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遺伝子治療のコンセプトが考えられはじめてから150年以上が経過し,科学的・技術的な革新を繰り返しながら,ヒトの疾患に対し臨床的な使用が可能なレベルにまで発展してきた.各国で遺伝子治療薬の開発と臨床試験が進められるなか,米国においては1990年から遺伝子治療に関する臨床研究がはじまり,希少な免疫不全疾患に対する臨床試験が米国食品医薬品局(FDA)の承認のもとで開始された.以降,米国では2,500以上の遺伝子治療に関する臨床試験が幅広い疾患に対して行われ,それらは単一遺伝子疾患から感染性疾患,神経疾患,そして悪性腫瘍に対する治療へと広がっている1).近年,遺伝子治療の分野は加速度的に発展しており,いままで治療選択肢が存在しなかった重篤な疾患に対する治療薬の開発に向けて,基礎研究から臨床研究までさまざまな研究が行われている.このことを反映するように,2016年以降からInvestigational New Drug(IND)としてFDAに登録される遺伝子治療薬の数は増加傾向を続けており,2000年代初頭と比較しその数は約4倍になっている2).IND登録は治療薬を臨床応用へと進める重要なステップであり,遺伝子治療のIND登録数を見るだけでも,米国におけるこの分野への関心の高さが垣間見える.また,2016年以降は商業スポンサーによるIND登録がアカデミアよりも増加している点も着目すべき点であろう2).実際の治療薬の承認に目を向けると,COVID-19パンデミックにおける新型コロナウイルスワクチンが2020年末以降,緊急使用許可(EUA)としてFDAに承認されたことが記憶に新しい.一方で,悪性腫瘍に対する遺伝子治療薬の開発もめざましく,2015年にメラノーマに対する治療薬が承認され,最近では多発性骨髄腫に対する治療薬が承認された.今後,悪性腫瘍に対する遺伝子治療はますます発展することが予想される.本稿では,これまでの米国での遺伝子治療の発展を背景に,米国における遺伝子治療薬開発の現状を,新規治療薬の承認プロセスを踏まえながら述べる.
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