の白血球分類は,自動血球計数装置による機器分類と光学顕微鏡による目視法分類の2つに大別される.

●目視法分類は,検体採取から鏡検までの工程に発生するアーチファクトやピットフォールの要因とその回避策が不可欠である.

●目視法分類による白血球分類は,細胞構成を理解して百分率と絶対数を求め,異常所見については高度な知識と眼力をもって形態診断を行う.

●白血球分類の報告は,正規分類項目以外の細胞の場合,other欄やcomment欄を有効に活用することが望ましい.

●未染色の標本や診断を終えた標本は,責任者を明確にして保存や保管に努める.

トピックス

Helicobacter cinaedi感染症 荒岡 秀樹
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はじめに

 近年,Helicobacter cinaedi感染症の症例報告が増加している.興味深いことに,日本からの報告が多いが,理由は定かでない.臨床現場では,血液培養からグラム陰性らせん状桿菌を検出することが本菌による感染症の認知の契機となる.日常の検査のなかで,H. cinaediによる感染症を見逃さないために,本稿ではその疫学や特徴について解説する.

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はじめに

 ゲノム医療の実用化に向けた体制整備が進められているなか,安全で適切な医療提供を推進するため,遺伝子関連・染色体検査を含む検体検査の精度の確保を目的に,医療法等の一部改正が行われた.改正法は診療所,歯科医療機関,助産所等を含む全ての医療機関に適用される.本稿では今回の法改正の内容について概説する.

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はじめに

 赤血球粒度分布幅(red blood cell distribution width:RDW)は赤血球の容積を分布幅で示したもので,RDWが大きいほど赤血球の大きさのばらつきが大きいということを表している(図1).RDWには,粒度分布の下方20%の高さにおける分布幅を表したRDW-SD(RDW-standard deviation)(fL)と,粒度分布面積が正規分布であると仮定したときの分布幅の指標にあたるRDW-CV(RDW-coefficient of variation)(%)があるが,本稿ではRDW-CVを以後RDWとして表記するものとする.RDWは自動血球計数装置で計測され,平均赤血球容積(mean corpuscular volume:MCV)との組み合わせにより,貧血の鑑別に有用とされるが,近年,RDWが冠動脈疾患や心房細動,また心不全などの心疾患の予後と関連することが報告されるようになった.本稿ではRDWと心不全の関連について概説する.

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はじめに

 現在,日本では世界に類をみない速さで少子高齢化が進んでおり,認知症対策は重要な社会問題である.2012年において65歳以上の高齢者における認知症患者数は462万人と報告されており,今後さらにその数が増えることが予想される1).認知症の原因疾患は多岐にわたるが,最も多い疾患がアルツハイマー病であり,その患者数は報告により異なるものの,認知症全体の約7割とされている.本稿では,そのアルツハイマー病の生化学的バイオマーカーの現状について解説する.

過去問deセルフチェック!

血液形態検査
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 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説
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 本欄において,しばらく血液形態検査が取り上げられていなかったため,近年の国家試験問題からリンパ系,単球系の異常細胞にフォーカスし,ピックアップした.国家試験では問題の選択肢に病名の記載があるため解答を導き出すのは容易だが,血液検査室の技師においては,問題2は別として,提示した形態写真のみを見て病名を推察できなければならない.

 一方で,広い分野を勉強しなければならない学生にとっては問題1と2,問題3と4の形態が似たような細胞に見えてしまう.これには相当の形態写真・問題に触れ,トレーニングを行う必要がある.問題3は別として,初発時のリンパ系,単球系の白血病では単一の異常細胞の増殖が認められるので,血液形態検査で診断が容易である.しかしながら,より正確な診断,治療効果判定においては血球算定,細胞表面マーカー,特殊染色,染色体・遺伝子検査を加えた総合診断が必須で,これが血液検査学といえる.

疾患と検査値の推移

肝癌 今村 潤
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Point

●肝癌は主に肝細胞癌を指し,慢性肝炎・肝硬変などなんらかの肝疾患を背景に発生するという特徴をもつ.

●治療法は種々あり,腫瘍の状態および肝機能を考慮して決められるため,検査値が重要となる.

●肝機能を評価するために,血清アルブミン,血清ビリルビン,プロトロンビン活性の測定は必須である.

●病勢および治療効果の評価のために,腫瘍マーカーであるα-フェトプロテイン(AFP)とPIVKA-Ⅱが用いられており,大変役立つ.

臨床医からの質問に答える

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はじめに

 日常検査において,各材料からさまざまな菌が分離される.そのなかには,感染症の原因菌や常在菌が含まれる.市中感染では,ビルレンス(病原性)の強い菌が感染し,体の各臓器にさまざまな感染症を発症させる.病院感染では易感染者に対して環境由来の弱毒菌や常在菌が感染症の原因菌になることが多い.

