特集 図解 産婦人科医のための臨床遺伝学必修知識Ⅱ
3.着床前遺伝学的検査における遺伝子検査と集められる情報
水口 雄貴
1,2
,
佐藤 卓
3
,
末岡 浩
4,5
Y. Mizuguchi
1,2
,
S. Sato
3
,
K. Sueoka
4,5
1慶應義塾大学医学部産婦人科学教室
2那須赤十字病院産婦人科
3医療法人財団荻窪病院虹クリニック
4静岡社会健康医学大学院大学
5慶應義塾大学医学部臨床遺伝学センター
pp.885-891
発行日 2023年9月1日
Published Date 2023/9/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000002666
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●着床前遺伝学的検査(PGT)は,生殖補助医療によって得られた胚の細胞の一部を生検して,胚の遺伝子や染色体の変化を調べ,その情報を両親に伝えて胚の移植に関する判断の一助となる技術であり,生殖補助医療と遺伝医療の両輪によって成り立っている。
●稀少細胞からDNAを増幅して実施するPGTには技術的制約も多いが,PGT-Mでは家系固有の病的バリアントの「直接診断」と全ゲノム増幅に基づく「間接診断」の併用により,堅牢な診断系が構築されてきている。
●従来,PGT-A/SRで行われていたFISH法による染色体診断には限界があり,現在はマイクロアレイや次世代シーケンサーによる網羅的なゲノムのコピー数解析も可能となってきた。
●わが国では日本産科婦人科学会が定める見解・細則に従い,実施されている。PGTは倫理的,社会的問題を多く孕んでおり,その実施の可否については一律に判断されるものではない。PGTの正確な情報の提供を行い,多様な価値観を尊重してクライエントの自律的な意思決定をサポートするよう努めていくことが大切である。
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