- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
はじめに
近年さまざまな分野で高い関心が寄せられている質的・量的研究アプローチのハイブリッドであるミックスドメソッド・リサーチ(Mixed Methods Research;以下MMR)にとって,本年2014年は特別な年である。その理由は,米国のボストン・カレッジ(Boston College)において,MMRの国際学会(Mixed Methods International Research Association;以下,MMIRA)の記念すべき第1回年次大会註1が開催される年だからである。ただし,これまでMMRの学会が世界で存在していなかったわけではない。例えば英国では,米国の動きより早く研究法に関する学術雑誌や学会が,MMRの発展を支援してきたようなところがあり,国際的なMMRの研究集会もこれまでは,ケンブリッジ大学(Cambridge University)やリーズ大学(University of Leeds)のヘルスケア学部を母体として開催されてきた。しかし,本年はいよいよ,MMR初の専門学術雑誌Journal of Mixed Methods Research(Sage出版)の創刊に深くかかわった米国のMMR研究者グループを中心に昨年発足した国際学会MMIRAが,初の年次大会をボストンで開催するというわけである。MMRの物語はまだまだ始まったばかりだが,さしづめ2014年は,「新たな章の幕開け」の年であるといってもよいだろう。
そこで本稿では,この記念すべき年にあたり,これまでのMMRの発展の歴史を振り返りながら,当該研究アプローチをめぐるさまざまな議論,課題,そして今後の動向について,私自身が重要と考えるトピックを中心に紹介させていただく。現在日本語で読めるMMRに関する文献は増えてきているが,その範囲はいまだ限られている。紙幅の関係から,ここでも発信できる情報は限定されるが,MMRという研究アプローチにおける新たなムーブメントと今後の方向性の概要を,少しでも多くの読者に示すことができれば幸いである。
なお,私は看護学のバックグラウンドはもたないが,これまで多少なりともMMRおよびそのアプローチを用いた医療研究にかかわってきた者として,また,MMR専門学術雑誌Journal of Mixed Methods Researchの編集委員を創刊以来務めてきている者として,本稿を執筆させていただく。
Copyright © 2014, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.