手術 72巻11号 (2018年10月)

特集 消化器外科 ロボット支援手術の実際

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わが国では2012年より前立腺全摘術に対するロボット支援手術が保険適用とされたが,2018年度より新たに12術式が保険収載され,胸腔鏡下食道悪性腫瘍手術においてもロボット支援手術を保険診療で行うことが可能となり各施設で導入・普及することが予想される。当科では食道癌に対し2010年6月から手術支援ロボット(da Vinci® Surgical System;da Vinci®)を用いた胸腔鏡下食道切除術を開始し,2018年4月までに67例施行し,さらに2018年4月よりda Vinci Xi®を導入した。

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ロボット支援手術は三次元視野下で,手振れ防止機能付きの自由度の高い鉗子を用いることにより繊細な手技が可能となるため,通常の腹腔鏡手術に比較してより高い安全性と優れた治療成績が期待されている。

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2018年度の保険収載に伴い,手術施行症例の増加が想定されるロボット支援下胃切除のうち,胃全摘術について述べる。当科でのロボット支援による腹腔鏡下胃切除は,2008年にわが国で初めて胃癌に対して幽門側胃切除を施行したことにさかのぼる1)。ロボット支援下の胃全摘術は2009年8月に初めて施行し,2018年4月までに85例を経験してきた。本稿ではD2のロボット支援下胃全摘術について,ロボット支援手術特有の注意点を中心にその概略について述べるとともに,術後の短期成績についても言及する。

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2018年4月の保険適用拡大により,ロボット支援腹腔鏡下噴門側胃切除術も保険収載されたが,術者基準・施設基準を満たした施設で,日本内視鏡外科学会の定めた「ロボット支援下内視鏡手術導入に関する指針」などを遵守し,安全に導入することが求められている。

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直腸癌に対するロボット支援手術は2018年4月より保険収載され,施設基準を満たせば保険診療が可能となった。導入準備や導入中の施設,すでに導入済みで症例をさらに増加させる施設など,直腸癌ロボット支援手術件数は急速に増加することが予想される。しかし,ロボット支援手術(da Vinci®)には触覚がないなど特有の性質があり,導入に際しては慎重に安全に行う必要がある1)。

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静岡県立静岡がんセンター大腸外科では2011年12月に直腸癌に対するロボット支援手術を導入し,2018年7月までに700例以上の手術を施行し,その有用性について報告してきた1,2)。ロボット支援手術は直腸癌手術において癌の根治性と機能温存を両立させることができる有用なmodalityであると考えている。2018年度診療報酬改定では直腸癌に対するロボット支援手術は保険適用されることになり,今後,ロボット支援手術は直腸癌に対する外科治療の中心を担うことが期待されている。

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腹腔鏡手術は開腹手術に比べ傷が小さく整容面に優れ低侵襲とされており,出血量の軽減,術後在院日数の短縮などが認められ,現在ではほとんどの消化器外科領域の手術が保険適用となっている。そのなかでも内視鏡手術支援ロボットda Vinci® Surgical Systemは高解像度三次元画像と安定した術野,拡大視効果,鉗子の多関節機能,手振れ防止機能などの優れた機能を有し,精密な手術を可能にする。

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腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術は1990年代に初めて報告され1),徐々に報告件数も増えてきているが,いまだ限られた施設でしか行われていない2)。腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術では,拡大視効果によって精緻な手術が可能となり,手術スタッフで術野を共有できる点がメリットであるが,動作制限下での膵空腸吻合の技術習得にはかなりの労力が必要である。しかし,その手術成績は,開腹手術と比較して術中出血量の軽減,術後在院日数の短縮が得られ,長期成績には差がないとする報告が多い3-6)。わが国では2016年4月に腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術が保険収載されたが,適用はリンパ節郭清を伴わないものとされ,施設基準も厳格で年間50例以上の膵切除を行っている施設に限定されている。

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近年,胃癌に対する腹腔鏡手術の短期成績が明らかになり,現行の胃癌治療ガイドラインでも「幽門側胃切除術が適応となるcStage Ⅰ症例で,腹腔鏡下手術は日常診療の選択肢となりうる」と記載されるに至った。ただし,経験数が少ないと術後合併症が多いという報告もあり,施設もしくは術者の習熟度に応じて適応基準を設定することが肝要とされている。

