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はじめに
B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)感染者は,日本では人口の約1%1)程度存在すると考えられている.売血が主要な輸血供給だった1960年代には輸血を受けた患者のなかで半数以上が肝炎を発症したといわれており,輸血後肝炎は非溶血性輸血反応の1つとして古くから問題となってきた.その後,売血から献血への完全移行,HBV関連マーカー〔HBs(hepatitis B surface)抗原,HBs抗体,HBc(hepatitis B core)抗体〕の血清学的検査および核酸増幅検査(nucleic acid amplification test:NAT)の導入など,検査項目の追加および検査技術の向上により輸血によるHBV感染率は極めて低く,輸血用血液製剤の安全性は高まっている.
しかしながら,HBVに感染してから検査陽性になるまでの期間(ウインドウ期)の存在により,献血ドナーがHBVに感染してから検査が陽性になるまでに採血された輸血用血液製剤によって感染するリスクはいまだ存在する.そのため,「輸血療法の実施に関する指針」2)では,受血者の輸血前検査としてHBs抗原,HBs抗体,HBc抗体を測定し,これらが陰性だった場合に輸血後検査として3カ月後にHBVのNATを行うことを推奨している.推奨されているのはNATだけだが,実際にはHBs抗原,HBs抗体,HBc抗体の血清学的検査が同時期に依頼されていることが多く,輸血患者の感染症検査にあたる機会は多々あるのではないのだろうか.
感染症検査を担当するうえで輸血後肝炎を早期に発見することは,早期の治療介入および同一献血ドナーの輸血用血液製剤による感染拡大を防ぐために非常に重要である.一方,治療を受けている患者では初期感染以外にもHBV関連マーカーが陽転化するケースがあり,これらを正しく理解していないと結果を見誤ることがあるため注意が必要である.そのため,本稿では輸血前後のHBV関連マーカー検査における感染症検査解釈の注意点を示す.
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