臨床皮膚科 48巻9号 (1994年8月)

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患者 39歳,男性

 初診 1992年3月2日

 現病歴 1991年12月前頭部の中央と左頬部に硬結を生じ,しだいに増大してきた.全身症状は全く自覚していない.

 現症 前頭部に3個のドーム状の腫瘤があり(図1),中央の腫瘤には圧痛がある.両頬部には不定形の皮下硬結を数個ずつ触れる(図2).頸部,腋窩のリンパ節は触知しない.

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 19歳,女性.生下時より腹部左側に浸潤性の紅斑局面があった.1年前より同部に疼痛が出現した.定型的な臨床像およびHE染色所見から血管芽細胞腫(中川)と診断した.免疫およびレクチン組織化学の結果,血管芽細胞腫の発生に関して2つの仮説を想定した.1つは自験例は3種類の細胞,すなわち内皮細胞,周皮細胞および未分化問葉系細胞から構成されており,腫瘍性の増殖というには単クローン性がなく,本症は母斑,過誤腫として発生するという考え方,もう1つは,本症の起源を未分化間葉系細胞とするならば,それが分化すれば内皮細胞あるいは周皮細胞が形成されうるので,本症が未分化間葉系細胞が起源の腫瘍であるという考え方である.筆者らは前者の可能性が高いと考えた.

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 扁平苔癬の典型例について,その病因を薬剤,金属,メンタ油のアレルギーの点から検討した.対象となった24例は,限局型の8例と汎発型の16例で,汎発型のうち7例は口腔内粘膜疹を伴っていた.除去効果を合わせて原因を検討した結果,限局型では口腔内に限局した1例と線状型の3例中1例は薬剤性と考えられたが,金属やメンタ油のアレルギーは認めなかった.また,口唇に限局した4例はいずれも原因不明であったが,このうち3例が肝障害を合併しており,口唇の扁平苔癬は肝障害を疑う指標になると思われた.汎発型の原因は薬剤性5例,金属アレルギー5例,メンタ油アレルギー2例,不明が4例であった.金属アレルギーによる5例は歯科金属除去で治癒したが,口腔内粘膜疹を伴わない例もあり,粘膜疹はケブネル現象と考えられた.とくに汎発型では予想以上に病因が判明し,積極的な原因検索が必要と思われた.

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 皮疹の出現と高ケトン血症との間に強い関連を認めた色素性痒疹の1例を報告した.患者は25歳の女性で,2度にわたり発作性に皮疹の出現を認めたが,皮疹出現時に一致して尿中ケトン体強陽性を示した.一方,皮疹の消褪時ではケトン体は減少,ないしは陰性となった.初回の皮疹出現時はストレスのため食欲がなく2週間で体重が5kg減少したエピソードがあったが,2回目に皮疹が出現した時は食欲は元に戻り,体重の減少は認めていなかった.皮疹出現時では血中の各ケトン体分画も著明に上昇.また糖尿病などの基礎疾患は認めなかった.自験例を過去の全身性変化を伴ったいくつかの報告例(断食ごとに,ダイエット中に,糖尿病に伴い発症した症例)と合わせると,色素性痒疹の発症誘因の一つとして糖尿病的(飢餓)代謝が強く関与している可能性が強く示唆される.

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 典型的な光線過敏症を呈した晩発性皮膚ポルフィリン症(PCTと略す)の1例を経験し,以下,一般病院外来での検査について若干の知見を得た.50歳男性,飲酒歴もあるが,HCV抗体陽性であり,PCTとC型肝炎ウイルス感染との関連が示唆された.スライドプロジェクターランプでの光線テストで紅斑出現.波長域が400nmを含む同ランプによる光線テストはPCTの定性検査として特別な機器を必要とせずに一般の病院の外来でも行え,有用と思われた.尿中ウロポルフィリン960μg/日(640μg/l).尿中ポルフィリン体の1日排泄量が800μg以下では肝機能低下を認めても光線過敏による皮疹を生じないとする報告もあり,皮膚症状からPCTが疑われる場合,尿中ウロポルフィリンの正常値が1日30μg以下であることを考えると,蓄尿でなくとも初診時外来での随時尿の定量で十分有意な異常高値を示すと考えた.

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 患者は16歳,男.約2年前より両頬に紅斑を生じ,徐々に色調が増強していたが放置していた.3日前より風疹に罹患したことを機会に当科を受診した.紅斑は,頬部全体から眉毛部,頤,側頸,さらに耳介に及んでおり,色調は軽度の褐色調をおびた紅色調で境界比較的明瞭,表面に小丘疹が集簇していた.接触皮膚炎を強く疑い生検したところ湿疹反応はみられず,毛孔性角化,基底層色素沈着,毛細血管拡張,脈管周囲のリンパ球浸潤がみられ,顔面毛嚢牲紅斑黒皮症と診断した.アゼライン酸軟膏,尿素軟膏の外用,ジヒドロエルゴタミン,ビタミンB2,C,グルタチオンの内服により治療し,症状の改善がみられた.

