臨床放射線 65巻10号 (2020年9月)

特集 高精度緩和照射

はじめに 小久保 雅樹
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ここ四半世紀の間,放射線治療装置の機器精度向上とコンピュータの高速化によって,より正確に高線量を投与できる高精度放射線治療技術が発展してきた。この技術を応用して,頭頸部定位放射線治療,体幹部定位放射線治療,強度変調放射線治療,画像誘導放射線治療などが相次いで保険収載され,根治的放射線治療の治療成績向上と放射線治療の収益改善に寄与してきたのは周知の事実である。

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放射線治療は,その方針によって,根治照射(術後照射も含む)と非根治照射(緩和照射,準根治照射も含む)に大別される。昨今の放射線治療技術の進歩,いわゆる高精度放射線治療は治療成績の向上に寄与しているが,主に根治照射に注力されている。一方,緩和照射は全体の4割近くを占めているが,主に予後の短い患者を対象に症状緩和を目的として行われ,高精度放射線治療の恩恵を受けているとはいいがたい。

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骨転移は乳癌,前立腺癌患者の75%,肺癌,甲状腺癌の50%にみられる非常に頻度の高い疾患である1)。その中でも脊椎転移は疼痛やしびれなどの症状の原因となり,圧迫骨折や脊髄圧迫症候群をきたすこともある。骨転移に対する緩和照射の疼痛緩和率は59~73%であり,しびれの緩和率は53~61%である2-5)。また脊髄圧迫をきたす頻度を1.6~3.0%に抑えられたという報告もある3)4)。脊椎転移に対する緩和照射は非常に重要な治療である。

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再発・転移をきたしたがん治療の主体は化学療法であるが,少数個の場合はこの限りでない。

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肝臓は悪性腫瘍の血行性転移好発部位であり,転移性肝腫瘍(肝転移)の存在は患者の予後・治療方針に大きく影響する。遠隔転移のある症例に対しては全身薬物療法が中心的な役割を果たす一方で,少数転移(oligometastases)の場合には生命予後の改善を目的に転移巣に対して局所治療を行うことがある1-4)。大腸癌肝転移はその代表であり,「大腸癌治療ガイドライン2019年版」5)でも根治切除可能例には肝切除が推奨され,切除不能例に対しても放射線療法が全身薬物療法と並んで記載されている。現在我が国では,由来となる原疾患(悪性腫瘍)によらず,転移性肝癌(直径が5cm以内で,かつ3個以内で,かつ他病巣のない)に対する体幹部定位放射線治療(SBRT)が保険適用となっており,同様に3個以内の転移性肝腫瘍に対して,陽子線治療も日本放射線腫瘍学会の定める統一治療方針に準じて先進医療としての適用を得ている。肝転移腫瘍は由来となる原疾患により放射線感受性が異なると考えられており,例えば大腸癌由来肝転移は放射線治療抵抗性であるとの報告がある6)。また,由来となる原疾患により治療方針は様々であるが,基本的に対象となる症例に対しては全身薬物療法を中心とした集学的治療の施行が重要となるため,肝転移に対する放射線療法には局所制御率の高さと同時に,照射に伴う有害事象,特に肝機能障害を最小限に抑えることで,全身薬物療法の実施や継続の妨げにならないことが求められる。

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近年,AJCC Cancer Staging Manual第8版において中咽頭癌がHPV(human papillomavirus)陽性中咽頭癌とHPV陰性中咽頭癌に分けられた1)。HPV陽性中咽頭癌の頸部リンパ節転移はしばしば嚢胞性リンパ節転移としてみられることがよく知られる。日常臨床において,特に既往歴がなく触知可能な頸部腫瘤を主訴とした患者に頸部嚢胞性病変の画像所見が検出されることがある。リンパ節領域に嚢胞性病変を認めた場合,放射線科医はHPV陽性中咽頭癌の嚢胞性頸部リンパ節転移とその他の頸部嚢胞性病変との鑑別にときに難渋することがある。特に結核性リンパ節炎は無痛性頸部腫瘤としての臨床所見や画像所見がHPV陽性中咽頭癌の嚢胞性頸部リンパ節転移と類似することがある。HPV陽性中咽頭癌の嚢胞性頸部リンパ節転移と結核性リンパ節炎の画像所見を比較した報告は今までにない。本検討の目的はHPV陽性中咽頭癌の嚢胞性頸部リンパ節転移と結核性リンパ節炎においてテクスチャー解析による内部性状を含むCT所見の比較をすることである。

