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1 基本病因,発症機序
尿素サイクル異常症とは,蛋白質(アミノ酸)代謝の結果生じるアンモニアを解毒している尿素サイクル(尿素合成経路)を構成する代謝酵素(もしくは転送機能)に先天的な異常があり,高アンモニア血症をきたす疾患を指す。高アンモニア血症の症状は,おもにアンモニアの神経毒に起因し,その神経症状(急性脳症もしくは慢性の精神運動発達遅滞,性格変調など)から疑われる。新生児期には,細菌感染と同等に鑑別すべき疾患の一つであり,それ以降の小児救急外来で遭遇する神経症状患者においても常に念頭におく必要がある。治療目標は,アンモニアによる不可逆的な神経障害(後遺症)を残さないことにある。そのためには,早期診断と治療が重要であり,高アンモニア血症の病態生理の理解が重要となる。尿素サイクルを構成する代謝酵素および転送蛋白の種類により疾患分類がなされており,Nアセチルグルタミン酸合成酵素欠損症(NAGSD),カルバミルリン酸合成酵素欠損症(CPS1D),オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(OTCD),シトルリン血症(Hypercitrullinemia type1:CTLN1=アルギニノコハク酸合成酵素1欠損症:ASS1D),アルギニノコハク酸尿症(ASA=アルギニノコハク酸分解酵素欠損症:ASLD),アルギニン血症(アルギナーゼ欠損症),高オルニチン血症・高アンモニア血症・ホモシトルリン尿症(HHH)症候群,リジン尿性蛋白不耐症,シトリン欠損症(citrullinemia type 2),オルニチンアミノ基転移酵素欠損症(脳回転状脈絡膜網膜萎縮)が含まれる。OTCDはX連鎖性遺伝形式,そのほかはすべて常染色体潜性(劣性)遺伝形式を示す。先天代謝異常症のなかではもっとも頻度が高い疾患の一つであり,尿素サイクル異常症に属する各疾患あわせて約8,000~44,000人に1人の発生頻度と推定されている1)。
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