看護研究 47巻3号 (2014年6月)

特集 Mixed Methods Research─その意義と可能性

『看護研究』編集室
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 近年,Mixed Methods Researchへの関心が高まっている。欧米を中心に,Mixed Methods Researchを用いた研究が活況を呈しており,今後,わが国の看護研究においても,本方法の役割が大きくなっていくことも考えられる。

 これまでの間,質的研究と量的研究とは対立するものとして捉えられがちであったが,両者を統合しようとする傾向が高まっていると思われる。質のデータと量のデータを用いた研究自体は,以前からも行なわれてきているが,意義ある研究成果を導くためには,質的量的双方の研究を積み重ねていくことは不可欠であるだろう。では,Mixed Methods Researchの新しさはどこにあるのか。これまで行なってきた方法とどこが異なり,どのような意義や課題をもち,看護研究に寄与していくのか。看護研究のこれからにおいて,Mixed Methods Researchの位置づけを考えていく必要があるだろう。

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はじめに

 近年さまざまな分野で高い関心が寄せられている質的・量的研究アプローチのハイブリッドであるミックスドメソッド・リサーチ(Mixed Methods Research;以下MMR)にとって,本年2014年は特別な年である。その理由は,米国のボストン・カレッジ(Boston College)において,MMRの国際学会(Mixed Methods International Research Association;以下,MMIRA)の記念すべき第1回年次大会註1が開催される年だからである。ただし,これまでMMRの学会が世界で存在していなかったわけではない。例えば英国では,米国の動きより早く研究法に関する学術雑誌や学会が,MMRの発展を支援してきたようなところがあり,国際的なMMRの研究集会もこれまでは,ケンブリッジ大学(Cambridge University)やリーズ大学(University of Leeds)のヘルスケア学部を母体として開催されてきた。しかし,本年はいよいよ,MMR初の専門学術雑誌Journal of Mixed Methods Research(Sage出版)の創刊に深くかかわった米国のMMR研究者グループを中心に昨年発足した国際学会MMIRAが,初の年次大会をボストンで開催するというわけである。MMRの物語はまだまだ始まったばかりだが,さしづめ2014年は,「新たな章の幕開け」の年であるといってもよいだろう。

 そこで本稿では,この記念すべき年にあたり,これまでのMMRの発展の歴史を振り返りながら,当該研究アプローチをめぐるさまざまな議論,課題,そして今後の動向について,私自身が重要と考えるトピックを中心に紹介させていただく。現在日本語で読めるMMRに関する文献は増えてきているが,その範囲はいまだ限られている。紙幅の関係から,ここでも発信できる情報は限定されるが,MMRという研究アプローチにおける新たなムーブメントと今後の方向性の概要を,少しでも多くの読者に示すことができれば幸いである。

 なお,私は看護学のバックグラウンドはもたないが,これまで多少なりともMMRおよびそのアプローチを用いた医療研究にかかわってきた者として,また,MMR専門学術雑誌Journal of Mixed Methods Researchの編集委員を創刊以来務めてきている者として,本稿を執筆させていただく。

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はじめに

 看護師の業務範囲はたいへん幅広いと思う。患者として垣間見た限りでも,一方では厳格な手順が要求される業務をこなしながらも,他方では標準化することができない繊細な患者対応を行なう姿を,目にすることができる。そういった多様な業務を捉えようとすると,文字通り一筋縄ではいかない。だから,看護研究の名のもとに,非常に幅広い研究アプローチが開花するのは当然と思われる。そのためなのだろう,看護系大学・大学院等の研究・教育プログラムには,少なくとも量的手法と質的手法の両者が組み込まれていると聞く。さらに,髙木らによると,2003/2004年の時点で「トライアンギュレーションの方法を知っていますか」との問いに対し,看護系大学教員のうちの47.5%が肯定的に回答している(髙木,西山,2004;西山,髙木,2004)。ここに示されているのは,まさに看護研究・教育に携わる者の多くが,当然のようにこの多様性に直面し,それを捉えんがためにさまざまな手法を試みている,という研究・教育現場の状況なのだと思う。だから,近年の看護におけるMixed Methods Research(混合研究法)註1に向ける熱いまなざしは,その延長線上にあるものと理解している。