 一般的に感染症(感染部位・病態)と原因微生物(菌種)との間にはある程度の関連性が認められる.このため,典型的な感染症とその原因菌を把握しておくことは培養検査結果の解釈の際に大いに役立つ.また,検査材料の品質を外観やグラム(Gram)染色で評価(感染病巣部由来や粘膜由来など)することが極めて重要である.特に検体採取時に常在菌汚染が避けられない喀痰などの検査材料においては,グラム染色による品質評価が欠かせない.一方,血液,胸水あるいは髄液などの無菌材料から微生物が検出された場合には比較的結果解釈が容易である.しかしながら,血液培養を代表とする無菌材料から皮膚常在性の菌種が検出された場合には,コンタミネーションと原因菌両方の可能性を考慮する必要がある.

 本稿では血液培養陽性事例をもとに,培養検査結果の読み方・考え方について紹介する.

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Q ドライアイスを入れて凍結検体を輸送する場合,凝固検査にどのような影響がでますか?

A 凍結検体を輸送するときには一般的にドライアイスが用いられます.ドライアイスは二酸化炭素の個体で,−78.5℃で昇華し炭酸ガスを放出します.そのため,検体輸送に使用するBOX内では時間の経過とともに炭酸ガス分圧が上昇します.その際,炭酸ガスが検体中に溶け込んでしまうとpHが低下し凝固検査に影響を与えますが,容器内の検体と炭酸ガスが適切に分離されていれば影響は生じません.

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はじめに

 B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)感染者は,日本では人口の約1%1)程度存在すると考えられている.売血が主要な輸血供給だった1960年代には輸血を受けた患者のなかで半数以上が肝炎を発症したといわれており,輸血後肝炎は非溶血性輸血反応の1つとして古くから問題となってきた.その後,売血から献血への完全移行,HBV関連マーカー〔HBs(hepatitis B surface)抗原,HBs抗体,HBc(hepatitis B core)抗体〕の血清学的検査および核酸増幅検査(nucleic acid amplification test:NAT)の導入など,検査項目の追加および検査技術の向上により輸血によるHBV感染率は極めて低く,輸血用血液製剤の安全性は高まっている.

 しかしながら,HBVに感染してから検査陽性になるまでの期間(ウインドウ期)の存在により,献血ドナーがHBVに感染してから検査が陽性になるまでに採血された輸血用血液製剤によって感染するリスクはいまだ存在する.そのため,「輸血療法の実施に関する指針」2)では,受血者の輸血前検査としてHBs抗原,HBs抗体,HBc抗体を測定し,これらが陰性だった場合に輸血後検査として3カ月後にHBVのNATを行うことを推奨している.推奨されているのはNATだけだが,実際にはHBs抗原,HBs抗体,HBc抗体の血清学的検査が同時期に依頼されていることが多く,輸血患者の感染症検査にあたる機会は多々あるのではないのだろうか.

 感染症検査を担当するうえで輸血後肝炎を早期に発見することは,早期の治療介入および同一献血ドナーの輸血用血液製剤による感染拡大を防ぐために非常に重要である.一方,治療を受けている患者では初期感染以外にもHBV関連マーカーが陽転化するケースがあり,これらを正しく理解していないと結果を見誤ることがあるため注意が必要である.そのため,本稿では輸血前後のHBV関連マーカー検査における感染症検査解釈の注意点を示す.

ワンポイントアドバイス

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はじめに

 2014年6月18日に「臨床検査技師法等に関する法律の一部改正」が成立し,臨床検査技師に“鼻腔・咽頭”からの検体採取が業務追加され,2015年4月1日から施行された.当院では,2015年11月より中央採血室受付の外来患者を対象に鼻腔・咽頭からの検体採取を実施しているため1),そのポイントについて紹介する.

連載 生理検査のアーチファクト・23

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こんなアーチファクトを知っていますか?

 図1a,bは,腹部のMR画像(グラジエントエコー法:逆位相・同位相の横断像)である.これら2つの画像は,1回の撮像で同時に取得可能である.逆位相像(図1a)では臓器(腎臓,肝臓,膵臓,腸管など)が全周性に黒く縁取られているのに対し(図1c),同位相像(図1b)では黒い縁取りは認められない.この黒い縁取りは第2の化学シフトアーチファクトと呼ばれる.どのような原理でこのアーチファクトが現れるのであろうか? また,逆位相像と同位相像の2種類の画像を取得する目的はなんであろうか?

