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はじめに
看護師の業務範囲はたいへん幅広いと思う。患者として垣間見た限りでも,一方では厳格な手順が要求される業務をこなしながらも,他方では標準化することができない繊細な患者対応を行なう姿を,目にすることができる。そういった多様な業務を捉えようとすると,文字通り一筋縄ではいかない。だから,看護研究の名のもとに,非常に幅広い研究アプローチが開花するのは当然と思われる。そのためなのだろう,看護系大学・大学院等の研究・教育プログラムには,少なくとも量的手法と質的手法の両者が組み込まれていると聞く。さらに,髙木らによると,2003/2004年の時点で「トライアンギュレーションの方法を知っていますか」との問いに対し,看護系大学教員のうちの47.5%が肯定的に回答している(髙木,西山,2004;西山,髙木,2004)。ここに示されているのは,まさに看護研究・教育に携わる者の多くが,当然のようにこの多様性に直面し,それを捉えんがためにさまざまな手法を試みている,という研究・教育現場の状況なのだと思う。だから,近年の看護におけるMixed Methods Research(混合研究法)註1に向ける熱いまなざしは,その延長線上にあるものと理解している。
本稿では混合研究法について述べてゆくが,多少の回り道をすることをあらかじめお許しいただきたい。「混合研究法とは何か?」という問いにそのまま答えることは,実は難しい。その事情を明らかにしたのちに,量的研究,質的研究,ともにその研究対象とする「社会(現場)とは何か?」,いまさらながらだが,ここで立ち止まって確認してみたい。そこでは,なるべく単純化されたモデルを用いながら,《私》が主役を演じているさまを明らかにしていく。そんな社会の面白さ,捉えにくさが確認できれば,と願っている。そして最後に,混合研究法の可能性とそれを実践する際の,私たちの覚悟について述べてゆく予定である。
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