特集 ゲノム編集革命:遺伝子改変はZFN・TALEN・CRISPR/Cas三強時代へ
せるてく・あらかると
出会いと融合から生まれる新展開
押村 光雄
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1鳥取大学大学院医学系研究科機能再生医科学専攻/鳥取大学染色体工学研究センター
pp.518-519
発行日 2013年4月22日
Published Date 2013/4/22
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ショウジョウバエのだ腺染色体の核型進化を用いた「ショウジョウバエの亜種の進化」が大学学部の卒業研究であった.もちろん卒研であるから,教授の研究のお手伝いをしたにすぎない.確かに核型進化をトレースすることによって進化のプロセスを知ることができることは理解できたが,染色体の構造の変化が進化の原動力になるのか,単なる結果なのか,知りたいことがわからないフラストレーションを感じたのを思い出す.このフラストレーションこそがサイエンスの始まりであることをのちに知ることとなった.その後,本格的に研究生活に入ることになったが,12年間はひたすらヒトやマウス染色体の解析を行った.イヌの陰部がんの染色体解析,ヒト人工流産胎児の染色体解析,マウスX染色体の不活性化,マウス染色体転座の減数分裂時の分配法則の解明,レムール(キツネザルの属名)やエゾヤチネズミの染色体解析,ヒト白血病の染色体異常の解析などである.それぞれの染色体解析からそれなりの知見は得られてきた.例えば,種々の白血病型には特有の染色体転座が存在するなどで,私たちが発見した転座のいくつかは後にオンコジーンとの関わりが明らかになったし,現在ではその転座が診断にも役立っている.しかし,それまでの研究方法はそこにあるものを解析するだけで,実験的でない点にフラストレーションを感じ始めていた.
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