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増刊号 小児疾患診療のための病態生理3―改訂第6版―
Ⅰ.総論
2.遺伝子治療の現状と今後の展開
The current situation of gene therapy and its future perspective
小野寺 雅史
1
ONODERA Masafumi
1
1国立成育医療研究センター遺伝子細胞治療推進センター
pp.15-24
発行日 2022年12月23日
Published Date 2022/12/23
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000512
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はじめに
2016年に発行された小児内科48巻増刊号「小児疾患診療のための病態生理3」から,早いもので6年の月日が流れた。今,改めて読み返してみると,当時の遺伝子治療再活性化の兆しを深く感ずる次第で,同時にさらなる技術革新による新たな遺伝子治療の発展を期待する文章が数多く見受けられた。事実,この期間中に感染宿主が異なる複数のアデノ随伴ウイルス(adeno associated virus:AAV)由来カプシド蛋白質が同定され,これら抗体価の低いカプシドを利用した静脈投与可能AAVベクターが開発されたことで,多様な臓器を対象としたin vivo遺伝子治療が数多く開発されてきた。さらに,これまで遺伝子治療の理想系と考えられていたが,効果的な手法が存在していなかった変異遺伝子そのものを修復するゲノム編集技術もCRISPR/Casシステムなどが開発され,現在,これらゲノム編集技術を応用した新たな遺伝子治療の可能性が実際の臨床の場で検証されている。ただ,このような遺伝子治療の新たな展開が示されるたび,そこに付随するのが倫理性の問題で,とくにゲノム編集技術を応用した遺伝子治療はその影響が次世代におよぶ可能性があり,その論議は社会全体を巻き込むかたちで進められている。
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