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欧米において提唱されている進行結腸癌に対する全結腸間膜切除(complete mesocolic excision;CME)は,支配血管を中枢で結紮・切離することにより中枢方向のリンパ節を郭清するという概念を含んでいる1)。わが国で日常的に行われている進行結腸癌に対する手術は,CMEとほぼ同じコンセプトに基づいているが,「D3郭清」との用語に示されるように中枢方向のリンパ節郭清に重点が置かれている印象がある。わが国のD3郭清の原則に従うと,癌の占居部位に応じて処理する血管が定型的に決定される。たとえば上行結腸癌では,回結腸動静脈・右結腸動静脈(存在する場合)を根部処理,中結腸動静脈右枝を処理することになる。ただ,実際には,副右結腸静脈に沿うリンパ流や,頻度は少ないが右胃大網動静脈に沿うリンパ流があることが報告されており,症例によっては従来のD3郭清より広範囲の郭清が必要となる2)。一方で,同じ上行結腸癌であっても,盲腸近傍と肝彎曲近傍の腫瘍ではリンパ流は異なるはずであり,すべての上行結腸癌に対して定型的な手術を行うことは過剰な切除になる可能性がある。大腸癌治療ガイドラインでは,リンパ節郭清領域および郭清度を術前の臨床所見あるいは術中所見により決定すると記載されているが,症例に応じた適正なリンパ節郭清領域を診断する方法は確立されていないのが現状である3)。近年,インドシアニングリーン(ICG)蛍光イメージングにより腸管血流やリンパ流(節)を視認することが可能な内視鏡外科手術用の蛍光内視鏡システムが数社から開発・製品化されている。近赤外線蛍光イメージング装置であるPINPOINT®システム(Novadaq社)は,通常のハイビジョン画像にICG蛍光イメージングで撮られる蛍光をカラー画像としてオーバーレイすることができ,血管やリンパ管の走行を手術操作中に容易に確認することができるカラー蛍光内視鏡システムである。今回,郭清すべきリンパ節領域の同定が可能かを検討するために,カラー蛍光内視鏡システムであるPINPOINT®システムを用いて術中蛍光リンパ流・リンパ節診断を行い,臨床病理因子と比較検討を行った。

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胃癌手術を含め,消化器癌手術においては正確な解剖の理解が不可欠であるが,解剖理解に基づいた組織の剥離や切離を行うには適切な「術野」,すなわち「場」の展開が必須である。

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腹腔鏡下肝切除(laparoscopic liver resection;LLR)は,肝腫瘍に対する根治性と低侵襲性から急速に普及している。2014年に行われた第2回腹腔鏡下肝切除国際コンセンサス会議を経て,minor LLR(Segment 2, 3, 4b, 5, 6に対する腹腔鏡下部分切除および肝外側区域切除)は,世界的にも標準術式として確立されたと考えられている1)。

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術後膵液瘻(postoperative pancreatic fistula;POPF)は,膵切除後合併症のうち最も頻度が高く1,2),また,それに起因する膵切除後出血(postpancreatectomy hemorrhage;PPH)は,時に致死的となり得る最も重大な合併症の1つである。PPHの発生頻度は3~16.1%と報告されており3-6),それを減らすためにさまざまな手術手技や術後管理の工夫がなされている。PPHの予防策として,肝円索や大網を使用し,膵消化管吻合部へwrappingする手技7-9)が報告されているが,その有用性に関しては議論が分かれるところである。当科では,2017年1月以降,膵頭十二指腸切除(pancreaticoduodenectomy;PD)と膵体尾部切除(distal pancreatectomy;DP)症例において,PPH予防目的として,術中に動脈断端・動脈露出部位を肝円索にて被覆し,PD症例では膵消化管吻合部・肝管空腸吻合部と,DP症例では膵断端と,動脈断端・動脈露出部位とを隔絶させる肝円索パッチ法を導入したのでその手技を概説し,当科における成績を紹介する。

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左側胆嚢とは胆嚢床が肝円索の左側に位置し内臓逆位を伴わないものを指す1)。

左側胆嚢に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術の報告は多数ある2,3)が,単孔式腹腔鏡手術による報告例は少ない4-7)。

今回,左側胆嚢に対してdome down法を利用して単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した1例を報告する。

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虚血性腸炎は,上腸間膜動脈や下腸間膜動脈などの主幹動脈に明らかな閉塞を伴わないにもかかわらず発症する腸管の虚血性病変である1,2)。小腸は側副血行路が発達しているため虚血性小腸炎の発症頻度は大腸に比べ非常に低く,壊死まで至ることはまれである。

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神経鞘腫は頭頸部や四肢に好発する神経組織由来の腫瘍であり,後腹膜に発生することはまれである1)。仙骨前面の後腹膜神経組織より発生し,腹腔鏡手術で組織学的に遺残なく完全切除し得た後腹膜神経鞘腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

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Braunは1901年に結紮糸が起因となった大網の炎症性腫瘤を報告している1)。今回われわれは腹腔鏡下に摘出した植物片によるBraun腫瘤の1例を経験したので,若干の文献的検討を加え報告する。

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手術
72巻11号 (2018年10月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0037-4423 金原出版

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