細胞工学 34巻8号 (2015年7月)

特集 パラダイムシフトする翻訳制御研究

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真核生物や古細菌のタンパク質合成系では,終止コドンや翻訳反応の停滞状態など,通常のセンスコドン以外の遺伝暗号提示状態の解読は,tRNA/EF1A複合体に擬態するタンパク質分子群によって担われることが明らかになってきた.このことは,真正細菌とは決定的に異なり,真核生物や古細菌ではリボソームの普遍的遺伝暗号解読機構がより多くの過程でに共有されることを意味しており,終止コドンのリコーディングやmRNAの品質管理機構の解明研究,さらにはそれらをターゲットとする創薬などにおける戦略に新たな手掛かりを与えるだろう.

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真核生物は細胞の状態や環境変化などに応じて,翻訳するmRNAの種類やその程度をダイナミックに制御しており,特に翻訳の開始段階におけるmRNAの選択とそれに続く開始コドンの認識が重要なチェックポイントであることがわかっている.ここ数年,開始複合体におけるリボソームや開始因子(eIF)の熱力学的・速度論的解析と構造解析を組み合わせ,開始段階の各ステップにおける分子の挙動を定量的に議論することが可能になってきている.本稿では40Sリボソームと開始tRNAが結合して43S複合体を形成する過程と,mRNAが開始因子eIF4Fによって活性化され,43S複合体と結合して48S複合体を形成する過程に注目し,リボソームと開始因子がどのように協調的に相互作用してmRNAの結合に至るのか,そのメカニズムに関する最近の知見を紹介したい.

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翻訳は様々なmRNA結合タンパク質により制御されているが,mRNAの5'非翻訳領域(UTR)のみではなく,3'UTRにもシスエレメントが存在し,翻訳制御の起点となっている.これまでにも3'UTRに結合する多くのタンパク質が報告され,mRNAのキャップ構造,eIF4E-eIF4G複合体,リボソーム,poly(A)鎖などを標的として開始,伸長などの翻訳のステップを制御している.一方,翻訳がmRNA量の調節にも関わることも知られている.本稿では,翻訳のステップごとに3'UTRのシスエレメントに結合するタンパク質を介した翻訳制御の分子機構を紹介し,その意義に関しても議論したい.

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microRNA( miRNA)は植物からヒトまで進化的に保存されたタンパク質をコードしない小さな RNA分子で,標的mRNAの安定性や翻訳を制御する.最近の研究から,このような miRNA機構に poly(A) 短鎖化に依存しない翻訳抑制機構の存在が示唆され,その作用点が翻訳開始の初期段階であることが明らかになってきた.さらに,神経分化・シナプス可塑性のような高次生命現象には部位特異的な遺伝子発現調節機構が必須であり, miRNA機構は RNA結合タンパク質と協調的に働くことでそれを可能にしていることが明らかになりつつある.本稿では, miRNAによる純粋な翻訳抑制機構の解明につながる最新の知見を紹介するとともに, miRNA機構と RNA結合タンパク質の密接な関わりについて議論したい.

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自然免疫は,病原体特有の構成成分を細胞内外の感染センサーが感知し,発動する.ウイルス感染時にはⅠ型IFNを中心とした様々なサイトカインが感染後数時間以内に産生され,抗ウイルス生体防御の第一の防御壁として機能している.一方,ウイルスは独自の増殖機構を進化させ,宿主の機構を乗っ取り,自身に有利な環境で複製・増殖を行っている.最近筆者らは,ウイルス感染などのストレスに応じて一過的に翻訳を制御しているストレス顆粒(SG)が,ウイルス感染センサーであるRLRを介した抗ウイルス応答に重要な役割を果たしていることを見いだした.そこで本稿では,RLRのウイルスRNA認識機構とウイルス感染時の翻訳制御機構について最新の知見を交えて解説する.

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翻訳制御においてmRNAの特に非翻訳領域(UTR)が重要であることは国内のいくつかの先駆的な研究で示されていたが,リボスイッチの発見は翻訳でのUTRの重要性を再確認させるものとなった.原核生物においてはRNAの構造そのものが制御を行うことが多いのに対し,真核生物ではRNA結合タンパク質を含めた翻訳制御が多い.近年ではこれらをまとめてリボスイッチと呼ぶことも多くなっている.また,ウイルスタンパク質の翻訳においてもリボスイッチは重要で,感染症治療薬の開発のためにもリボスイッチによる翻訳制御機構の解明が重要である.

基本情報

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細胞工学
34巻8号 (2015年7月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0287-3796 学研メディカル秀潤社

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