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 84歳,女性.脳梗塞のため近医入院中,半年前より上肢に紅斑,水疱が出現した.ステロイド内服,外用を行うも一進一退であった.1カ月前より両上肢に瘙痒を伴う角質増殖が出現した.同部の生検組織において,表皮肥厚が見られ増殖した角質内に多数の疥癬虫が認められた.紅斑部生検組織は,免疫蛍光抗体法にて表皮真皮境界部にIgG,C3の沈着がみられた.間接法は320倍で陽性を示した.ステロイド内服にサラゾスルファピリジン坐剤を併用したところ水疱の新生がみられなくなった.1%γBHC軟膏と10%サリチル酸ワセリンの重層により厚い鱗屑が減少した.自験例は水疱性類天疱瘡を基礎疾患とし,ステロイド内服,外用により全身および局所の免疫能が低下し,加えて脳梗塞後の生活条件が不良であったため,疥癬を重症化させノルウェー疥癬に至ったと考えられた.

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 48歳,男性の手背に副腎皮質ホルモン剤外用後に生じた,Trichophytonrubrumによる生毛部急性深在性白癬の1例を報告した.臨床的に右手背に拇指頭大までの浸潤を触れる紅斑および結節が散在する.組織学的に毛嚢内に多数の胞子を,毛嚢周囲にリンパ球,好中球,好酸球,形質細胞からなる肉芽腫を認めた.グリセオフルビン2カ月内服にて略治した.近年,Trichophyton rubrumによる生毛部急性深在性白癬の症例が増加しており,その理由の一つとして,より強力なステロイド外用剤の誤用や連用が挙げられた.

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 ミノサイクリン内服後に生じた結節性紅斑の38歳女性例を報告した.貼布試験および薬剤によるリンパ球幼若化試験はともに陰性であったが,内服誘発試験は陽性であった.テトラサイクリンとの交叉性は認められなかった.自験例は臨床的に自発痛,圧痛を欠くことと,組織学的に著明な好酸球浸潤を認めることが通常経験する結節性紅斑とは異なっていた.本邦での過去の報告例について若干の文献的考察を加えた.

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 足底の浸潤性紅斑上に大型の水疱形成をみたhypereosinophilic syndromeの34歳,女性例を報告した.2年前に皮疹,未梢血好酸球増多より本症と診断,プレドニゾロン1日10mgの投与を受けていたが,全身倦怠感,腹痛などとともに足底に浸潤性紅斑が出現し,水疱を形成した.末梢血好酸球数は3,168/mm3と増加.浸潤性紅斑部の組織像で,真皮全層,皮下組織に及ぶ稠密な好酸球の浸潤をみた.これらの好酸球は抗IL−5抗体に陽性に染色され,局所における好酸球の活性化が示唆された.プレドニゾロン増量により皮疹,全身症状とも速やかに消退した.本症の皮膚症状としての水疱形成は稀であり,その発生機序について考察を加えた.

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 54歳,女性.顔面の紅斑を主訴とする皮膚サルコイドーシスと糖尿病の合併例を報告した.皮疹は顔面に左右対称性に出現した紅斑を伴う丘疹であった.同部の皮膚病理組織検査で真皮中層と下層に類上皮細胞とリンパ球から成るサルコイド肉芽腫が存在し,真皮上層の毛細血管の肥厚を示す像を呈した.胸部縦隔CTにおいて縦隔リンパ節の腫脹がみられ,またガリウムシンチグラムにおいて同部に集積像が得られた.血清アンギオテンシン変換酵素(血清ACE)活性は,23.9IU/lと,高値を示した.また空腹時血糖403mg/dlで糖尿病II型を合併していたため,糖尿病に合併した皮膚サルコイドーシスと診断した.治療は酪酸ヒドロコルチゾン軟膏外用は皮疹に対して無効であったが,ヒューマリンN18単位/日投与により,血糖値が102mg/dlと低下するに伴い,顔面の皮疹は軽快傾向を示し,また血清ACE活性も正常化した.本邦におけるサルコイドーシスと糖尿病の合併例について若干の文献的考察を加えて報告した.

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 66歳の男性.躯幹・四肢に苔癬様丘疹が汎発し,組織学的に類上皮細胞肉芽腫を認め,苔癬様型サルコイドーシスと診断した.経過中,発熱,関節痛,全身倦怠感とともに爪甲大の有痛性浸潤性紅斑が出現し,組織学的にleukocytoclastic vas—culitisの像を呈した.サルコイドーシスとleukocytoclastic vasculitisの併発例の報告は稀であるが,両者の発症機序において,免疫学的な関連があるのではないかと推測した.

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 甲状腺機能亢進症の経過中に脛骨前粘液水腫を発症した1症例を経験した.症例は34歳男性,6年前に甲状腺機能亢進症の診断を受け,抗甲状腺剤を断続的に服用していた.1年前に両側下腿の前脛骨部に紅斑が出現し,次第に膨隆し粘液水腫を形成した.甲状腺機能検査所見は,脛骨前粘液水腫発現時には機能低下状態を示していた.抗TSH受容体抗体は陽性であった.トレパンによる多数の打抜術にて短期間で結節の平坦化が得られた.脛骨前粘液水腫の発症機序および甲状腺機能との関連について考察した.