 本稿では混合研究法について述べてゆくが,多少の回り道をすることをあらかじめお許しいただきたい。「混合研究法とは何か?」という問いにそのまま答えることは,実は難しい。その事情を明らかにしたのちに,量的研究,質的研究,ともにその研究対象とする「社会(現場)とは何か?」,いまさらながらだが,ここで立ち止まって確認してみたい。そこでは,なるべく単純化されたモデルを用いながら,《私》が主役を演じているさまを明らかにしていく。そんな社会の面白さ,捉えにくさが確認できれば,と願っている。そして最後に,混合研究法の可能性とそれを実践する際の,私たちの覚悟について述べてゆく予定である。

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Abstract

 Mixed methods research methodologies are increasingly applied in nursing research to strengthen the depth and breadth of understanding of nursing phenomena. This article describes the background and benefits of using mixed methods research methodologies, and provides two examples of nursing research that used mixed methods. Mixed methods research produces several benefits. The examples provided demonstrate specific benefits in the creation of a culturally congruent picture of chronic pain management for American Indians, and the determination of a way to assess cost for providing chronic pain care.

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〈抄録〉

 混合研究法註1は,看護現象の理解に深みと広がりを増す目的で看護研究に応用されている。本稿では,まず混合研究法の背景にあるものと研究に用いる利点を述べ,続いて混合研究法による看護研究を2例示す。混合研究法はいくつかのベネフィットをもたらす。本稿で例示する看護研究は,アメリカンインディアン註2の慢性疼痛管理のculturally congruent pictureの創造と,慢性疼痛ケアの実施にかかるコスト査定方法の判定について,混合研究法によるベネフィットを示すものである。

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 前号では,ウメオ大学にて発表された近年の看護学研究の成果から,第4節までを紹介しました。本号では第5~9節を紹介し,訳者の佐々木明子氏,小林秀行氏のコメントを付します。

 『看護研究』編集室

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 本稿で紹介されているスウェーデンの看護学研究の展開についてみると,第1節,第5節,第6節ともに,高齢者や患者の現状を評価し,そのケアを行なう看護職者の認識,体験やバーンアウトなどの心理状態を合わせて評価し,高齢者や患者がよりよい状態を保てるだけでなく,ケアを行なう看護職者の職務放棄につながらないよう,高齢者や患者,看護職者間のみならず環境面も含めて研究を深めている。

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 スウェーデンの看護学研究者9名による記事からは,看護学とは何を探求し,その研究はどのように展開されて,誰に焦点を当てて研究成果を示していくのかを改めて示唆された思いである。冒頭で著者が断っているように,この記事はスウェーデンの看護学研究を網羅するものではない。しかし,9名の研究者が語る研究内容を読み合わせることを通じて,同じ看護学の研究に携わっている立場として,個々の研究者の背後に共通して横たわるスウェーデンの看護学研究の潮流を感じることができるはずである。

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目的:本研究の目的は,正常周期女性の月経状態および月経随伴症状を明らかにすること,および1周期あたりの月経血量を実測し,月経血量の多寡に関する自己の認識を明らかにすること,さらに月経血量と月経随伴症状との関連を分析することである。

方法:19~39歳の女性184名の1周期の月経血量を実測した。初経年齢や月経周期日数,月経持続日数,月経血量に対する自己の認識,月経随伴症状について質問紙を用いて調査した。

結果:質問紙の回収率は168部で,正常周期133名,正常周期でない者27名(稀発月経,頻発月経など)だった。正常周期女性の1周期の平均総月経血量は77.4gであった。その中には,過少月経が4名,過多月経が11名いた。月経血量は月経開始後2日目にピークがあり,その後は急激に減少するパターンを示した。月経血量に対する自己の認識は,「少ない」17名,「ふつう」104名,「多い」11名だった。月経時の下腹部痛を自覚している者が74.7%,腰痛が54.9%であった。月経血量と腰痛との間には有意な関係が認められた。

考察:184名の女性の1周期の月経血量を測定した。正常周期月経にある女性の月経状態を明らかにした。月経血量の多寡を正しく自己判断することの困難さが示唆された。

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はじめに

 私は2013年10月,米国ニューメキシコ州で開催された39th Annual Conference of the Transcultural Nursing Society(以下,第39回カンファレンス)に参加しました。異文化看護に実践的に取り組む研究者の発表,世界各国の研究者との交流,私自身のポスター発表での参加者からのフィードバックを通して,世界的な国際看護の動向について学びを深めることができました。本稿では,この第39回カンファレンスの内容について紹介します。

