特集 今知っておきたいゲノム医療と遺伝子治療―基礎から臨床まで
総論
遺伝子治療開発の歴史
小野寺 雅史
1
ONODERA Masafumi
1
1国立成育医療研究センター遺伝子細胞治療推進センター
pp.281-287
発行日 2022年2月1日
Published Date 2022/2/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000057
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
はじめに
昨今,マスメディアなどにおいても「遺伝子治療」という文言をよく見聞きするが,この「遺伝子治療」とはどのような治療であろうか。それは「機能的遺伝子を用いて疾患を治療するもの(to treat a disease by leveraging the functional gene)」であろうか,それとも「原因遺伝子を修復し疾患を治療するもの(to treat a disease by repairing the causative gene)」であろうか。たとえば,難治性遺伝性疾患に対する遺伝子治療では両者とも成り立ち,白血病や悪性リンパ腫などに対するキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)遺伝子導入T細胞を用いたCAR-T療法では前者を利用したものとなる。確かに,これまでの遺伝子治療は前者の機能的遺伝子(遺伝性疾患に対しては正常遺伝子)を患者細胞に新たに付加することで(gene addition)疾患の治療を目指すものであったが,近年のゲノム編集技術の台頭により後者の原因遺伝子そのものを修復し(gene correction),疾患の治療を目指す遺伝子治療も積極的に開発されてきている。ただ,「遺伝子治療」という同名を冠する両者であるが,その作用機序(mode of action)は全く異なり,同時にそこで用いられる手法も同一ではなく,そのため安全性評価に関しては個別の視点から独自に検討されるべきものとなっている。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.