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123I-metaiodobenzylguanidine(MIBG)は心臓交感神経へのノルアドレナリンの取り込みと洗い出しを反映する放射性医薬品で,日本では1992年に臨床に供された。MIBG心筋シンチグラフィは循環器領域において虚血性心疾患1)2),不整脈,特発性拡張型心筋症,肥大型心筋症,糖尿病,腎不全や他の原因による心筋症に,そして,特に心不全の評価・治療適応の決定,予後評価のため用いられてきた3-5)。心不全では心ポンプ機能の低下に対する代償機序として交感神経機能の活性化が生じる。当初はカテコラミン刺激が心収縮機能を代償するが,長期にわたるカテコラミンへの曝露により心筋の構造と機能に障害をもたらし,カテコラミン濃度の上昇にもかかわらず心不全の代償ができなくなる。これは心筋内のノルエピネフリン濃度が減少し,β受容体の減少,ノルエピネフリン輸送体の減少によると報告されている4)5)。MIBGはノルアドレナリンの生理的なアナログで,心臓交感神経終末へuptake-1により取り込まれるが,心不全では比較的速やかに放出され心臓への集積は低集積となる。そして,心不全は適切に治療されるとMIBGの心臓集積が改善する可逆的な病態であると考えられる。

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脳転移に対する放射線治療では,全脳照射,定位照射,あるいは両者の併用が症例に応じて行われている。近年まで脳定位照射の適応となる脳転移は,腫瘍径が3cm以下,個数が3~4個以下とするのが一般的であった。しかし,前向き観察研究1)2)にて,脳転移個数が2~4個の症例と5~10個の症例で脳定位照射後の生存期間や有害事象には明らかな差がなかったとの結果が出たのを受けて,脳転移個数の制限が以前よりも緩和されてきた。また,サイバーナイフなど分割照射が可能な定位照射装置の登場により腫瘍径の制限も緩和されてきた。

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片麻痺性片頭痛は運動麻痺(脱力)を含む前兆のある片頭痛と定義され,小児において急性の局所神経症状を呈する原因疾患の一つではあるが,画像診断は除外診断目的で用いられることが多い。その病態生理は複雑で完全には解明されていない。今回我々はASLが診断に有用で,画像で経過を追うことができた片麻痺性片頭痛の1例を経験したので報告する。

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結核性腹膜炎(tuberculous peritonitis:TP)は全結核の0.55%と非常にまれな疾患1)である。今回発熱,腹痛と腹部膨満感を主訴に婦人科受診され,画像検査で本疾患を強く疑い腹腔鏡手術で確定診断し得た症例を経験したので報告する。

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卵巣線維腫のうち,腫瘍細胞の密度が高く細胞異型が軽度な場合は,富細胞性線維腫と呼ばれる1)。高い細胞密度を反映して拡散制限を呈し3),ときに出血や嚢胞変性を伴う4)。今回我々は,悪性卵巣腫瘍との鑑別に苦慮した卵巣富細胞性線維腫の症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

連載

今月の症例 佐野村 隆行
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画像所見 CTにて両側腋窩リンパ節腫大を認め(図1A),肝脾腫および両側副腎の腫大と出血(図1B),腹水および皮下浮腫もみられる(図1C)。

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大腸癌治療ガイドライン医師用2019年版におけるFDG-PETは,大腸癌手術後の再発疑診例における再発部位の検索と確定には有用とされているが1)2),サーベイランスを目的とした検査法としては推奨されていない3)。また,大腸癌の肝転移診断と治療に対するFDG-PETの有効性は,エビデンスが十分でなく確立されていない4)と述べられている。

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放射線診療では防護という観点で,医療スタッフの職業被ばくや見舞客・出入り業者などの公衆被ばくに線量限度という規制があるのに加えて,令和2年4月より患者・被験者の受ける「医療被ばく」も検査によるが線量記録の義務が生じるようになった。

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目次

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編集後記

基本情報

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臨床放射線
65巻10号 (2020年9月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0009-9252 金原出版

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