連載 統計学のキー・ポイント─「検定」に焦点を当てて・3

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はじめに

 新薬と標準薬の効果の比較,ある処理(例えば手術や教育など)の有無による健康への影響の比較など,介入群とコントロール群に分けて,2グループ間での比較を行なう研究は極めて多いと考えられます。特に統計学的分析でよく行なわれる方法は,ある変数の平均値について,2グループ間で違いがあるといえるのかを決めるための検定です。もう少し正確に言うと,調査などで得られたデータをもとにして,帰無仮説「ある変数について2グループ間で母集団の母平均に差はない(2グループの母平均は等しい)」を検定することです。次のような例題をもとに,この検定方法について考えてみたいと思います。

 

【例題】生活習慣調査を行ない,高塩分の食事をする女性40名(Aグループ)と低塩分の食事をする女性50名(Bグループ)の血圧を調べたとします。収縮期血圧について,表1のような結果が得られたとします。ただし,表1の標準偏差は不偏分散の平方根とします。

 表1に示した結果から,高塩分食事グループは血圧が低塩分食事グループよりも高いと言えるのでしょうか。

 このような問に答えるのが,「独立2群の母平均値の差の検定」と言われる検定方法です。ある変数についての2グループの母平均値の差の検定は,極めてよく用いられている方法ですが,実際の検定では,2グループの母分散が,(1)等しい場合(等分散の場合),(2)等しくない場合(不等分散の場合)で,用いる計算方法が異なっています。

 (1)の等分散の場合とは,図1で示したように,変数の分布の形状は2つのグループで同一なものと考えられています。ただし,2つのグループAとBでは,母平均値に違いがあり,そのため分布全体の位置がAに比べてBでは,右側に移動しているという状態になっています。したがって,分布の形状は同じなので,分散は2つのグループでは同一,つまり等しいものと仮定されています。このように,一方のグループが他方に比べて全体に一定方向に偏った状態についての検定方法が,等分散の場合の母平均値の差の検定になります。

 等分散の場合とは異なり,図2に示したように不等分散の場合の検定は,2つのグループの母平均値μAとμBに違いがあるだけではなく,各グループの分布の母分散σ2Aとσ2Bにも違いがある場合です。したがってこのような場合には,2つのグループの分布は位置も形状も異なることになります。このような2グループの比較については,分散が異なるということは分布が異なることを意味しますので,2つの母平均値の比較に意味があるのかという議論もあります。しかし,明らかに2グループの分布が異なっている不等分散のような場合でも,2グループの母平均値を比べたいという要望はありえますので,ここでは後述するように「Welchの方法」を説明したいと思います。

 以下に,いくつかの検定方法を解説したいと思います。

連載 Words, words, words.─研究にまつわる知識と技法・words 15

対話の技術 Art of Dialogue 江藤 裕之
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 今年は「研究にまつわる知識と技法」というテーマで,研究に直接関連しそうな実践的な知識や技術について稿を進めている。前号では考察や思索の対象となる情報やアイディアを収集する手段としての「コミュニケーション」について考えてみた。そこで確認したのは,コミュニケーションとは単なる「一方向の伝達」ではなく,情報やアイディアなどを交換し,共有していくための「双方向のやり取り」だということであった。

 コミュニケーションにはいろいろな方法があるが,人と人とが情報やアイディアを交換,共有するための最も有効な手段は言語である。この,ことばによるコミュニケーション,とりわけ,ことばを用いた知的なコミュニケーション訓練としての対話(ダイアローグ)にも触れてみたが,十分には語れなかったようである。そこで,今回は,具体的な例を示しつつ,対話についてもう少し考えてみようと思う。

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 子どもの頃から私は,「白衣の天使と言われているけど,実際のナイチンゲールは権力べったりの嫌な女だった」と信じてきました。

 はてさて,いったい誰がそんな話を吹き込んだものか。母が市民運動をしていた関係で,私は,反権力な大人に取り囲まれて育ってきました。この話も,多分その中の誰かが吹き込んだのだと思われます。

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看護研究
47巻3号 (2014年6月)
電子版ISSN:1882-1405 印刷版ISSN:0022-8370 医学書院

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