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欧米において提唱されている進行結腸癌に対する全結腸間膜切除(complete mesocolic excision;CME)は,支配血管を中枢で結紮・切離することにより中枢方向のリンパ節を郭清するという概念を含んでいる1)。わが国で日常的に行われている進行結腸癌に対する手術は,CMEとほぼ同じコンセプトに基づいているが,「D3郭清」との用語に示されるように中枢方向のリンパ節郭清に重点が置かれている印象がある。わが国のD3郭清の原則に従うと,癌の占居部位に応じて処理する血管が定型的に決定される。たとえば上行結腸癌では,回結腸動静脈・右結腸動静脈(存在する場合)を根部処理,中結腸動静脈右枝を処理することになる。ただ,実際には,副右結腸静脈に沿うリンパ流や,頻度は少ないが右胃大網動静脈に沿うリンパ流があることが報告されており,症例によっては従来のD3郭清より広範囲の郭清が必要となる2)。一方で,同じ上行結腸癌であっても,盲腸近傍と肝彎曲近傍の腫瘍ではリンパ流は異なるはずであり,すべての上行結腸癌に対して定型的な手術を行うことは過剰な切除になる可能性がある。大腸癌治療ガイドラインでは,リンパ節郭清領域および郭清度を術前の臨床所見あるいは術中所見により決定すると記載されているが,症例に応じた適正なリンパ節郭清領域を診断する方法は確立されていないのが現状である3)。近年,インドシアニングリーン(ICG)蛍光イメージングにより腸管血流やリンパ流(節)を視認することが可能な内視鏡外科手術用の蛍光内視鏡システムが数社から開発・製品化されている。近赤外線蛍光イメージング装置であるPINPOINT®システム(Novadaq社)は,通常のハイビジョン画像にICG蛍光イメージングで撮られる蛍光をカラー画像としてオーバーレイすることができ,血管やリンパ管の走行を手術操作中に容易に確認することができるカラー蛍光内視鏡システムである。今回,郭清すべきリンパ節領域の同定が可能かを検討するために,カラー蛍光内視鏡システムであるPINPOINT®システムを用いて術中蛍光リンパ流・リンパ節診断を行い,臨床病理因子と比較検討を行った。
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