Stucco keratosisの1例 嶋崎 匡
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 74歳,男.時期は不明であるが,足背,足首および下腿の一部に対側性に,米粒大までの,灰白色の円形ないし多角性の,表面が粗糙で乾燥した角化性丘疹が少数散在して出現した.表面の角質塊は出血なしに容易に剥離でき,剥離の後には辺縁に薄いカラー状の鱗屑を残す.組織学的には表皮有棘層は軽度に肥厚,かつスパイク状に突出隆起し,全体として鋸歯状に見える.角層の重なりは緩やかであり,いわゆる籠編み状を呈している.本症を脂漏性角化症の一型と考える傾向があるが,剥離しやすい角質塊の存在,カラー状の鱗屑の残存,分布範囲の相違(下肢とくに足背に好発,脂漏性角化症は顔,体幹に好発)などの臨床的な特徴,および乳頭腫様所見がなく,角質嚢腫がないなどの組織的特徴から,別の疾患としてよいものと考える.

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 多発型のnevus lipomatosus cutaneous superficialis(NLCS)に対応する単発型のNLCSの存在を認める立場から,その1例を報告した.症例は43歳の女性で,23歳時に上背部に黄色調の腫瘤に気づいた.広基性の腫瘤の病理組織像は真皮乳頭下層から網状層全層にわたる脂肪組織の集塊で,毛包周囲には索状の,汗腺周囲には塊状の脂肪塊の増生を伴っていた.特異的なこととして脂肪細胞の集塊中に紡錘形の細胞の集団を認めた.電顕的には結節の主体を構成する細胞は成熟した脂肪細胞で,血管周囲には紡錘形の間葉系細胞が観察されたものの,胞体内に脂肪小滴を有する未熟な細胞(脂肪芽細胞)は観察されなかった.有茎性の軟線維腫とは区別される単発型のNLCSの好例と思われる.

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 59歳,女性.初診の約2週間前に,約20年前に受けた腹部手術創瘢痕部に圧痛を伴う小腫瘤に気づいた.瘢痕部直下には直径8mm大の皮内〜皮下腫瘤が存在し,局麻下に腫瘤を摘出した.組織学的所見では腺腔構造と,それを取り囲む浮腫性の間質が存在し,腺組織を示す細胞は1〜2層の円柱状細胞が配列されており,cutaneousendometriosisと診断した.

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 26歳,男性に生じたaneurysmal(angiomatoid)fibrous histiocytoma of theskinの症例を報告した.左下腿伸側に小指頭大,ドーム状に隆起する黒褐色の結節を認める.病理組織学的には真皮中層から皮下脂肪織にかけて腫瘍塊を認め,その腫瘍は線維芽細胞からなり,ヘモジデリンの沈着もみられる.腫瘍内には赤血球を多数入れた大きな空隙と不規則に種々の方向に伸びる多数の小空隙を認める.いずれの空隙にも血管内皮細胞は存在しない.過去の報告例と本症に似た組織像を呈する神経線維腫の特殊型であるblue red maculesを検討し,本症の発生には細胞間の接着性が関与していると思われた.

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 アトピー性皮膚炎(AD)が日光により増悪するかは賛否両論があり,現在も統一された見解がないといってよい.今回われわれは成人のADの患者で,UVBの最少紅斑量(MED)は正常であったが,UVBの1/2MEDの連続反復照射により,照射部位に紅斑性浸潤局面を認めた1例を経験したので,ADと光線過敏についての若干の考按を加えて報告する.

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 50歳,女性.25年前にWeber-Christian病の診断を受けて以来再燃を繰り返し,その都度副腎皮質ホルモン剤内服,増量を余儀なくされていたが,今回シクロスポリンAの併用を行ったところ,臨床症状,白血球減少などの異常検査値に劇的改善を認めた.また副腎皮質ホルモン剤の減量も可能となり,シクロスポリンAの血中濃度も低い濃度で効果が得られている.シクロスポリンA投与前後の末梢血リンパ球分画,インターロイキン2レセプターの変動状態から,本症にはT細胞系の異常が関与していることが示唆された.

連載

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 ルビーレーザー装置を用いて肝斑病変の治療を行い,客観的な相対メラニン指数の推移を経時的に観察することにより,その治療効果を保存的治療を行った場合と比較検討した.ルビーレーザー照射例では,照射1週後には著明な色調の退色が認められたが,その後,次第に色素の再生が出現,3週目には治療前値に復していた.さらに,6週目には色調の増加が認められたが,この色素沈着は一過性のもので,漸次改善傾向を示した.一方,保存的治療例では,比較的緩徐ではあるが治療効果が認められた.メラニン指数の推移を重視すると,現時点では肝斑に対するルビーレーザー治療には限界があるものと思われ,保存的治療を試みることが望ましいと考えられた.

基本情報

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臨床皮膚科
48巻9号 (1994年8月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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