ラボクイズ

微生物検査 木下 まり

2月号の解答と解説 市川 佐知子

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隙間の時間で皮膚病理を学べるありがたい自己学習ツール

 『実践! 皮膚病理道場—バーチャルスライドでみる皮膚腫瘍』に続いて『実践! 皮膚病理道場2—バーチャルスライドでみる炎症性/非新生物性皮膚疾患』が発刊されました.

 この本の特徴は,①バーチャルスライドを操作して自分のペースで学べる点と②難易度別に基本的レベルのA,応用レベルのB,難易度のやや高いCの3段階に区分されている点です.

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かかりつけ医が診察室に置いておくべき1冊

 本書の編著者である伊藤澄信先生は,国立病院機構本部総合研究センター長であり,東京都医師会の予防接種委員会のメンバーもお務めいただいていることから,かねてから多方面で東京都医師会の活動にご尽力いただいてきた.

 かかりつけ医,プライマリ・ケア医の臨床現場を熟知しておられるため,本書には,地域の外来医が遭遇する「健診データで困った場合」への対応策が,身体測定・生理,X線・超音波,生化学・血液学・血清学・尿,その他,の各領域ごとに,具体的に実によく書かれている.

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病理医と臨床医の敷居が低くなる良書

 腎臓を専門とする医師のほとんどが臨床における腎病理の重要性を理解し,よく勉強している.腎生検のカンファレンスや学会中のレクチャーなどはいつもどこも満員である.ただ,自信を持って自分は腎病理が読めるという臨床医はほとんどいないのが現状である.なぜだろうか.やはり腎病理の特殊性があるからではないだろうか.例えば,腫瘍の生検を病理診断する時,悪性か良性かの判断が重要で,経過や病因はあまり関係なく,その場の病理所見で治療法も決定される.しかし腎病理の場合,単にスナップショットのみで判断するのでなく時間軸を勘案してどのような経過でこの病態となり,今後どのようになっていくと推察できるかという情報が病理報告に求められる.したがって,病理アトラスで典型像をいくら見て理解しても実際に読めないことが多いのであろう.つまり正確な診断には臨床医と病理医が歩み寄って情報を共有することが不可欠となる.しかし,これまで十分にそれがなされていたかはいささか疑問である.両者が集うカンファレンスや研究会でも経験の豊富な腎病理医がどのような思考回路で判断したか述べることなく難解な症例の結論を出すことがあり,それを臨床医が聞いてただ鵜呑みにして“やっぱり腎病理は奥が深くて入門しづらい”と思って終わることがよくある.病理医から臨床医への一方通行であり,両者の壁は厚くなるばかりである.

 その中で,この『なぜパターン認識だけで腎病理は読めないのか?』は腎病理医の代表の長田道夫先生(筑波大)と臨床医の代表の門川俊明先生(慶大医学教育統轄センター)が会話形式で,病理医がどのような思考プロセスで症例を読んでいくのか解き明かしており,大変実践的な内容となっている.特に日頃聞きにくいような基本的な内容も門川先生が臨床医目線でどんどん聞いてくれるし,また答える長田先生も臨床医が知っていてほしいことや病理医でも意見が分かれる内容などもそのまま歯切れよく回答しているので,非常に読みやすくまた腑に落ちやすい.これから腎病理を専門とする病理医になりたい方には,ぜひまず初めに読んで腎病理医としての診断プロセスのたたき台を作っていただきたいと思う.また,腎病理を専門としない腎臓医も腎生検の病理を依頼する時の臨床情報の提供に何が求められているのか理解できるので大変有用だと思う.

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目次

『臨床検査』3月号のお知らせ

あとがき・次号予告 谷口 智也
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 1990年に始まった「大学入試センター試験」が行われた1月にあとがきを書いています.今年で“平成最後”となる試験もいろいろな珍問題,珍事件があったようですが,来年を最後に2020年度からは「大学入学共通テスト」がスタートします.とりわけ問題となっているのが“英語”のようで,国は民間事業者の導入を決めています.すでに一部の大学では,“不採用”を決定したという話もあり,その理由として「民間事業者の導入により試験の公平さを欠くことにつながり,利益相反を生む可能性があること」を挙げています.具体的には,“地域,お金,癒着,漏えい”などの問題です.あくまでも“試験”というものは,全ての受験生に対し公平,公正でなければなりません.一方,2019年の「第65回臨床検査技師国家試験」が2月20日に行われ,この4月号がでるころの3月25日には結果が発表されます.2019年の“試験”はどうなっているのでしょうか.

基本情報

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検査と技術
47巻4号 (2019年4月)
電子版ISSN:1882-1375 印刷版ISSN:0301-2611 医学書院

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